ランプとあんどん融合|フランク・ロイド・ライトの家具[03]|タイムス住宅新聞社ウェブマガジン

沖縄の住宅建築情報と建築に関わる企業様をご紹介

タイムス住宅新聞ウェブマガジン

家づくりのこと

インテリア

2017年7月7日更新

ランプとあんどん融合|フランク・ロイド・ライトの家具[03]

建物だけでなく家具でも今なお人々を魅了する、建築家フランク・ロイド・ライト。今回紹介するのは、ライトの自宅兼仕事場「タリアセンイースト」に置かれていたテーブルランプ。和と洋の雰囲気が融合した、優しいデザインと明かりが魅力です。

インテリア

タグから記事を探す

タリアセン1(タリアセンイースト)

のどかな自然に囲まれ

今回ご紹介するのはテーブルランプの「タリアセン1」です。このランプは、ライトの自邸兼仕事場であるタリアセンイーストのためにデザインされたものの一つです。

タリアセンイーストのあるアメリカの北東部ウィスコンシン州は、アメリカのテレビドラマ「大草原の小さな家」の舞台と言えばイメージが湧きやすいでしょうか。なだらかな大草原の丘の上に建つライトの家の周囲には、森があり小川が流れる牧歌的な風景が広がっています。

タリアセンとは、「Shining Eyebrow(輝ける眉)」という意味のウェールズ語で、丘を顔の額に、建物を眉に例えています。建物は丘の頂上ではなく、その少し下に勾配に沿って建てられ、まるで丘の一部のように風景に溶け込んでいます。

「タリアセン」はライトの先祖の地、ウェールズの伝説の吟遊詩人の名前でもあります。日本語表記では「タリエシン」のほうがなじみ深いですが、実在の人物でありながら、その生涯は神話的なエピソードに彩られていて、ライトもそうした逸話を自らのイメージに重ね合わせていたのかもしれません。


なだらかな丘の上に建つタリアセン


深い軒のような勾配

この「タリアセン1」は西洋のランプシェードの形状でありながら、日本のあんどんの雰囲気を併せ持ち、デザインの中に和と洋が見事に調和しています。タリアセンの屋根の形は軒が深く、どことなく雪国の民家を思わせますが、この照明器具のランプシェードの勾配はそれをなぞったようにも見えます。

完結された美しいデザインは、ライトの他の住宅でも多用されました。後に、同じ形状のまま首を伸ばしたフロアランプも製作されています。

この「タリアセン1」も本連載1回目で紹介した背の高いフロアランプ「タリアセン2」と同様、雑誌の写真やCMの背景に置かれていることが多く、日常目にする機会がよくあるかと思います。

ライトの照明器具の中では比較的手の届きやすい価格で市販されていますから、お手元に置いて、魅力を堪能するのも良いかもしれません。




※次回は、特別編として遠藤さんが6月に旅した「2017年度ライトツアー」について紹介します。




[執筆]遠藤現(建築家)
えんどう・げん/1966年、東京生まれ。インテリアセンタースクールを卒業後、木村俊介建築設計事務所で実務経験を積み独立。2002年に遠藤現建築創作所を開設し現在に至る。


『週刊タイムス住宅新聞』フランク・ロイド・ライトの家具<03>
第1644号 2017年7月7日掲載

インテリア

タグから記事を探す

この記事のキュレーター

スタッフ
週刊タイムス住宅新聞編集部

これまでに書いた記事:2401

沖縄の住宅、建築、住まいのことを発信します。

TOPへ戻る