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2016年4月29日更新

構造材を解体 粟石は再利用|うちなー古民家移築に挑戦⑤

うるま市の赤瓦古民家は、ハイライトとも言える構造材の解体に入った。小屋組の桁や梁を一本一本外しながら、沖縄職業能力開発大学校の生徒たちは継ぎや仕口をチェックした。並行して、移築先はリサイクル石材で擁壁を積み、屋敷の基盤づくりを進めている。

仕口や継ぎを確認

解体の順序は、家屋てっぺんの大棟から徐々に下へと降りていく。新築で組み上げるのと逆だ。
伝統的な木造建築は、基本的に鉄製のくぎを使わない「貫き」構造なので、端で固定している栓やくさびを抜けば割と簡単に材は外れる。

継ぎや仕口には、80年前の大工が刻んだ技が生きており、授業で大工技術を学んできた学生も、現場で実際に用いられた技術に触れて感慨深げだった。

生徒は3月末に卒業。このあとは新2年生が、卒業研究として残る部分の解体と図面化に取り組む。


小屋組の梁を慎重に解体していく。木材は柱や束(つか)の上にほぞ穴だけで組まれた状態なので、意外と楽に外すことができた


小屋組の束は、鎌継ぎ(下の材)の細い部分をまたぐように突起の「ほぞ」が作られていた


番付をふりながら解体を進める。材木店によると樹種はモッコク(方言名:イーク)との見立て


重要な構造部分の桁は大材なので6人がかりで降ろして運ぶ


まがり材を降ろしたあとも念入りに番付をする


解体前には、材に積もったススやホコリ、屋根からの葺(ふ)き土がたまっていたので高圧洗浄を施す
 

卒業研究の結晶 丁寧な報告書と図面に

家屋調査と解体作業のようすは、同大学校住居環境科の3人(岡峰涼、金城有紀子、與座有希)が報告書にまとめた。
日本の民家の歴史から、沖縄古民家の特徴、移築事例の調査を前段に置いた。その上で、今回の解体作業について現況調査、赤瓦と内装解体のようすを、写真と図解を織り交ぜて収録している。
加えて基本となる平面図、屋根伏図、東西南北の立面図、床伏図、足場設置図、各通りの軸組図に落とし込んだ。これらは移築先で再築する際の基本設計に生かされる。
この4月から構造設計事務所に就職した與座さんは、「懐かしさのある古民家の解体は楽しかった。木造建築に携われるなら、この経験を生かしたい」と感想を話した。


卒業研究をまとめた労作の報告書。本論はA4の91ページ、図面(50分の1)はA3の50枚に及ぶ

基本となる平面図。右から左へ「いろは…」通り、下から上へ「一二三…」通りに番付を振った
 

一方、移築を予定している名護市の敷地は、擁壁のコンクリートがひび割れ、徐々にすき間が拡大していた。このままでは倒壊し災害を招きかねない。別の古民家解体現場から譲り受けた粟石で、擁壁を積み直した。

屋敷へのエントランス部分でもあり、自然石の風合いと傾斜によって、柔らかな印象に生まれ変わった。施工は名護市を本拠地とする総合建設業「くくる」の職人が、その経験とアイデアで丁寧に積み上げてくれた。


擁壁のコンクリートがひび割れ傾きはじめた。業者に石積みを発注


うるま市勝連に、解体し取り置かれていた基礎石(2015年3月)


名護市の敷地に積み上げると膨大な量になった。場所をとるため活用方法を思案


石積み作業は、折れて凸凹になった石をコンクリートカッターで切断し、長さを調整していく​


左端はそろえ、右に行くにしたがって屋敷の内側へ扇状にずらす。水抜きのため石材同士はコンクリートで固定せず、同時に土圧を受け止めるよう傾斜をつけた


完成した粟石積みの擁壁。通路を広めにとり、屋敷側に傾斜させたので、圧迫感を和らげつつ古民家にふさわしい風情をかもし出している


サバニで運んだ石材 水面下に沈め浮力利用

エンジンや電気による動力が民家の建築現場になかった大正から昭和初期にかけて、重い石材をどうやって運んだのか。
「沖縄の石造文化」(福島駿介著)によると、明治時代には「脆(もろ)い材は人力によって運ばれた」と推測している。
また水納島から沖縄本島の本部にはサバニで運んだ例を紹介している。
5年前、うるま市の浜比嘉島で元棟梁を取材したときも同じような話を聞いた。
屋敷の基礎に使う粟石は、産地である玉城の港川から海路で運ばれた。サバニ2漕の間に木材を渡し石材をぶら下げ、石は水面下に沈めることで浮力により軽くなって運びやすくなる、という内容だった。

 

編集/ 山城興朝 古民家鑑定士
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1582号・2016年4月29日紙面から掲載

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山城興朝

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古民家鑑定士一級。2011年4月~2013年5月まで週刊タイムス住宅新聞にて『赤瓦の風景』を連載。2015年から名護市で古民家の修復に着手し、並行してうるま市からの移築にも取り組んでいる。

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