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2020年3月6日更新

[特集・改めて考える防災する理由]みんなにやさしい避難所にするには?

2011年3月11日に起こった東日本大震災から間もなく9年がたつ。沖縄県内でも大きな地震やそれに伴う津波がいつ起こるか分からない。想定される最大クラスの地震被害や避難所運営の課題など、なぜ「防災」の取り組みが必要なのか改めて考える。

みんなにやさしい避難所にするには?
住民が率先し動く環境を

多様な人が来るから助け・支え合い

ことし1月11日、那覇市若狭公民館で実施した「第5回なは防災キャンプ」に合わせて、防災や避難について意見交換するワークショップが開かれた。興味深かったのは、住民同士、災害時に自分ができることを共有していた点。また、高齢者や障がい者、ペットの同伴、外国人など多様な人々が避難所に来ることも想定していた。進行役を務めた稲垣暁さんは「各被災地の避難所を見てきて、行政などに頼りきりにならず、住民が役割分担して自主的に動いていたところでは、環境が落ち着いていて生活の再建に向けた動きも早い。防災の段階で主体性を持って動けるようにする取り組みが大切」と話す。


若狭公民館でのワークショップの様子。奥の壁には参加者の「自分ができること」が貼りだされている​


会場にはペット連れの人、車いす利用者、福祉支援関係者、子どもたちなどさまざまな人が集まった​


若狭公民館では「楽しく!防災について取り組む!」をモットーに、2019年から防災キャンプやシェアキッチン(炊き出し体験)などを通して、参加者が楽しみながら主体性を持って取り組める防災活動を展開中だ。ことし1月11日に開かれた防災キャンプでは、公民館を使った屋内避難所での一泊体験の前に、防災や避難所について住民と行政やNPO、活動団体などが意見を交換するワークショップ(以下、WS)が開かれた。


サバイバルでなくシェア

その中で興味深かったのは災害時に「自分ができること」を共有している点だ。ガムテープに「料理」や「力仕事」「英語」「話、聞きます」など自分ができることを書き、会場の壁と自分自身の体に貼り付けていた。同WSで進行役を務めた災害ソーシャルワーカーの稲垣暁さんは、「それぞれができることで役割分担が可能になる。災害時はサバイバルではなく、みんなでシェアすることが大切」と話す。

稲垣さん自身、阪神淡路大震災で避難所生活を経験し、各被災地の避難所を見てきた。「水とトイレの問題が解決すると衛生面が改善、ストレスも緩和され、避難所の環境も少し落ち着いてくる。だが、行政やボランティア団体などに任せっきりの避難所では避難者の依存心が高まり、不平不満が出やすく、2カ月たっても罵声が飛び交うところも。避難者が主体性を持って動いていた避難所では比較的環境も落ち着いていて、生活の建て直しにも早く手を付けられているようだった」と話す。

自分が持ち寄った物、できることをシェアして柔軟に動けるようになるためには、「住民同士で意思決定と役割分担ができる環境があること。そのために事前に、自主的に動いて体験することが必要」と話した。


ペットや外国人らも想定

同WSでは「多様な人たちが災害に遭う」ことを想定している点も興味深い。子どもや高齢者、障がい者だけでなく、ペットを同伴する人、地域に住む外国人、観光客まで想定に含めている。「ペット連れでは避難所へ行けない」とあきらめている人がいる。観光客や聴覚障がい者にはジェスチャーなどで事態を伝える方法がある、外国人とはお互いに助け合いができるよう情報発信や関係づくりが必要など、課題や情報が共有された。「想定外なところもあっていい気付きになった」と参加者。

普段とは違う人たちと共に生活するであろう避難所で、どう過ごすか考えるのも一つの備えだろう。






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編集/出嶋佳祐
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1783号・2020年3月6日紙面から掲載

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