建築
2016年7月22日更新
木造編④ 大切なメンテナンス|構造のはなし[4]
家づくりの代表的な構造体について、専門家が分かりやすく解説。木造編の最終回は、住宅の機能や美観を快適な状態で、できるだけ長持ちさせるために必要なメンテナンスのポイントについて。建築士の饒平名さんは、「シロアリ予防、外装材の劣化対策、定期的な塩害・台風対策が重要」と指摘する。
シロアリ、外装対策を重点的に
沖縄の木造住宅のメンテナンスのポイントは三つ。①シロアリ被害を未然に防ぐ②外壁や屋根の劣化対策③塩害や台風対策です。
まず、シロアリ被害を未然に防ぐために意識してほしいのは、家の周囲に木材や樹木などを置かないことです。例えば犬走りなどは、植木鉢であったり物を置きやすい場所です。物を置くとその下は湿気がたまりやすく、シロアリが好む環境に。死角にもなるので被害があっても気付きにくくなります。
また、専門業者などによる定期的な点検と防虫・防蟻薬剤処理も大切です。
②では、沖縄の場合、強い日差しや紫外線、台風など、外装材にとっては過酷な環境にあるため、劣化のスピードは他府県よりも早いといえます。外壁や屋根については約10年サイクルでの点検、修繕をお勧めします。特に、サッシ回りや外壁材の継ぎ手部分に使用されているコーキング材、外壁塗装の補修は重要です。
③については、木造だけに限りませんが、強風による飛来物への備えは必要でしょう。台風が去った後は建物全体を水洗いすると、塩害対策に効果的です。
全4回にわたって木造についてお話ししてきましたが、この工法に限らず、メンテナンスまで含めて長所と短所をよく理解し、住宅の構造を検討してください。少しでも読者の皆さまの一助になれたなら幸いです。
① シロアリ予防
換気効率が悪くなり、湿気が停滞するためシロアリの被害を受けやすくなります。また、点検や、被害発見の妨げにも。
鉢植えを置く場合、上写真のように台座などを利用して浮かせるようにすると換気が良くなり、シロアリの蟻道などの見逃しも減らせます。
◆シロアリ業者などへ3~5年以内に点検を依頼する。
防虫防蟻薬剤の効果は3~5年のため、薬効が切れると被害にあう確率が高くなります。最近の木造住宅は床下が高いので、点検と掃除を兼ねて自分で床下に入り、直接確認するのもいいと思います。
◆毎点検時にできるだけ防虫防蟻薬剤処理をする。
費用対効果を考慮すると、前回(6月24日発行号)で紹介したベイト工法、セントリコン工法だと、1~3カ月ごとにステーションの点検に来てくれるので安心です。
※以上の対応策は、木材の腐朽菌対策にも同じ効果があります。
② 外装材の劣化対策
◆約10年サイクルで点検、修繕
サッシ回りや外壁材の継ぎ手部分に使用されているコーキング材は耐久性が短く、環境にもよりますが5~6年くらいと言われています。外壁塗装の耐久性も、環境によりますが5~10年ほど。この時期に、塗り替えと合わせてコーキング材の補修を行うのが効率的です。
◆屋根の点検
外壁塗装を塗り替える際には足場が設置されますので、同時に屋根材のズレや割れなどがないか、金属金物のサビ、コーキングやモルタルなどの劣化がないかを点検、補修するとさらに効率的です。
【外装材の劣化の目安】
・コーキング材/硬くなり、ひび割れやはがれがある。
・外壁塗装/触れたときに塗料が手に付く。
③ 台風・塩害対策
◆飛来物への備え
台風接近前に、建物の周りにある強風で飛ばされやすい物を片付けたり、樹木の枝などをせん定しておきましょう。また、大開口のサッシには、できるだけ雨戸や暴風ネットなどを設置することをお勧めします
◆建物全体を水洗い
台風が去った後、外壁や、サッシ回りの金属系金物や屋根の金属部分などを重点的に洗浄機などで水洗いすると、塩害やサビの予防に効果的です。
次回からは鉄骨造編です。
執 筆 者
よへな・ちぜん/アトリエPAD代表者。
那覇市出身。軸組み工法やツーバイフォー工法での木造建築から、鉄筋コンクリート造まで、幅広く住宅建築を手掛ける。南仏風など、スタイルにこだわった住宅を多く設計する。
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1594号・2016年7月22日紙面から掲載