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2022年1月14日更新

住まいと暮らしとSDGs ⑤

本コーナーは、住まいと暮らしの中で取り組めるSDGs(持続可能な開発目標)について、読者と共に考えていきます。

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赤土流出防ぐ緑肥植物の調達資金づくりも

養蜂で持続的に赤土対策


循環型まちづくり
赤土流出防止対策の一環で恩納村が取り組んでいるのは「養蜂」。村農業環境コーディネーターの桐野龍さんは、「『いち農家、いち養蜂』を合言葉に、2019年度から農家さんを中心に10人で取り組んでいる。蜂蜜をつくることが環境保全にも環境対策資金の調達にもつながる」と話す。

副業で養蜂 活動の中心は農家

恩納村「ハニー&コーラルプロジェクト」は赤土流出防止対策の一つで、海のサンゴを守る活動。休作中の畑に緑肥植物を植えて赤土の流出を防ぐ上、その花から集めた蜂蜜を販売することで、次の苗を購入する資金を調達する。環境と資金の課題を解決する持続可能な仕組みだ=図。桐野さんは「蜂蜜をたくさん採ろうとすればするほど、海も陸もきれいになる」と説明する。

「赤土流出防止対策の大きな課題は持続性だった」。対策として植えるベチバー(イネ科植物)や緑肥植物、畑を覆うサトウキビの葉殻の調達に使える補助金は単年度のみ。農家自身の資金で調達して対策し続けるのは難しかったという。

「そこで目を付けたのが養蜂。ヒマワリやコスモスなど緑肥植物の花の蜜から採った蜂蜜で販売利益を出せないか考えた」。2017年から構想を練り、沖縄科学技術大学院大学とも協働し、農家が養蜂を行う本プロジェクトを立ち上げた。「構想時は農家と養蜂家をつなぐ考えだったがコーディネートが難航。養蜂は初期投資がそう高くないので、農家さんに『副業で養蜂を始めませんか』と説明した」。説明会などの参加者の中から、農家を中心とした10人が初代活動メンバーになった。

図 恩納村「ハニー&コーラルプロジェクト」の仕組み


養蜂をする農家の人々




環境保全のブランド商品

メンバーは村の補助で養蜂箱とミツバチ群を用意し、村内の養蜂家に指導してもらいながら養蜂を始めた。21年6月に採蜜できた量は合計約50㌔。一般的に採れる量の4分の1程度だった。「購入してくれたのは、ハイアットリージェンシーをはじめ、活動に賛同してくれた企業さんたち。環境保全活動から生まれたブランド蜂蜜として、販売単価は1㌔当たり1万円で平均価格の2倍になった」。この秋の採蜜は厳しい夏を乗り越えられず約6㌔。現在は売り切れ状態だが、メンバーは「またいいものをつくろう」と励んでいる。

21年6月に採れた蜂蜜。10カ所から集まった約50キロのうち32キロを販売、残りはメンバーで分けた

昨年12月に村役場で行われた、仲泊小学校5年生の環境学習発表の展示会。約半年を通して農業と環境の関わりを学び、緑肥植物の植え付けなども体験した

ミツバチは環境指標生物ともいわれ、きれいな水があり、花や緑が豊かな場所でしか生きていけない。プロジェクトでも、農薬でミツバチがほぼ全滅してしまうメンバーがいたという。「メンバーは『農薬を減らすには』『蜜源になる植物はどんな環境で育つか』と周囲の環境に気を配るように。情報を共有し合うことで環境をより意識した新しいコミュニティーも生まれた」と喜ぶ桐野さん。次年度はメンバーが増えるといい、「焦らず、少しずつをモットーに活動を広め続けたい」と話した。

本年度の活動では、村内小学生への環境学習も実施。生態系とそれを生かした社会問題の解決策を学んだ子どもたちの今後の活躍も楽しみだ。


この人に聞きました

きりの・りょう/1976年、静岡県出身。2000年に沖縄へ移住し、17年から恩納村農業環境コーディネーターとして活動
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1880号・2022年1月14日紙面から掲載


 

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