建築
2017年9月15日更新
考えよう!沖縄の省エネ住宅[02]|気候風土適応住宅と沖縄「基準となる断熱・遮熱性能とは?」
文・松田まり子/「建築物省エネ法」施行に伴い、沖縄で住まい造りを考える上で知っておきたい点を、NPO蒸暑地域住まいの研究会の松田まり子さんにつづってもらう
基準となる断熱・遮熱性能とは?
気候風土適応住宅と沖縄
伝統木造住宅に学ぶ省エネ
前回は、2020年以降には新築住宅・建築物について一定基準の断熱・遮熱性能(外皮基準)を保持していなければ、建築できなくなるかもしれないという話をしました。では、ここでいう一定基準の断熱・遮熱性能とは、どのようなものでしょうか。
たとえば、沖縄の映画やドラマによくでてくる、いわゆる昔ながらの「おばあの家」は、そのままでは建てられなくなるかもしれません。
沖縄の伝統木造は、幾つかの理由で基準を満たすことに難点があります。例えば、通風・採光のための大きな開口部はエネルギーロスが大きいとされてしまいます。外皮基準を高めようと思ったら、極端なことを言うと、窓の面積を小さくするのが一番です。そう考えると、深い雨端(あまはじ)や広くて開放的な縁側のある伝統木造は、当然性能を満たすのは困難となります。
そもそも伝統的な木造住宅は、夏涼しく冬暖かくするさまざまな工夫がされています。フクギなどの屋敷林と屋敷垣、ヒンプン、庭園と一体になった風に対する細やかなしつらえがなされた伝統的な木造住宅は、真の意味で省エネ住宅と言えるのではないでしょうか。しかも、築100年の伝統木造は、築35年で壊される住宅に比べ廃材を出しません。建物を適切に補修しながら長く住み続けるということは、二酸化炭素を排出しないエコそのものです。
伝統的な木造家屋に学んだ深いひさしと縁側、通風の網入り格子戸を用いた宮古島「かたあきの里」
木造と鉄筋コンクリート造の混構造で建てられた住宅の縁側スペース。どちらも大開口があり、通風や採光を考慮した設計となっている
気候風土適応住宅認定ガイドライン
そこで建築物省エネ法では、伝統的構法による住宅の承継が可能となる仕組みとして「気候風土適応住宅認定制度」を設け、認定のためのガイドラインを定めました。同ガイドラインは、地域の気候風土に適応しているけれど、前述した沖縄の伝統木造のように省エネ基準を満たすことが困難な住宅について、沖縄県など所管行政庁が認定を行えば、省エネ基準が一部適用除外できるという内容です。分かりやすく言えば、認定を受ければ伝統的な木造住宅も新築できるということです。
しかし、沖縄の気候風土に適応した住宅は伝統木造だけではありません。戦後半世紀以上にわたって地域に根ざして発展してきた鉄筋コンクリート(RC)造の住宅も忘れてはなりません。台風に備えた強さだけでなく、高温多湿の気候条件で風の通る続き間、花ブロック、遮熱ブロックなどさまざまな工夫がなされてきました。これまで多くの建築士が工夫し、あるいは試行錯誤を繰り返しながら築きあげてきたRC造住宅というもう一つの伝統技術が、沖縄にはあるのです。それでは現在私たちが住んでいるRC造住宅の省エネ基準は、2016年に施行された建築物省エネ法に適合しているのでしょうか。
次回は適合状況を実際に計算してみた結果についてお話しします。
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1654号・2017年9月15日紙面から掲載