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2019年1月4日更新

考えよう!沖縄の省エネ住宅[17]|中性化は推定400~1600年後

「中性化が進行することは考えられず、中性化が鉄筋に到達するのは400~1600年と推定され、非常に高耐久な建築物であると評価できる―」。東京理科大学の今本啓一教授からの報告だ。高炉スラグコンクリートで密度を高める配合と打設方法で施工した、首里寒川町の住宅での非破壊検査の結果だ。ここでは高炉スラグコンクリートとは何か、実際に住宅施工に採用するに至るまでの経緯や今後の可能性についてまとめた。

寄稿/「高炉スラグコンクリートの非破壊検査の報告」

非常に高耐久なコンクリート 首里の一般住宅に採用

普通コンクリートに限界
これまで、スランプ8センチ、細骨材率35%と水と砂を少なくした密度の高い耐久的なコンクリートに取り組んできたが、職人不足や高齢化などで体力、技術力、機器の性能などにより普通コンクリートでの施工の限界値のようなものに到達していた。そんな折、数馬良一氏を世話人とした「沖縄RC構造物高耐久性化PJT(プロジェクトチーム)」が私の事務所にやってきた。「沖縄に入っていない高炉スラグを台湾から取り寄せ、沖縄の鉄筋コンクリートの高耐久化に取り組む」という内容であった。歴史的な背景から、日本で生産されているコンクリートの2割も占める高炉スラグコンクリートが、日本から沖縄に入ってこないと言う事実を知り驚かされた。

塩害に強く高耐久 養生に7日
「高炉スラグ」とは、もとは高炉で鉄鉱石から鉄を生産する際に排出される産業廃棄物。微粉末化しコンクリートの混和材に使用したのが、高炉スラグコンクリートだ。高炉スラグコンクリートは、塩害環境下でも耐久性があり、アルカリ骨材反応の抑制効果、CO2削減効果、時の経過とともに強度が伸びるなどの特徴があり、沖縄の気候風土に適した材料である。価格も普通コンクリートとほぼ同等で販売可能となるようだ。しかし、水和反応が緩やかなので強度の発現がゆっくりという弱点がある。型枠の脱型時期を2日程度伸ばすことと、コンクリート表面の7日以上の湿潤養生が必要で、養生の費用と工期が少し延びることになる。


「高炉セメント100年史」2010鐡鋼スラグ協会資料参照。「飛来塩分の特に多い沖縄において、コンクリートへの塩分浸透をほぼ完全に遮断する高炉スラグコンクリートは、沖縄建築の耐久性向上に大きく資すると思われる」と今本教授

一般住宅や公共工事へ利用拡大
今回、施主の了解とPJT、今本教授、(株)E-CON、各業者の協力を得て、近年では沖縄で初めて民間住宅で適応が可能となった。さらに前述の「中性化が進行することは考えられず、中性化が鉄筋に到達するのは400~1600年と推定され、非常に高耐久な建築物であると評価できる―」との結果に驚いている。

今回のように硬い生コンで密実な施工方法としなくても、一般的な配合・施工方法で高炉スラグコンクリートを同様に使用することにより、塩害やアルカリ骨材反応の抑制効果で建築物の耐久性は上がっていく。そして、地球温暖化対策にも貢献することになる。「地球温暖化対策計画 平成28年5月31日 閣議決定」では、「高炉スラグ等を混合したセメントの生産割合・利用を拡大する」と書かれていて今後公共工事でも利用拡大されていくことになる。

しばらくは、生コン工場のJIS認証品がないので、監理者立ち会いの試験練りが必要となるが、これから一般の住宅でも、これまでの普通コンクリートと同じように使用可能となるだろう。


東京理科大学の今本研究室による非破壊検査風景


「風土建築家・清村勉伝 風に立つ石塔」(沖縄建設新聞)より。旧大宜味村役場(築92年)は、セメントは八幡製鉄所の高炉セメントが使用されたと書かれていた




執筆者・根路銘安史(ねろめ・やすふみ)
「アトリエ・ネロ」主宰
1964年、那覇市生まれ、琉球大学工学部建設工学科卒。1999年、アトリエ・ネロ設立。同事務所代表。一級建築士、高品質なコンクリートづくりに取り組む。098-889-0103 www.a-nero.com


毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1722号・2019年1月4日紙面から掲載

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