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2019年12月6日更新

デッキで部屋を拡張|建築設計工房Paraya

[お住まい拝見|ゆるくつながる平屋の2世帯]今帰仁村のNさん(34)宅は、庭などの緩衝帯でゆるくつながる平屋の2世帯住宅。部屋の延長として使うことができる広いデッキでは、子どもたちが元気に遊ぶ。


Nさん世帯のオープンデッキ。奥のリビングや左手の子ども室とフラットにつながり、デッキを部屋の延長として使える。右手奥にあるのは親世帯の住まいで、大きな屋根のオープンスペースや広い庭を介してゆるやかにつながる


つかず離れずの距離感

Nさん宅
補強CB造/自由設計/家族5人+両親
広い庭を囲むL字型の建物。Nさん宅は、平屋の住宅2棟を、オープンスペースの屋根でつなげた2世帯住宅だ。西側にNさん世帯、東側には親世帯があり、それぞれ生活機能は独立している。

オープンスペースによる「つかず離れずの距離感がほどよい」とNさん。妻のAさん(32)は「雨の日、オープンスペースに駐車すれば玄関まで濡れないし、子どもたちの遊び場にもなります」。

そう話す夫婦と子ども3人が暮らす、Nさん世帯の憩いの場はLDK。広さは11帖ほどだが、リビングの高い天井と、2カ所のデッキによって実面積以上に広く感じる。

特にオープンデッキは、幅1.8メートル、奥行き最大10メートルと広く、次女のRさん(7)がバスケットボールでドリブルしたり、1歳のRちゃんが元気に走り回る。窓を開け放てばLDKと一体化して使うことができ、Nさんは「デッキも含めてリビング。ソファに座ったときのオープンな感じがとてもいい」と満足そう。


▲▼Nさん世帯のLDK。庭に向かってL字に並んだ2面の窓を開け放てば、オープンデッキとLDKが一体化。視線も、庭や敷地外の緑地帯へと抜けて開放的


幅270センチ、奥行き105センチの白いカウンターが目を引くキッチンでは、Aさんが食事の支度。「共働きで平日はバタバタするので」と、週末には作り置きや下準備をする。「広くて作業しやすいし、庭の子どもたちの様子やテレビが見え、料理中も楽しい。気付けば4~5時間たっていることもあります」と笑顔で話す。


建築士と以心伝心
親が購入した土地で家づくりをスタートさせたNさん夫婦。村内の設計事務所に相談したところ、「最初の図面を見てすぐに気に入った。廊下の上を子ども室の収納にすることや、間接照明の位置など、『こんなふうにしたらどうだろう』と聞こうとしたことも、すでに設計に入れてくれていた。こんなに気が合う建築士はいない」と、ほぼ全てを任せることにした。


夫婦の要望の一つが、間仕切りで分割できる子ども室。長女のYさん(9)は「窓が大きいので、明るくて気持ちがいい。泊まりに来たいっていう友達もたくさんいて、毎週誰かが泊まりに来ている」とうれしそう。庭と室内がデッキでゆるやかにつながり、全体を広い空間として使える住まいは、遊び盛りの子どもたちも魅了するようだ。

子ども室。中央の間仕切りで2室に分けられる。上部の収納は廊下の上を利用している


ここがポイント
回遊できる造りで通風◎
Nさん宅の敷地の周りは大きな建物がなく、南側には森が広がる。そこで設計を手がけた島袋勝也さんは、「まず南側に庭を配置し、開口部も南に大きく開いた。庭とオープンスペースを共有できる形にすることで、親世帯と子世帯の生活を独立させつつも、ゆるやかなつながりを持たせた」と説明する。

いずれの世帯にも、庭に面した部分には広いオープンデッキがある。部屋の延長として使えるほか、「部屋と部屋を結ぶ動線の一つとして、家中を回遊できるようになる」という。固定資産税の金額を決める床面積に含まれないため、長期的なコストを抑えることにもつながった。

Nさん世帯では、サービスデッキもLDKの拡張に一役買う。さらに、花ブロックのスクリーンがあるサービスデッキの西面は、東面の庭などから入った風の出口になっている。東西の大きな開口と回遊できる造りによって、効率よく室内を風が抜けていくという。実際、Nさんも「熱気がこもりがちな夏場でも、窓を開けるだけで一気に家中がさらっとする」と快適さを体感している。


Nさん世帯のサービスデッキ。花ブロックのスクリーンから家中の風が抜けていく。左手奥にある浴室への裏動線にもなっている

また、浴室の壁は外壁用の塗装で仕上げた。島袋さんは「タイルのような目地がなく、カビが発生しても拭き取るだけでいいので、メンテナンスがしやすい」と話す。

そのほか、床は杉材、天井はラワンベニヤなど、シンプルな材料を組み合わせることでコストを抑えた。



広い庭では、子どもたちや近くに住むいとこ、友達らが集まり、のびのび遊ぶ。Nさん夫婦は「車の心配もないので安心」とやさしく見守る



Nさん世帯のシューズクローク。広いので、靴だけでなく、日用品などさまざまなものをラフに置ける


Nさん世帯の寝室。キッチン・ダイニング、廊下よりも天井が高く、開放感がある


庭から見た親世帯。Nさんの母は「風が気持ちよくて、和室でうたた寝してしまうこともある」と話す


[DATA]
家族構成:夫婦、子ども3人、両親
敷地面積:487.59平方メートル(約147.5坪)
子世帯床面積:105.21平方メートル((約31.8坪)
親世帯床面積:66.96平方メートル((約20.3坪)
建ぺい率:44.78%(許容60%)
容積率:35.31%(許容200%)
用途地域:未指定
躯体構造:補強コンクリートブロック造
設  計:建築設計工房Paraya
      島袋勝也、仲宗根篤
構  造:比嘉一級建築設計事務所
施  工:嘉数組 嘉数明
電  気:(有)きみ山工業 山城武也、上原拡
水  道:(有)きみ山工業 諸山啓二郎、宮城大幸



[問い合わせ先]
建築設計工房Paraya
0980-56-295
www.paraya-architect.com


撮影/矢嶋健吾 編集/出嶋佳祐
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1770号・2019年12月6日紙面から掲載

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「週刊タイムス住宅新聞」の記事を書く。映画、落語、図書館、散歩、糖分、変な生き物をこよなく愛し、周囲にもダダ漏れ状態のはずなのに、名前を入力すると考えていることが分かるサイトで表示されるのは「秘」のみ。誰にも見つからないように隠しているのは能ある鷹のごとくいざというときに出す「爪」程度だが、これに関してはきっちり隠し通せており、自分でもその在り処は分からない。取材しながら爪探し中。

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