相続
2024年12月6日更新
空き家が生きる! 豊かな2拠点生活|どうするその空き家⑨
文/山入端学(全国空き家アドバイザー協議会沖縄県名護支部事務局長)
文/山入端 学
(全国空き家アドバイザー協議会 沖縄県名護支部事務局長)
全国空き家アドバイザー協議会沖縄県名護支部の山入端学さんが、空き家問題の背景や沖縄の現状、具体的な活用方法を紹介。50年間放置されていた木造平屋を古民家宿に再生した大分県の事例と、2拠点生活のススメ。
10月は、住意識の向上を図り豊かな住生活を実現するために、国土交通省が定めている「住生活月間」でした。当協議会でも全国各地で、住まいに関する知識などを学ぶことのできる「住教育セミナー」を開催致しました。特に空き家問題においては空き家の発生抑制にもつながる取り組みとして、この住教育がとても重要とされています。
わが国の住まいに対する時代背景は、高度経済成長時代に繰り返されてきたスクラップ&ビルドから持続可能な循環型建築社会へと大きく変化しました。空き家・古民家の利活用は、近年の地価上昇や建築費の高騰などから注目され、またSDGSの観点からも重要な取り組みとなります。
古民家を宿泊施設へ
地域巻き込んで
私たち(一社)全国空き家アドバイザー協議会の上部組織で国土交通省の住宅リフォーム事業者登録団体でもある(一社)全国古民家再生協会では、全国の各支部で古民家の再生・移築、古材のリユース、技能者の育成、カーボンニュートラルなどさまざまな活動をする中で、昨年全国40カ所に及ぶ古民家を宿泊施設へとリノベーション致しました。
大分県中津市では、50年間空き家として放置されていた築150年の木造かやぶき平屋建ての家屋をリノベーション。古民家宿として生まれ変わらせる取り組みが行われ、2023年5月に「古民家宿 鍋屋」がオープンしました。地域の方々を巻き込んで、協議会の立ち上げや清掃員などの雇用、農業体験やかやぶき屋根の材料となるかや刈り体験から屋根のふきかえ研修など、各支部の木造建築の専門家が集い、空き家・古民家を利活用した地域活性化に取り組んでおります。
大分県中津市にある「古民家宿 鍋屋」。50年間放置されていた築150年の木造かやぶき平屋建ての家屋をリノベーションした(山入端学さん提供)
上の写真の改修前。50年間空き家として放置されていた築150年の民家(全国古民家再生協会提供)
改修費さまざま
調査必要なケースも
空き家の利活用には数十万円程度の小規模改修工事から数千万円もかかるような大規模改修工事・リノベーションまでさまざまなケースがあり大小の資金を要します。
また、古民家のような木造の伝統家屋はコンクリート造などとは耐震構造が違い、大規模な改修・リノベを実施する際には専門家による古民家鑑定調査・床下インスペクション・伝統耐震性能評価などの古民家再生総合調査が必要になるケースもあります。
2地域を行き来
人生2倍楽しむ
国は「広域的地域活性化のための基盤整備に関する法律」を一部改正し、地方への人の流れの創出・拡大を図ることが推し進められています(2026年11月施行予定)。平日は都心で仕事を、休日は地方でのんびり田舎暮らしなどの新しいライフスタイルが近年注目されています。
主な生活拠点と次なる拠点を設ける暮らし方「二拠点居住」で暮らす地域は、あなたのライフスタイル次第。「都市と地方」だけではなく、「都市と都市」「地方と地方」の選び方もあります。
ふるさと回帰、地域での社会参画・協働などを兼ねつつ、人生を2倍楽しめる豊かな暮らし方に、空き家活用のヒントもありました。
リノベーション後の室内。落ち着いた雰囲気の古民家宿に再生(山入端学さん提供)
リノベーションにあたり、古くなった天井や壁を取り払っている様子(全国古民家再生協会提供)
やまのは・まなぶ
1969年生まれ、名護市在住。昨年、(一社)全国空き家アドバイザー協議会沖縄県名護支部を設立し事務局長就任。(同)城コーポレーション代表社員。沖縄県宅地建物取引業協会会員。北部地区宅建業者会副会長
全国空き家アドバイザー協議会 沖縄県名護支部
電話=0980・43・1613
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2031号・2024年12月6日紙面から掲載