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2017年3月31日更新

先人の知恵を模型に再現|うちなー古民家移築に挑戦⑦

うるま市の古民家・旧大工廻家住宅は、木造部分の解体を終了した。以前に解体した小屋組みの木材は沖縄職業能力開発大学校へ運び、生徒が地組みを試みた。3分の1の模型も製作。その過程で得た経験を卒業研究の成果として発表し、「先人の知恵が詰まっている古民家をなんとか継承させたい」と保存を訴えた。

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解体作業は桁、梁(はり)などの横架材から柱、床下の大引き、根太へと進めた。柱の中で組まれた仕口は、実際に材を外す作業をしてみて仕組みが分かるという事例が多い。

柱と柱をつなぐ貫きも、簡単にずれないよう柱の中でカギ状に組まれるなど、木造家屋の大敵である沖縄の台風に耐える細工がいたる所に施されていた。

地組みとは、伝統工法の木造家屋を組み上げる前に、構造材が設計通りに納まるかを地面で試す作業だ。外してあった小屋組みは、製作した図面に照らしながら元通りに組み上げることができた。

苦労したのは、模型づくり。3分の1とはいえ、継ぎや仕口をそのまま再現する。材木が小さい分だけ、加工はむしろ難しくなる。図面で分からない部分は、解体途中の古民家へ何度も足を運び、構造を確認した。同大学校の卒業研究は、新年度の2年生に引き継がれ、家屋模型の完成、伝統工法の構造計算、減築の設計を試みるという。



材を締める栓を抜きながら解体作業を進める沖縄職業能力開発大学校の生徒(うるま市塩屋、旧大工廻家住宅)


貫きが柱の中でどう組み合わさっているかを確認し、写真にも記録する


桁をつなぐ鎌継ぎのようすを解体しながら確認


貫きは柱の中で複雑に組まれ、解体は意外と難渋した


木材をすべて解体し、礎石と束石だけの状態に


解体してあった小屋組みの材を大学校の駐車場で地組み完了


追掛大栓継ぎの部分を組み直す


材を広げて地組みに着手。番付を頼りに材を拾っていく
 

後輩への作業継続

手の込んだ工法 解体し発見

生徒たちが意外に手こずったのは模型づくり。鎌継ぎや追掛大栓(おっかけだいせん)継ぎは、細い杉材だと繊維がつぶれやすく、むしろ成形は難しい。そんな作業を通じて、ウチナー古民家の構造を学んだ。模型は解体と再組み上げが可能な状態に仕上げる予定なので、次年度の学生も構造が学べるという。
新たな発見もあった。引っ張りの力がかかっても抜けないよう、ほぞにはカギ形、柱への三方差しには蟻(あり)の加工が施されていることが分かり、「塩屋古民家は手が込んでいる」と研究発表で評価している。


解体・模型製作に携わった(左から)永山航平、新垣万里、宮城真理奈、石川達也の4生徒と、指導した濱田恵三先生


小屋組みを模型にした状態。3分の1スケールでも全体が完成すれば幅5メートルと大きくなる


仕口や鎌継ぎが重なった複雑な分部も忠実に再現


模型製作のようす(研究発表資料から)

 

文化財クラス消滅

移築を検討する余地なく瓦礫に
第1号のセメント瓦家


築90年近い名護市の木造セメント瓦屋が、3月下旬に解体された。
単なる古民家ではなく、沖縄で初めてセメント瓦を屋根に葺いた家屋として建築史上も極めて貴重な存在だった。「セメント瓦発祥の地・名護」の街なかガイドでは必須コースにあって、「ゆくゆくは文化財指定」と目されていた。
1930年に赤瓦家として新築、シロアリ被害がひどくなって5年後にセメント瓦へ葺き換えた。沖縄戦では上陸した米軍が意図的に残し、将校宿舎に使ったという、戦前戦後の歴史をまとった家でもあった。
市の文化財行政関係者が解体を知らされてから数日で解体に着手、ほぼ一週間で更地に。保存や移築を検討する時間もないまま、初のセメント瓦は文字通り瓦礫(がれき)になった。


2012年の太郎屋(タローヤー)。大棟の鬼瓦と隅瓦は「しゃちほこ」のような独特の形状をしている(名護市東江)


解体が進み、セメント瓦はまさに瓦礫となった(2017年3月21日)


鬼瓦と隅瓦など重要な部分は名護博物館が保存する


<うちなー古民家 移築に挑戦>


編集/山城興朝(古民家鑑定士)
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1630号・2017年3月31日紙面から掲載

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この記事のキュレーター

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山城興朝

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古民家鑑定士一級。2011年4月~2013年5月まで週刊タイムス住宅新聞にて『赤瓦の風景』を連載。2015年から名護市で古民家の修復に着手し、並行してうるま市からの移築にも取り組んでいる。

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