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2015年7月31日更新

見積もりの基礎 材チェック|うちなー古民家移築に挑戦②

3月に名護市で解体し、宮古島に運んだ赤瓦古民家の木材を、再び組み上げる前の作業としては、まず材の状態チェックがある。これが再築費用を見積もるベースとなる。使用可能な状態か、補修するならどの方法をとるか。材の一本一本にプロフェッショナルの目が光る。

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柱の根継ぎ方法も判断

木材の状態チェックに当たったのは、国指定重要文化財修理の主任技術者の経験があるコンサルタントの横地節子さんをリーダーに、棟梁格で一級建築大工技能士の佐藤雅昭さん(佐藤建築代表、宜野湾市)、助手、補助員各1人の実質計4人。6月下旬に2日がかりの作業となった。
最も注意を払ったのは、家屋を支える柱だ。解体前に作成された図面と照らし合わせながら、全長、太さ、足固めのほぞ穴位置(高さ)、シロアリ被害や腐朽の状態について、計約60本を入念にチェック。同時に、根継ぎ(柱の腐った下の部分を切って、新材に入れ替える)、はぎ木(柱は梁などの傷んだ角の部分を削り取って、新材を当てる)、埋め木(穴や腐りなど面の一部分を削り、新材で埋める)などの補修方法を決める。
継ぎの施された桁は実際に組んで採寸したほか、梁、足固め、小屋組みのたいこ梁や束に至っても、再利用が可能か見極めた。
これらが家屋本体を再築する見積もりの基礎となる。さらに屋根瓦ぶき、基礎を含む外構工事を加えて全体の概算費用が算出される。


一時保管していた倉庫から材をいったん外に出し、柱、桁、梁などとグループ分けした上で、チェックに取り掛かる。広いヤードがあれば作業がはかどる=宮古島市城辺​


解体前に作成した平面図に、材の状態と補修の方法を書き込む。この図は柱のチェック用。OKはそのまま再利用可能、三角印は補修が必要という意味で、継ぎの方法も示す​


材に書き込まれた番付を頼りに、解体前の図面と照らし合わせる​


シロアリは表面を残して木材の内側を食べるので、げんのうでたたいて蟻(ぎ)害をチェック


出たシロアリ! ショッキングな光景が2回あった。一時保管した際に防蟻剤を噴霧していたが、しぶとく生きていた。改めて防蟻材をまき、この材は経過を見るため隔離して保管した​


これくらい状態が悪いと「根継ぎが必要」となる


番付が不確かな材は、しっかり書き込む


材の状態をチェックした職人は、解体前の家屋を見ていない。引き継がれた写真資料は、部材を特定するのに大きな手がかりとなる


小屋組みのたいこ梁は、表面に蟻害が見られるものの、芯はしっかりしている。表面をこそぎ落とせばほとんどが使用可能と判断


小屋組みの束。○印は使用可能、×は使えないが寸法を確認するために取り置く


小ワザあれこれ

意外と苦戦 古クギ抜き

材チェックと平行して、古クギを抜いておけば後々の作業が楽になる。放っておくと加工の際にかんなやノミ、のこぎりの歯を傷めるからだ。
しかし何十年もたったクギはさびて、頭のない状態のものも多い。普通はバールやハンマーのクギ抜き部分で引き出せるが、頭のないクギが難題だ。バイスプライヤーでがっちりくわえてバールを下に潜らせ引き抜くとよい。


民家に生きる技術

古材を再生 継ぎと「はぎ」

日本の伝統建築が世界に誇る木材の継ぎや組みの技術は、一般の民家にも多用されている。柱の継ぎと、桁のはぎ木の実際を、名護市内で修復が進む国指定重要文化財・津嘉山酒造所で見ることができる。


最強の継ぎとされる金輪(かなわ)継ぎ。材の双方とも、一寸の長さが継ぎ部分に使われる。写真の場合は柱の上部に施されている


材への墨付けを楽にする型板(右)は、大工同士の寸法違いも防ぐスグレもの





継ぎの部分が短く、束石に近いところを根継ぎするには十字目違い継ぎが有効だ。新材(下側)は木の経年による収縮を想定し、数ミリほど太い


作業途中のはぎ木。材は同じものを使う。梁や桁同士をつなぐ鎌継ぎの片側に施す場合も


はぎ木を施した柱(麹屋)


 

編集/ 山城興朝 古民家鑑定士
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1543号・2015年7月31日紙面から掲載

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山城興朝

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古民家鑑定士一級。2011年4月~2013年5月まで週刊タイムス住宅新聞にて『赤瓦の風景』を連載。2015年から名護市で古民家の修復に着手し、並行してうるま市からの移築にも取り組んでいる。

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