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2020年9月11日更新

持続可能な開発 沖縄モデルを求めて|建築探訪PartⅡ③

次世代に残したい沖縄の建造物の歴史的価値や魅力について、建築士の福村俊治さんがつづります。

持続可能な開発 沖縄モデルを求めて

浦添西海岸キャンプ・キンザー(浦添市) 
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浦添市西海岸を埋め立て、港湾施設と軍港その他をつくることが先日、県・那覇市・浦添市間で合意決定された。これまでこの西海岸は基地に隣接しているため見ることができなかった。しかし、臨港道路ができサンエー浦添西海岸パルコシティの屋上からこの遠浅の青い海とキャンプ・キンザーの広さを見て誰もが感動し、この海を埋め立てずに残し、基地跡地と一体になった夢の未来都市ができることを多くの人々が願っている。

無秩序な都市計画

そもそも戦前の沖縄には那覇以外に大きな街がなく、農地と緑地の中に小さい集落が点在していた。しかし戦後、高台で平たんな良好な土地が全て米軍に占拠され基地となる。住民は基地周辺の低地や丘陵地に追いやられ、その日暮らしの家屋を作り都市計画もなく街づくりが始まった。復帰後は土地不足から海の埋め立てや丘陵地の宅地化が進み、都市のスプロールが加速した。一見経済的豊かな街に見えるが、沖縄の美しい自然(海や緑地や地形)を壊してつくられた街であり、それらの街は都市・住宅・交通・景観・環境などの多くの問題を抱えたまま、スクラップ・アンド・ビルドを繰り返している。つまり都市の安易なスプロールをとりやめ既成市街地を再生すること、そして同時に沖縄には基地の跡地利用という特殊な課題の両者を抱き合わせて、長期的展望に立った「持続可能な沖縄型開発」をやるべきである。



沖縄の市街地と軍用地の変遷 



決定合意された浦添西海岸の埋め立て計画(浦添市役所)



浦添市全体の地形模型。起伏のある丘陵地に既成市街地がある



西海岸、キャンプ・キンザー、既成市街地を一体に考えた総合計画が必要(国土地理院)


ビーチを計画の目玉に

地形模型を見てわかるように平坦なところはキャンプ・キンザーしかなく、既成市街地は丘陵地であり、都市の高度利用は難しい。つまり浦添の将来はキャンプ・キンザーの跡地計画にかかっている。この敷地は空港にも近く国道や港湾に隣接。一番良いのは遠浅の海に面し、そこにロングビーチがつくれることだ。沖縄の自然と一体となった夢の未来型都市が可能である。 しかし文頭で述べたように港湾施設と軍港が西海岸にできると、この基地跡地の価値が半減する。ビーチは観光の目玉になり、市民・県民の憩いの場となる。そして既成市街地の再生にもつながる。今の時代、街に隣接するビーチの存在は港湾や軍港よりはるかに経済効果がある。 港湾施設や軍港は図のような位置にないとなぜいけないか。知事・2人の市長の合意にはその計画の根拠の説明が何もなされていない。環境やSDGsの時代と言われている。美しい海を将来の沖縄に生かすべきだ。 次回は跡地利用の総合計画市民案を詳しく述べたい。


既成市街地と変わらない現在の那覇新都心の街並み(国土地理院)


緑豊かだった返還前の那覇新都心(ふるさと飛行/琉球新報社)


ブラジル・リオデジャネイロのコパカバーナビーチ


浦添西海岸キャンプ・キンザーの跡地利用計画模型



ふくむら・しゅんじ
1953年滋賀県生まれ・関西大学建築学科大学院修了後、原広司+アトリエファイ建築研究所に勤務。97年teamDREAM設立。沖縄県平和祈念資料館、県総合福祉センター、沖縄県国際都市形成構想による基地跡地利用計画、普天間基地跡地計画他
 

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1810号・2020年9月11日紙面から掲載

 

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