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2018年3月9日更新

段ボールで避難所生活を改善|気になるコト調べます!㉟

2011年3月11日に起こった、東日本大震災から間もなく7年。うるま市にある県立石川青少年の家では3月3日、段ボールを組み合わせて避難所生活に使えるイスや囲いを作る「段ボール箱で秘密小屋づくりに挑戦しよう」が開かれた。県内の小学2年~5年生9人を含む5家族が参加し、被災時に役立つ技術を楽しみながら学んだ。

イスやベッド、囲いを親子で手作り

石川青少年の家で防災対応プログラム


格子の空気層で断熱
海抜約70メートルに位置し、災害時の避難場所にもなっている県立石川青少年の家。同イベントは、災害対応プログラムとして毎年開催しており、今年で4回目。被災して避難所に逃げ込んだときに、いつまで続くか分からない避難所生活を少しでも改善できるよう、自分たちで必要な物を作れる力をつけるのが目的だ。避難所を想定しているため、支援物資の入れ物として届く段ボールと、どこの施設でもあるカッターナイフやはさみといった、最低限の材料と道具を使用した。

子どもたちはまず、同じサイズ・形に切れ込みを入れた、基本となる段ボールの板を何枚か作成。それらを格子状に組み合わせ、上に段ボールを敷いて、イスを完成させた。沢岻小2年の安座間稟君は「座れるか心配だったけど、座っても壊れなかった」と安心した様子。

それらをいくつか並べればベッドにもなる。講師を務めた職員の當山清代さんは「格子の間の空気層には断熱効果がある。冬の公民館や体育館の冷たい床の上に直接寝るよりは暖かくなるし、夏も涼しい」と説明。使わないときは平たく折りたためるのも利点だ。


①切れ込みを入れた段ボール


②切れ込み同士を組み合わせる


③格子状に組み立てる。「格子状に組むことで強度が増す。空気層による断熱効果もある」と説明する當山さん


④上に段ボールを1枚敷いてイスにする。大人が乗っても壊れない


⑤イスをいくつか並べればベッドになる

高い壁でプライバシー確保
避難所でプライバシーを確保するための囲いと、それぞれ必要だと思ったものも作った。北谷第二小5年の仲尾幸澪さんは「普通に座っても周りから見えないように」と囲いの壁を高くした。箱を積み重ねて「一人でこもれるスペース」を作った嘉数小5年の渡三依さんは「お母さんに怒られたときにも使える」。恩納小5年の矢澤瑠海君は「壁が倒れないように、切れ込みを入れた段ボールを組み合わせて固定した。今度はもっとうまく作れると思う」と話した。

そのほか當山さんは、首が入る程度の半円形の穴を開けた段ボール箱を紹介。眠るときに顔の上にかぶせるもので、体験した恩納小3年の前田清太郎君は「暗くなるし、他の人がいても気にならないので眠りやすい」と気に入ったよう。

當山さんは「段ボールでも工夫次第でいろいろなものが作れる。子どもたち自身でアイデアを出し、それぞれの地域で役立ててほしい」と期待を込めた。


壁が倒れないよう固定し、「暗くして、眠りやすいように」と屋根を設けた囲い。手前にはイスの作り方を応用した靴箱もある。


倒れない工夫として、複数の段ボールを組み合わせている


こもりたいときに使う一人用の囲い。光や空気が入るよう、開閉可能な窓もついている


周囲の視線を気にせず眠れるよう、首が入る大きさの穴を開けた箱

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編集/出嶋佳祐
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1679号・2018年3月9日紙面から掲載

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「週刊タイムス住宅新聞」の記事を書く。映画、落語、図書館、散歩、糖分、変な生き物をこよなく愛し、周囲にもダダ漏れ状態のはずなのに、名前を入力すると考えていることが分かるサイトで表示されるのは「秘」のみ。誰にも見つからないように隠しているのは能ある鷹のごとくいざというときに出す「爪」程度だが、これに関してはきっちり隠し通せており、自分でもその在り処は分からない。取材しながら爪探し中。

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