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2020年2月28日更新

南国リゾートの開放感|(株)一級建築士事務所 斎

[お住まい拝見|車イスで快適に暮らせる]Hさん(57)宅は、バリのリゾートをイメージした平家。造りもインテリアも、シンプルかつスッキリ。動線や間口など細部に気を配り、車イスで暮らしやすい空間になっている。

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リビングの天井高は最大約3.5メートル。斜め張りにしたチーク材のフローリングが、空間に広がりをもたらす。奥に続くデッキスペースまで一体的に使える


好きなものでスッキリ

Hさん宅
RC造/自由設計/家族1人
スギ板で模様づけした、コンクリート打ち放しの壁が目を引くHさん宅。「以前はマンション住まい。せっかく沖縄に移住するのだから、リゾートな雰囲気を感じられて、ゆったりと過ごせる家にしたかった」と話すHさん。


リビングの東側にある寝室は、間接照明で落ち着いた雰囲気。アジアンテイストの家具やオブジェがアクセントに

家の中心に広々としたLDKを据え、東側に寝室、西側に水回りをまとめたシンプルな間取り。室内はフラットで、無垢(むく)材のフローリングは、「広がりを演出したい」と斜め張りを希望した。LDK南側に続くデッキスペースまで斜め張りにしたことで、一体感と開放感が高まった。



窓際からLDKをみる。屋根は片流れ。天井高に変化をつけた空間にウォーターヒヤシンスのソファが映える。ソファ後ろの引き戸の奥に水回りがある

高窓からも柔らかな日差しが差し込むLDKには、ウォーターヒヤシンス素材のソファを置き、プルメリアを描いた絵画にアジアンテイストのオブジェと、Hさんの好きなインテリアを詰め込んだ。「スピーカーを取り付けて、音楽も楽しみたいですね」

リビングと一体的に使えるデッキスペースは、Hさんのお気に入り。「夜は照明が灯(とも)って、特に雰囲気がよくてね」と目を細める。


玄関。室内用と屋外用の車イスの乗り換えがしやすいように、上がりかまちは5センチで設けた。格子模様を描くすりガラスのガラスブロックも印象的


デザイン性の高いカウンター付きキッチンは、県外のショールームで見つけた。「生活感が出過ぎないように」と、冷蔵庫も収まる扉付き収納を造作してもらいスッキリ

調整はミリ単位で
「車イスなので、坂のないフラットな土地でないと生活しづらい。何カ所か土地を見て回り、海が近く、リゾートな雰囲気が気に入って、糸満市に購入しました」

設計は、ネットで調べ、感性に合う住宅を手がけていた建築士事務所に依頼した。「ウェブサイトの過去の作品に、敷地面積や建て坪まで明記されていたので、家づくりがイメージしやすかった」

県外に住んでいたため、設計の打ち合わせは、オンライン会議システムを活用。パソコン画面で図面を共有しながら、間口の広さや段差の高さなど、細部までミリ単位で調整した。「遠距離でも気にならず、リアルタイムで設計のやりとりができる。いい時代になりました」とHさん。シンプルかつ機能的な空間で、セカンドライフを楽しむ。
 

ここがポイント
内外の空間つなぎ広く
南側と北側、2本の道路に挟まれ、東側には隣家が建つ敷地。地区計画で、建物は道路・隣地の境界から1メートル後退させて建てる必要があった。敷地を有効に活用するため、設計を手掛けた建築士の玉那覇昇一さんは、車の進入路となる北側に面して駐車場や玄関を設け、LDKを南に開くプランを提案。地盤が緩かったため、鋼管杭で補強した。玉那覇さんは、「費用はかかりますが、地震対策として最も有効と考えました」と説明する。

ゆったりと過ごせる空間を実現するためのポイントは、リビングとデッキをつなげて生まれる、内外があいまいな空間。LDKは、歩道があって、交通量も多い道路に面しているため、デッキを壁で囲み、外部からの視線を遮る。「壁の高さを2メートル50センチに抑えることで、外部に対して威圧的にならないように気を配りました」



リビング南側のデッキ。メンテナンスフリーの再生木材を斜め張りにして、広がりを演出する


LDKの屋根は、地区計画に合わせて南から北へ傾斜する片流れに。高さのある南側には、掃き出し窓の上部に高窓を設け、室内に光を取り込む。シャープな屋根のデザインは、外観のアクセントにもなっている。


スギ板で模様づけした外壁と屋根が目をひく南側の外観。歩道との境目には花壇を設けた(写真は建築士提供)

室内は、車イスで移動がしやすいよう、出入り口の幅は90センチを確保。西側にまとめた水回りは一直線に並び、「デッキに抜ける勝手口と、浴室に設けた坪庭を通して南北に風が抜けるようにし、ドライに過ごせる環境を整えました」。



浴室。左手に見えるのは車イスから移乗しやすく、安定して腰掛けられるよう造作した、タイル張りのシャワーベンチ。吹き抜けになった坪庭の壁は天然石張りで、美しい陰影が楽しめる


[DATA]
家族構成:本人
敷地面積:207.04㎡(62.62坪)
1階床面積:101.47㎡(30.69坪)
建ぺい率:49.01%(許容50%)
容積率:49.01%(許容100%)
用途地域:第二種低層住居専用地域
躯体構造:壁式鉄筋コンクリート造
設  計:(株)一級建築士事務所斎
      玉那覇昇一
構  造:(有)翔光プラン 西筋義憲
施  工:(有)匠建 安里成邦
電  気:喜友名電気 喜友名盛久
水  道:(有)ライフ工業 高山佳晃
キッチン:(有)日光建創 又吉剛



[問い合わせ先]
(株)一級建築士事務所 斎
098-996-3512
http://www.atelier-sai.net/


撮影/ 比嘉秀明 取材/比嘉千賀子(ライター)
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1782号・2020年2月28日紙面から掲載

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比嘉千賀子

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編集者
住まいと暮らしの情報紙「タイムス住宅新聞」元担当記者。猫好き、ロック好きな1児の母。「住まいから笑顔とHAPPYを広げたい!」主婦&母親としての視点を大切にしながら、沖縄での快適な住まいづくり、楽しい暮らしをサポートする情報を取材・発信しています。

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