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2018年6月8日更新
物件の個性やターゲット明確に|気になるコト調べます!㊶
中古住宅を高く売りたいと思ったら、まず考えるのがリノベーションだろう。だが、リノベーションをしても、購買意欲をそそる空間でなければ意味がない。そこで今、注目を集めているのが「ホームステージング」。販売物件に家具やインテリアを置いて空間を魅力的に演出するというもの。このほど、住空間プロデューサーの上原牧子さんが那覇市内の中古マンションをホームステージングした。改修した空間をアートや工芸品で彩り、セカンドハウス需要を狙う。
家具やインテリアで付加価値 選ばれる物件に
中古市場の新常識「ホームステージング」
中古マンション アートで個性
上原さんがホームステージングをしたのは、那覇市内の住宅密集地に建つ、築35年の中古マンション。立地は悪くないものの、年季の入った内装で水回りも古かった。建築ラッシュで新築マンションが増える中、「この物件を買いたいと思ってもらうためには、リノベーションはもちろん、ほかのマンションにはない付加価値も必要」と語る。
上原さんは、交通の便が良く空港にも近い立地から「本土に住んでいる方が、癒やされにくるセカンドハウス」とターゲットを絞り、「海」をコンセプトにしたホームステージングを行った。
まず玄関を開けると、突き当たりの壁に飾られたアートに目を奪われる。青く塗られたアクリル板に、波で削られた丸い石が揺れる。手掛けたのは県内で活動するアーティストで、同物件のアート監修もした角敏郎さん。角さんは「サンゴが、少しずつ海から陸へと上がっていく様子を形にした。いつもよりインパクトを抑えめにし、アートの持つ力と暮らしになじむ心地よさを両立させた」と語る。寝室にも同様の作品が飾られているほか、キッチンの照明はブルーの琉球ガラス製に。個室の壁は花ブロックをイメージした。リビングには、壁の色に合わせたソファとラグ。プロジェクターも設置した。
上原さんは「引っ越し後にアートを飾ろうと思っても、家具と合わなかったり、スペースが無かったりでなかなか取り入れられない。プロ監修のもと、最初から入っていれば暮らしにしっくりなじむし、この物件のオリジナリティーになる」と語る。
「海」をコンセプトにホームステージングした中古マンション。キッチンのそばの壁には、県内で活躍するアーティスト・角敏郎さんの作品「凪(なぎ)~遠い記憶~」を飾っている
▲改修前
寝室にも角さんの作品が飾られている。キッチンそばの作品より濃い青を基調とし、落ち着いた印象。上原さんは「都心にいても、海を感じられる空間にしたかった。そのイメージに角さんの作品がマッチした。アートを生かすため、照明の位置も工夫している」と語る
LDKのそばにある居室の壁は花ブロックをイメージした。壁でありながらアートのよう
リビングは、暮らしのイメージが付きやすいようにとソファやラグを置いた。プロジェクターも設置
アメリカでは一般的な手法
ホームステージングは、アメリカの不動産業界では当たり前に行われている。むしろ物件を早く高く売るためには欠かせないものだ。上原さんはことし3月、アメリカのシリコンバレーでホームステージングされた物件を見学した。調度品が入ると、空の空間よりも物件の個性が明確になり、販売ターゲットを絞ることもできる。一般的に、調度品ごと買い取ることも、要らなければ引き取ってもらうこともできるそう。
上原さんは、日本でもホームステージングが普及していくだろうと見る。「中古市場が拡大する中で、物件の価値を高めるために有効な手法。私は、アートによるホームステージングに力を入れていきたい」と話した。
<問い合わせ>
(有)ムーブプランニング
電話:098-860-3202
http://move-planning.com
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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1692号・2018年6月8日紙面から掲載