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2015年10月9日更新

新旧ほどよく調和 木造で空気爽やか|(株)琉球住樂

「85歳になる両親が住みやすい家を」と、離れて暮らす姉妹と協力し合い築45年の住宅を建て替えたNさん。敷地内にあった大きなフクギやヒンプン、井戸は残しつつ、古いコンクリート造の住宅を木造平屋に一新。昔ながらの趣と今の住み心地、新旧が調和した、住む人も周囲の人も気持ちが和むウチナー家だ。

高齢の両親が住みよく

Nさん宅(家族3人 自由設計 木造)

 


古くからあるフクギの屋敷林やヒンプン、新しく建て直した木造の赤瓦屋根が調和するNさん宅。もともとあった古いヒンプンと玄関前にもう一つ内ヒンプンを設け、周囲からの視線を緩やかにそらした


宜野湾市の住宅密集地に建つNさん宅。フクギの屋敷林、岩肌がはがれたヒンプン、赤瓦屋根が趣あるたたずまいを見せる。「以前はフクギがうっそうとして外が見えづらかったのですが、今は通りで遊ぶ近所の子どもたちの様子が見えて和みます」と話すNさん親子。
玄関扉を開けて目を引くのが、構造体があらわになった屋根の木組み。天井高約6メートルの開放感をもたらすと同時に、曲線を描く太い太鼓梁がかみ合う骨組みが風格も感じさせる。
玄関から一番座と二番座、リビング、ダイニングまでひと続きになった広々とした造り。表座を囲むようにL字に配した廊下を挟み、水回りや個室(洋室)が並ぶ。「両親が暮らしやすいように、表座・裏座があった元の家の形を踏まえた空間構成にしてもらいました」とNさん。ムートゥヤーでもあることから、人が集まりやすい造りにも配慮したという。
畳間以外の床はスギ板張りで、壁は漆喰塗り。自然素材で囲まれた空間はあたたかみがあり「移動に歩行器や介助が必要な母の足腰にも優しくて安心」という。Nさんと共に家造りを担った長女のAさんも「肌触りや香りがよく、涼しくて過ごしやすい」と満足げだ。

人が集まり元気に
慣れ親しんだ家を何とかしようと考え始めたのは、建物の老朽化や段差などの不便さ、相続も考えてのことだった。離れて暮らす姉妹と話し合い、敷地の一部にアパートを建築し、住宅は建て直すことに。
「両親が安心して暮らせる家を」との思いを託したのは長寿命の木造を提案する設計事務所。「木や漆喰を用いた素材使い、空気環境も十分考慮されているなど調和が取れた空間造りに感心した」。主に希望したのは、両親が過ごしやすい造り、人が集いやすい機能的な配置、フクギなどを残すことだった。
新居に住み始め約1年。うれしい変化は、両親が元気になったことだ。「外に出たがらなかった母が自分から外で草むしりをしたり、父が散歩するようになって体調も良さそう」。親戚で集まることが増えたことも喜びに。夏にはBBQ、法事では縁側で炊き上げもした。「姪がヒンプンに登る姿を見て、私も同じように遊んでいたなと懐かしくなった」とAさん。
新旧が調和する家に、家族の新しい暮らしが刻まれる。


1階、自然素材に囲まれたダイニングとリビング。ユンタクをする長女のAさんと母。カウンターは「両親のために、慣れ親しんだ物は残したい」と以前の住宅で使っていたものを利用した


リビングから和室の眺め。構造材も床もすべてスギ材を使用。八寸角の柱と太い太鼓梁が力強い


キッチン裏に配された廊下と洗面室。表座から裏座へぐるり回遊できるので来客時も動きやすい


ここがポイント
優しい空気環境 外構をデザイン

フクギやヒンプン、井戸など敷地にある歴史的な物を残しつつ、住宅とアパート建築を進めたNさん一家。住宅部分はフクギの剪定やヒンプンの移動など、通常は最後になる外構の整備から進めた。

住宅部分の設計・施工を手掛けた(株)琉球住樂の伊良皆盛栄さんが最も気を配ったのが、「住宅やフクギ、ヒンプン、隣のアパートとの距離感や高さのバランス」という。元の敷地は道路よりも低かったため水はけなどを考慮し盛土して高さを取ったほか、アプローチの勾配も緩やかにした。
また、敷地の三方を道路から建物を後退させることが必要な「二項道路」に囲まれることから、建物やフクギの配置バランスを工夫。どの方向から見ても美しく、親しみやすさも感じられる外構にデザインした。
◇ ◇ ◇
内部は沖縄の伝統的な民家の間取り、風水を踏まえ、水回りの使いやすさや大人数が集まった際の機能性にも配慮。一番座から調理の様子が見えないようキッチンの位置をずらしたほか、キッチンを軸に水回りや個室(洋室)に行き来しやすい動線にし、使いやすさとプライバシーも確保した。
暗くなりがちな廊下には、陽光の熱を緩和しながら光を取り込む自然光の天窓を設け、光を行き渡らせた。
◇ ◇ ◇
このほか同設計事務所が提案するプランの特徴が、木造住宅の長寿命を目指した高断熱、計画換気、素材使いだ。
外気を取り込む換気口とエアコンの配置の工夫で効率よく新鮮な空気、冷気が循環するほか、外気の影響が大きい開口部には、遮熱効果のある樹脂サッシを採用し熱を緩和。構造や内装材にはスギ材、壁には調湿作用のある漆喰を施すことで、さらりとした空気環境を作り出している。
これらを標準仕様にすることで効率よく排熱。冷房効率も高め、室内を常時心地よいとされる温度にコントロール。安らげるとともに、持続可能な住まいを実現した。


奥から一番座と二番座。玄関スペースまで広々使えて「大人数が来ても気兼ねしない」と長女のAさん。必要に応じて障子で仕切れる


のんびり腰掛けてユンタクができる玄関横のアマハジ(ウッドデッキ)


裏側のアプローチは、緩やかな曲線のスロープにして歩みを楽しく


[DATA]
家族構成:夫婦、子ども1人
敷地面積:542.42㎡(約164.08坪)
1階床面積:133.62㎡(約40.42坪)
建ぺい率:29.46%(許容70%) 容積率:26.64%(許容160%)
用途地域:第一種中高層住居専用地域
躯体構造:木造軸組み
設計・施工:(株)琉球住樂 伊良皆盛栄
電 気:テルヤ電業
水 道:(有)海西工業
大 工:大友内装、孝技建
屋 根:(有)八幡瓦工場
左 官:(有)仲松左官工業
外部建具:(株)エクセルシャノン
内部建具:(有)照屋木工所
外 構:金勢造園

[設計・問い合わせ先]
(株)琉球住樂
098-852-6936
http://10raku.co.jp
写 真/比嘉秀明撮影
編 集/週刊タイムス住宅新聞編集部

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1553号・2015年10月9日紙面から掲載

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