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2025年1月10日更新

子が働ける間に 生前贈与で対策|どうするその空き家⑩

文/山入端学(全国空き家アドバイザー協議会沖縄県名護支部事務局長)

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 文/山入端 学
(全国空き家アドバイザー協議会 沖縄県名護支部事務局長)

全国空き家アドバイザー協議会沖縄県名護支部の山入端学さんが、空き家問題の背景や沖縄の現状、具体的な活用方法を紹介。今回は執筆者の山入端さん自身が生前贈与を受けた体験談から、実家の相続について考えます。
 
子が働ける間に生前贈与で対策

空き家アドバイザー協議会沖縄県名護支部を設立して1年が経過、これまでに20件以上のご相談を受けてきました。そこで強く感じているのは、実は沖縄県内の空き家課題のフェーズは利活用の前の段階で、発生抑制・所有者の意識啓発が必要だということです。

人口問題は全国では2005年に減少へ転じましたが、沖縄県では25年ほど遅れて、2030年をピークに減少へ転じるとの予測があります。全国では、団塊ジュニア世代(1970年生まれを中心とした)が65歳以上の高齢者となる2040年ごろから空き家課題が本格化。平均寿命を考えると、そこから20~30年かけて他界。その後、空き家が激増すると予測されています。



 

贈与税は借り入れ
12年かけ返済

さて、皆さんはそれまでに何をどう準備しますか? 親子で話し合い次の世代へどう継承していきますか? 子育てをしながら、老後の準備をし、近い将来にやってくる相続(ご実家・その他の財産)・税務・介護・仏壇・お墓、課題は山積みです。

私の家族のリアルなお話をします。父86歳・母83歳・兄60歳・私55歳の一般的な4人家族です。父は祖母が100歳を超える長寿でしたので、13年前の73歳に財産の相続を受けました。祖母は几帳面(きちょうめん)な方で生前、子供6人分にかかる相続税をほぼ用意しており、相続時父は200万円程度を用意するだけで済みました。73歳と仕事をリタイアして相続を迎える「沖縄あるある」ですよね。

さて、それから10年後、83歳を迎えた父は相続税の準備ができずにいたことが家族に発覚。緊急家族会議が行われ税理士に相談。相続時にどのくらいの税金がかかるのかを試算してもらった結果、生前贈与を選択することにしました。

長寿家系の当家では、父も100歳を超える可能性があり、そうなると子ども2人が70歳を超えた時期に相続を迎えることになります。それから税金の支払いとなるとかなり厳しい老後が待っています。

そこで私たち家族の場合は、3年前に実家の土地建物は兄へ、その他の財産を兄と私が半分ずつ生前贈与を受け、一人当たり1200万円の贈与税を銀行借り入れで支払い、毎年100万円を12年間支払い続けることになりました。それでも、早期に財産の生前贈与を受けたおかげで資産活用ができ、今年30歳を迎える息子家族にも中古の住宅を用意することができました。
 

返済・税金・介護費
地代で支払い

私の場合、生前贈与を受けた財産は軍用地でしたので当時のシミュレーション通り、年間受け取りの地代(現金)から贈与税分の返済、固定資産税、所得が上がることによって生じる所得税、市県民税、健康保険などへの支払い、残りは父の介護費用へとさまざまな支払いに充てることができました(手元にはほとんど残りませんが)。またその土地を担保に会社の不動産物件の仕入れ費用を捻出でき、さまざまな土地建物を売買できるようになりました。

一方、仏壇・お墓は家族で話し合い、両親が他界した際には、家族葬で、お墓はつくらず永代供養をと決めました。


近い未来の話し合い
親が元気なうちに

現在、介護真っ最中の父ですが、実は今年、86歳を迎えた頃から急速に認知症の症状が強くなりました。3年前に生前贈与の手続きが完了していなかったら、父の相続が発生するであろう15~20年後、つまり私たちが70代に突入するまで、何も手をつけられずに放置するしかなかったことを考えると、さまざまな対策を事前に講じられたことに、今更ながら家族みんなでホッと胸をなでおろしております。

このように名義人である親が認知症を発症すると相続対象者である子どもたちであっても勝手に財産を活用することができず、数年または数十年放置することになりかねません。「ご家族の近い未来の話し合い」は、親世代が元気で子世代も資金面で対応できる早期に話し合いを持つことをおすすめ致します。



やまのは・まなぶ
1969年生まれ、名護市在住。昨年、(一社)全国空き家アドバイザー協議会沖縄県名護支部を設立し事務局長就任。(同)城コーポレーション代表社員。沖縄県宅地建物取引業協会会員。北部地区宅建業者会副会長

全国空き家アドバイザー協議会 沖縄県名護支部
電話=0980・43・1613


毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2036号・2025年01月10日紙面から掲載

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