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2018年8月31日更新

[9月1日は防災の日]身近な危険を知る「ブロック塀、安全ですか?」

6月の大阪北部地震でブロック塀の倒壊により児童が犠牲になった。身近なものが災害時に大きな危険につながることもある。ブロック塀や河川など災害時の危険性を確認する方法のほか、地域や住まいで取り組める工夫を知り災害に備えよう。

ブロック塀の現況は?​

鉄筋探査機を当て、ブロック塀の内部に鉄筋が入ってるかを確認する(中田研究室提供・15年)

那覇・中城 基準クリア数件

これまで地震によるブロック塀の倒壊・被害は多く、先の大阪北部地震で児童が犠牲になったことは記憶に新しい。県内でもよく見かけるブロック塀。その安全性は? 琉球大学で調査を進める中田幸造准教授は「ほとんどが基準を満たさない」と現状を語る。県建築設計サポートセンターが公開する簡易診断カルテを使って、自宅のブロック塀の安全性を自分でチェックしてみよう。

60~90年代の塀は要注意
基準守らず危険に

本来、ブロック塀は地震に強い強固な壁式構造であり、建築基準法で、鉄筋の太さや配筋間隔・高さ・ブロックの厚みなどが決められている=下図参照。「ルールを守っていないから、倒壊する危険なブロック塀になってしまう。けしてブロック塀が悪いというわけではない」と話すのは、琉球大学の中田幸造准教授(42)。2013年からこれまでに那覇市と中城村の小学校区を中心に、1200件以上の敷地の囲いを調査。そのうち約65%がブロック塀だという=下グラフ。

調査では、ブロック塀の高さ、基礎や控え壁の有無などを外観から目視で確認し、鉄筋が入っているかを探査機で確認。そのチェック項目は30項目以上に及ぶ。「これまでの調査で基準を満たしているブロック塀はたった数件」と中田准教授。簡単な造りに見えることもあり、建築基準法のルールを知らないまま自作したり、業者が造ったりしていたのではないかと推測され、ルールを満たさないものは 「60~90年代に造られたものが多い」という。







強風でも倒壊のおそれ
安全性に問題があり、対策しようと思っても、「どの部分がルールに適していないのか、それに対して補強・改修などが必要なのかは状況によって異なり、自分でやるのは難しい」。例えば、自分で基礎を造るのは困難で、施工業者に依頼する必要がある。

大阪北部地震に限らず、過去の震災でもブロック塀倒壊による被害は報告されている。商業地よりも住宅地にブロック塀が多く、県内でも狭い道路の両側に高いブロック塀がある場所は少なくない。通学や散歩途中で地震が起きたら、いざという時に逃げる場所がない。また、ブロック塀が道路をふさぎ、避難がしにくくなったり、救助に支障が出たりと二次的被害の可能性も高くなるという。

さらに、中田准教授は「ルールを守っていないブロック塀が倒れるのは地震時だけではない」と語気を強める。03年に宮古島を襲った台風の際には強風でブロック塀が倒れた事例がある。とっさの反応がとりにくいと思われる子どもや高齢者が被害に遭いやすいと言われており、中田准教授は「身近には危険なブロック塀がいっぱいあることを知ってほしい」と注意を呼びかけた。

手軽にチェック 簡易診断カルテ
わが家のブロック塀の現況を確認するにはどうすればいいか?県建築設計サポートセンターは、誰でもできるブロック塀の「簡易診断カルテ」をホームページで公開している。(一社)全国建築コンクリートブロック工業会のカルテを参考にしたもの。西里幸二センター長は「6月の大阪北部地震の際、ブロック塀の倒壊で死者が出たため、公開した。自宅のブロック塀の安全確認に広く役立ててもらいたい」とアピールする。

使い方は簡単。「塀の高さや透かしブロックの有無など、目で見て判断できるものばかり」と同センターの又吉美香さん。鉄筋の有無の確認にのみ探査機=下写真=が必要で、同センターで有料で貸し出している。各項目の評価点を加算し、持ち点が多いほど安全性が高く「総合評点55点未満は何らかの対策を」とのこと。左記の簡易診断カルテの記載例を参考にチェックしてみて!

同センターでは専門家による「精密診断」も受け付けるほか、県の受託業務としてブロック塀に関するパンフレットも作成。概ねの現況が判断できる簡易診断カルテや現況に応じた補強案、相談先を掲載している。9月には県建築指導課ホームページで内容や配布先を掲載予定。問い合わせは同センター、098-879-1020へ。


デジタル鉄筋探査機。塀内に鉄筋があると赤く反応する

◆ブロック塀の簡易診断カルテのチェック例

提供/県土木建築部建築指導課、県建築設計サポートセンター

◆ブロック塀の目地も目安に◆
ブロック塀内の鉄筋の有無の目安となるのが目地。下①の「通し目地」はブロックのつなぎ目に縦横に鉄筋を入れやすい=赤点線。下②の「千鳥目地」は戦後、基地から広まった技術や、昔ながらの石塀づくり(組積造)のなごりから多く見られ、ブロックが互い違いに積まれていることから鉄筋が入れにくい(下写真はすべて県建築設計サポートセンター提供)







防災コミュニティーでは、「児童視点でブロック塀点検」を掲載しています。


中田幸造准教授/琉球大学工学部
なかだ・こうぞう/1976年生まれ。鹿児島県出身。2002年6月から琉球大学工学部で教壇に立つ。博士(工学)、准教授。建築構造学を専門分野とし、ブロック塀調査研究のほか、緊張材で補強した鉄筋コンクリート柱の強度・耐性などを研究している


ライター/川本莉菜子、徳正美
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1704号・2018年8月31日紙面から掲載
※9月1日は1923年発生の関東大震災にちなんで「防災の日」。今号は「危険を知る」をテーマに特集を展開します。

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