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2019年7月26日更新

顔が見える造り 多世代に優しい空間|HOTELに習う空間づくり[3]

当連載では県内のホテルを例に、上質で心地良い空間をつくるヒントを紹介する。

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かりゆしコンドミニアムリゾート北谷 ROUTE58(北谷)
空間コンセプト「日常の延長 大家族のだんらん」

グレー基調に海の色加え
最近の住まいのトレンドは、「家族の顔が見える家」。対面式キッチンや仕切りの無いワンルーム的な間取りが人気だ。それを反映した宿泊施設「かりゆしコンドミニアムリゾート北谷 ROUTE58」がことし6月、北谷町の国道58号沿いにオープンした。6階建てで、1階につき1室のみ。1番下はフロントで、客室は全5室。

「おじいちゃん、おばあちゃん、夫婦、その子どもたち。3世代でのだんらんをイメージしたコンドミニアムです」。同施設のオーナーで、設計やインテリアコーディネートなども手掛けた(株)IBIの代表取締役・井樋圭吾さんは説明する。

広々としたキッチンやリビングがあるのがコンドミニアムとホテルとの大きな違い。同施設は多世帯が一室で過ごすことを想定し、ベッドは六つ、トイレは二つ、脱衣所には大きな鏡と洗面ボウルを二つ設けている。

床材や壁、カーテンなどの内装はグレーで統一されている。白や黒などのはっきりした色よりも優しい印象だ。そこに木製家具が温かみを添える。空間の大部分が落ち着いたアースカラーだが、ほんのりリゾート感も漂うのは、差し色のおかげ。「あちこちに、沖縄の海をイメージした深い青色をちりばめています」

クッションやベッドの足元に掛けられたベッドスロー、さらに井樋さん自ら描いた沖縄の風景画など。落ち着いた内装に合わせ、彩度を落とした青色を用いることで、空間になじませ印象を引き締めている。

「日常の延長」念頭に設計
同施設を管理する㈱かりゆしコンドミニアムリゾート事業部長の川口達也さんは、「ここはアットホームな雰囲気を大事にしています。靴を脱いで居室に入るスタイルや、バリアフリーの造りが世代を超えて好評いただいています」と話す。

県内はホテル建築ラッシュで、新しいホテルだけでなく、古いホテルも次々にリニューアルされている。独自性が求められる中で、「いつもは一緒に居られない家族や友人と料理をしたり、テレビを見たり、〝日常〟を楽しめる拠点として人気があります。長期滞在されるお客さまも多い」と川口さん。

非日常を売りにする宿泊施設が多い中、井樋さんが設計や内装を選ぶ際に念頭に置いたのは、まさに「日常の延長」だ。

例えばダイニングテーブルは置かず、食事はリビングで取る。「ソファでなく、床に座ってもらっても良い。皆でちゃぶ台を囲むような雰囲気で使ってほしい」

互いの顔が見えるよう、「リビングと寝室②=図面参照=は、仕切らずに天井高でメリハリをつけた」。人が集うリビングは、2面に窓を設けて広がりを感じさせている。

「宿泊施設というよりは、住宅を建てるような感覚で建てた。温かみのある空間を作りたかった」と井樋さん。それを外観でも表現。「グルッと居室を囲むように設けたテラスは、あえて直線的でなく、柔らかいカーブにした」

色、形、間取り、設備。随所の工夫で優しい空間を造り上げた。



.客室のリビング・ダイニング。寝室やキッチンまで一体となっている。グレーを基調に随所の青がリゾート感を漂わせる。廊下を挟んで奥にあと三つベッドのある下図面寝室①がある


▲間取りは1LDK、約21坪。1フロアー1室のみ。



.リビングは二面に窓があり、開放的。目の前に国道58号が走り、その向こうはキャンプフォスターがある


.外観。居室を囲うようにテラスが設けられている。設計した井樋さんは「あえて曲線的な造りにし、温かい雰囲気を出した」と語る


.浴室は、猫足のバスタブやグレーの大判タイルで高級感を演出


上階のテラスからは北谷の街や基地、アラハビーチまで一望できる


.多世帯での宿泊を想定し、洗面ボウルは二つ。洗面脱衣所にもトイレが設けられている


.あちこちに井樋さんが描いた風景画が飾られている


取材/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1751号・2019年7月26日紙面から掲載

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スタッフ
東江菜穂

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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。

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