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2024年2月9日更新
凹凸を付けて社会貢献|知財 この人あの会社⑮
お住まいの市町村が指定している「指定ごみ袋」、ちょっと使いづらいなあと感じたことはありませんか? 袋が密着していて開けづらかったり、縛って口を閉じたのに、緩んで開いてしまったり…。特に、障がい者や高齢者は不便を感じている方が多いようです。そんな不便を解消すべく、宮古島市の國仲智江子さん(61)が「点字方式ごみ袋」を開発。すでに一部の自治体で指定ごみ袋として採用されています。
國仲さんが発案した点字方式ごみ袋
あけ口付近に複数の凹凸加工がされている
点字方式ごみ袋/ラッキーローズ商事 國仲智江子さん
きっかけは自身の視力低下
國仲さんが作った「点字方式ごみ袋」は、あけ口部に複数の凹凸が加工されている。あけ口の位置を簡単に認識でき、あけ口が密着していないので容易に開けられる。また、あけ口を縛ったときも、凹凸部が引っかかるので軽く縛るだけで緩まない。
國仲さんは、2004年頃に急激に視力が低下し、市町村指定のごみ袋を開けるのに大変困ったそうだ。自らドライバーや金づちを使って試行錯誤を重ね、あけ口付近に凹凸を形成した「点字方式ごみ袋」を開発。12年には東日本大震災の被災地や全国の盲学校へ点字方式ごみ袋を寄贈したところ「開けやすくて便利」との声が多く寄せられた。そんな声に背中を押されてプレス機を導入して商品化。13年には「ラッキーローズ商事」を設立し、同製品の販売や音楽活動を行う。
2023年、発明などを通して社会貢献した人に贈られる「東久邇宮平和賞」を受賞した國仲さん
実用新案権と意匠権を取得
國仲さんは、ごみ袋のあけ口周辺に凹凸を加工するという技術思想を保護する「実用新案権」を取得するとともに、同ごみ袋の形状を保護する「意匠権」を取得。これにより、あけ口周辺に凹凸を加工した「点字方式ごみ袋」の製造は國仲さんが独占でき、國仲さんから実施許諾を受けなければ点字方式ごみ袋の製造、販売はできない。
同ごみ袋は、普通のごみ袋と同様に工場で製造するが、凹凸の加工は宮古島市内の障がい者就労施設に委託しており、就労施設の利用者がプレス機で1枚ずつプレス加工している。工場でごみ袋を製造する際に凹凸も同時に加工する方が効率的だが、就労施設の仕事を増やしたいという國仲さんの思いから、当初からこのようにしている。
國仲さんの長年の活動が評価され、23年7月には発明や知的財産の保護促進などを通じて社会貢献した人に贈られる「東久邇宮平和賞」を受賞。また、同年10月、「第52回沖縄県発明くふう展」において、意匠の部の県知事賞最優秀賞を受賞した。
現在、点字方式ごみ袋は宮古島市と契約の上、指定ごみ袋の一部(大サイズ年間187万枚のうち約50万枚)として製造されている。宮古島市では通常ごみ袋と点字方式ごみ袋の2種類を市内各所で購入できるが、点字方式ごみ袋は売切れることもしばしばだそう。
國仲さんは、「高齢化が進むからこそ、点字方式ごみ袋のニーズが高まるはず。県内外の多くの自治体に採用して頂けるよう普及活動に力を入れ、今後も点字方式ごみ袋を通して社会に貢献したい」と話した。
点字方式ごみ袋に関するお問い合わせは、ラッキーローズ商事(電話=0980-75-5339)か、同社のホームページ(https://www.luckyrose.jp/company.html)
[執筆者]
原田昭明(はらだてるあき)
1962年、新潟県出身。大学卒業後、特許事務所勤務。2017年、沖縄に移住し沖縄県発明協会に入職、以来INPIT沖縄県知財総合支援窓口を担当。
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第1988号・2024年2月9日紙面から掲載