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2017年11月3日更新

今日から始める相続計画「家族信託」を上手に利用

Vol.8
認知症など判断能力が不十分になってしまった人を法的に支援する制度に「成年後見制度」があります。ですがこの制度は財産を守ることを目的にしており、後見人が財産を運用したり組み替えをしたりすることは原則としてできません。そこで最近、注目されているのが「民事信託(家族信託)」です。家族信託は財産の運用や相続税対策が可能として、亀島さんは「家族をもめさせない相続計画に有効な仕組み」と話します。

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「成年後見制度」との違いとは

最近沖縄でも「成年後見制度」に代わる、または補完する優れた仕組みとして「家族信託」の話が聞こえて来るようになりました。認知症対策や、家族がもめない幸せな相続のために生かせる魅力的な仕組みです。県外ではだいぶ広がってきましたが、県内の皆さんにもこの仕組みを正しく活用していただけるよう、2回に分けて詳しく解説いたします。


保護が目的 成年後見制度

「成年後見制度」と「家族信託」の違いを説明します。
「成年後見制度」は、認知症や傷害などにより判断能力が不十分になった人の財産管理や身上監護を行い、その人を保護、支援することを目的としています(身上監護とは生活・医療・介護などに関する契約や手続きを行うことであり、介護や看護などをすることではありません)。
「成年後見制度」はあくまでも本人の財産や権利を守ることが目的であって、たとえ本人の思いがそこにあったとしても、相続対策や資産運用など家族(相続人)のために財産を動かすことはできません。生前贈与、財産の売却、資産組み替えなど、家族のためであっても後見人がそれを行うのは非常に難しい仕組みとなっています。


財産の管理運用が可能

一方で、「家族信託」では元気なうちに財産を信じる人に託す(信託する)ことで、判断能力が不十分になった後でも、家族のために財産を管理運用・処分することができ、相続税対策も進める事ができます。
財産を相続人以外の人へ渡すことが出来たり、渡した財産を戻したりすることもできます=図①。


~「民事信託(家族信託)」のメリット~

  1. 受託者が財産の管理運用・処分を行える
  2. 財産の権利を「名義」と「収益」に分けられる


では、家族信託をすると財産の権利がどう変化するのか、その仕組みを見てみましょう。
まず、家族信託には登場人物が3人出てきます。財産を託す人「委託者」、財産を預かり管理する人「受託者」、託した財産から生まれてくる収益などをもらう人「受益者」の3人です。
委託者は信託契約を結ぶことで、財産の名義と収益を分けることができます=図②。




財産を持っている人(委託者)は、財産の所有名義とそこから得られる収益を得る権利を持っていますが、信託契約を結ぶことで名義と収益を分けることができます。例えば名義を受託者に変更しつつ、委託者自身が受益者にもなることで、収益はそれまで通り受け取ることが可能です。名義は受託者に変わっていますので、万が一認知症などで委託者の判断能力が不十分になっても、財産の管理運用・処分を行うことができ、相続税対策も進めることができます。受託者が適切な財産管理・運用を行うように信託監督人を付けることもできます。


例えば自分の財産の名義を受託者に変更し、委託者は受益者にもなることで、名義を変更しても収益をそれまで通り受け取ることも可能です。元気なうちに信託契約を結んでおけば、将来、認知症などにより財産の管理が厳しくなった時にも安心です。
気を付けていただきたいのは、名義が変わる=財産移転ということにはならないことです。名義は変わっても真の所有者は委託者のままなので相続税の節税にはなりません。 また、信託した財産から出る収益を委託者以外の受益者が受け取る場合、その収益は贈与税の対象となります。家族信託は税務も複雑な面がありますので信託をよく理解している税理士の協力も必要です。
家族信託には他にもたくさんのメリットがありますが、どの財産を何の目的で信託するのか、受益権を誰に渡すのか、相続計画の一部としてよく考えて組み立てる必要があります。相続で家族がもめないために、財産を減らさないために、しっかりとそれぞれの財産を分析して、四つの分類に分けた上で信託契約を結んでいきましょう。
予定を変更して次回も家族信託についてお伝えします。実際に私たちも取り組んでいる六つのパターンを詳しく説明します。



まだまだ若くて元気なお父さん。所得する財産のうち収益物件を長男に託す契約「家族信託契約」を結びました。物件の名義は長男に移り、管理も長男がしますが、物件から生まれる収益は引き続きお父さんが受け取ります。将来、相続が起きたら、この収益を受け取る権利を誰に引き継がせるか、契約で決めておくことができます。例えば「残された家族3人に対して平等に3分の1ずつ受け取らせる」といった具合です。さらにその3人が亡くなった後はどうするかまで家族信託では決めておくことができるので、大事な財産をしっかりと守り、継承していく計画を立てることができます。



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文・亀島淳一
(株)シナジープラス代表
幸せ相続計画推進協会代表理事

かめしま・じゅんいち/身内の相続トラブルを機に相続を学ぶ。相続の幅広い専門知識と豊富な実務経験をもとに、行政やメディアなどの依頼による講演も行っている。上級相続アドバイザー、全米不動産経営管理士(CPM)、全米不動産投資顧問(CCIM)などの資格も持つ。
電話/098-963-9266
http://www.synergy-plus.co.jp/



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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1661号・2017年11月3日紙面から掲載

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スタッフ
東江菜穂

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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。

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