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2018年11月16日更新

古き良き住まい 今風に|コバヤシ401.Design room

[お住まい拝見・手前は平屋で奥は2階]テラスとダイニングキッチンを土間でつなぎ、大窓を開ければ屋内外を一体的に使えるKさん(39)宅。傾斜に沿った階段状の造りで、風も視線も抜けて開放的だ。

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正面からは一見平屋に見えるKさん宅。実は背面から見ると2階建てになっている。軒の深いテラスからゆるやかに屋内へとつながる空間は、沖縄古民家のアマハジを思わせる
 

土間中心に自然に集う
 

Kさん宅
RC造/自由設計/家族5人
南に下る斜面上の高台に立つKさん宅は、正面から見ると真っ白い筒状の外箱に、ガラスの内箱がはめ込まれたマッチ箱のような外観が特徴的だ。南から北へ風が抜け、テラスから室内へと緩やかにつながる空間は、スタイリッシュながらも、伝統的な沖縄の住まいをほうふつとさせる。

まず目を引くのは、広々とした土間のダイニングキッチンだ。「家づくりの参考に雑誌を見ていて、汚れにくそうだし、何よりも格好良さにひかれた」と夫婦がこだわったところ。「窓を開け放ってバーベキューを楽しむこともある」と話すのは料理好きなKさん。幅約4㍍の大窓を開ければテラスと一体的に使え、広い作業台があるアイランドキッチンとテラスとを行き来しながら、にぎやかに過ごす様子が目に浮かぶ。「大きな窓から見える海と夫が作る料理を楽しみたい」という夫人(35)の希望はかなったようだ。


主寝室側からパブリックスペースを見る。土間のダイニングキッチンから板張りのリビング、上居間へと階段状につながる。建築士いわく「造り付けの収納があるだけ物が増える。減らせばコストダウンにも」と小上がりの下に、あえて収納を設けていない。照明は窓際やキッチン、ダイニングテーブルの上にある程度だが、夫婦は「思っていたよりも窓際のライン照明が効いて明るい」と満足げだ


専用スペースで学習
実は、テラスも含め南側の居室は中2階レベルまでかさ上げされていて、リビングを境に半階上がった上居間と、半階下がった子ども室に分かれる。子ども室は「寝られるだけの広さに」と必要最低限で、机はない。上の子どもたち2人が学校の宿題をするのは、子ども室前に設けられたスタディースペースだ。こじんまりとした空間で、リビングとの境にある蹴上げ板のない階段からのぞくと、まるで秘密基地のよう。

子ども室前のスタディースペースは、宿題をしている子どもの様子がリビングから見える


土間の廊下の先には小さな三輪車が…。「末っ子が遊ぶの。私も土間で縄跳びしたりしてる」と、はにかむ夫人が子どもを抱いて座るのは、小上がりになったリビングの縁。各部屋をつなぐ段差は腰掛け代わりになり、自然と家族が集う場所になっている。「どこでも座れて、どこにいても家族が見えるから安心」と夫婦ふたりほほ笑んだ。
 

最高約4㍍ある北側の土間の吹き抜け(右)は夫人の縄跳びスペース




2階の上居間からダイニングを見下ろす。高窓からの自然光で部屋の中央部も明るい。造り付けの本棚にはKさんの愛読書が並ぶ


ここがポイント
階段状に居室つなぎ 光風・眺望・気配も
海を見下ろす本島南部にある敷地は、斜面に沿って広がる集落の最上部。左右と、一段上がった裏手に家が建ち、前面には生活道路が走る。設計した小林進一さんは「南北に開いて土地に沿った形とすることで、恵まれた眺望が存分に楽しめ、地域の原風景も残せたら」と考えた。

カギは「居室を階段状につないだ」こと=断面図。敷地に応じて建物自体を道路から1.2メートル上げただけでなく、テラスからキッチン、小上がりのリビング、上居間へと進むにつれ床高も目線も上がるため、「どこにいても視界が遮られることなく、海や緑が楽しめる」。特にテラスとキッチンは、4枚引きの掃き出し窓を開ければ一体的に使え、開放感たっぷり。ラフに使える土間仕上げで、暮らしの自由度もアップしている。軒の深いアマハジテラスは、夏の入り日を遮り、涼風を呼ぶ。



室内が大きなワンルームのように見渡せる点もポイント。床高を下げ2層にした北側下層の子ども室も、リビングとの間にある階段の蹴上げを抜くことで視界を広げている。これにより、家中に家族の気配が伝わり、風通しもよく。居室ごとの段差は、緩やかにスペースを仕切り、家族の居場所にもなっている。

また、限られた敷地で要望を満たすため、水回りや個室は必要最低限とし、空間使いにもメリハリを持たせた。


[DATA]
家 族 構 成:夫婦2人、子3人
敷 地 面 積:308.02平方メートル(93.18坪)
1階床面積:101.08平方メートル(30.57坪)
2階床面積:29.30平方メートル(8.86坪)
建 ぺ い 率:41.31%(許容70%)
容 積 率:42.32%(許容200%)
用 途 地 域:都市計画区域内/非区分
躯 体 構 造:鉄筋コンクリート壁構造
設         計:コバヤシ401.Design room 小林進一
構   造:パス建築研究室
施     工:LSD design
電   気:エリンクス
水   道:HYS企画
キ ッ チ ン:MOV



[問い合わせ先]
コバヤシ401. Design room(株)
090・2633・8306
http://www.kobayashi401.com


撮影/矢嶋健吾 編集/川本莉菜子・徳正美
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1715号・2018年11月16日紙面から掲載

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