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2023年12月29日更新

変わる建物解体 昔→今|2000年を境に分別義務化

相続した実家を建て替えて新築したり、整地して土地を売却したりするときに必要となるのが解体工事。アスベストなど有害物質の粉じんや工事の騒音以外にも、2000年に制定された「建設リサイクル法」により、解体する際には周辺住人にも環境にも配慮することが義務付けられている。トラブルなく解体工事をするためのポイントを沖縄県解体工事業協会の技術委員の水越睦紀さん(街クリーン建設)に聞いた。

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Q1.解体方法はどう変わった?
A.ミンチ解体が分別解体に


2000年に制定された「建設リサイクル法」により、廃材を分別せず一気に解体する「ミンチ解体」が禁止されました。現在では分別しながら解体する「分別解体」が主流です。分別した廃材はリサイクルされ、暮らしを支える資源に再利用されます。

同法の対象となる工事は「床面積80平方㍍以上の建築物」や「請負金500万円以上の建築物」などで=下表、解体は解体工事業の登録・許可がある業者が行います。一般の方の中にはとび・土木工事業者などでも解体工事を行えると思っている人もいらっしゃいますが、解体業の登録・許可がないと工事することができないので、注意が必要です。

また、工事の届け出は解体業者に委任して作成することもできますが、提出に関する罰則は発注者が負うことが定められているため、届け出が出ているか確認しましょう。

出典:「建設リサイクル法」(環境省)を加工して作成


Q2.近隣とのトラブル回避の鍵は?
A.事前に説明し、理解を得る配慮が何より大切


住宅は2~3週間で解体し終えますが、敷地までの道路幅が狭いなど立地によっては工期が延び、費用もかかります。長い工期でも円滑に解体するためには何よりも事前の配慮が大切です。工事中は建物からの粉じんや重機の騒音などで周辺住人の生活に大きな影響を及ぼすため、工事内容を近隣に伝えて理解を得ることでトラブル回避につながります。

また、工事に使う重機の振動で周辺住人から「壁にひびが入った」「天井が落ちてきた」といった声が寄せられることもあります。そういった時のためにも、許可を得てからあらかじめ解体業者と一緒に近隣住宅の状態をチェックしておくことでスムーズに工事が行えます。


Q3.廃材はどこに使われる?
A.路盤材や発電燃料に利用


分別解体では大まかに「室内→躯体→外構」の順番で工事をします。その際、「木くず」、「コンクリート塊」、「アスファルト・コンクリート塊」といった特定建設資材廃棄物3品目に分けながら進めます=下図。「木くず」は火力発電の木質燃料などに、「コンクリート塊」や「アスファルト」は再生路盤材や建築物の基礎材に再利用する。リサイクル率は約90%以上で、廃材を資源に変えられるよう取り組んでいます。

肺がんや中皮腫などの発症の原因となる石綿(アスベスト)は特定有害産業廃棄物に指定されているため、再利用されることは少なく、人体に影響がないよう埋め立てなどで処分しています。
 
出典:「建設リサイクル法」(環境省)を加工して作成


Q4.アスベストどう除去する?
A.含有量を事前に調査


2021年から解体工事前には特定調査者など有資格者による調査が義務化されました。建材からサンプルをとり、アスベストの含有量をチェックします。調査では建材の重さに対して、アスベストの含有量が0.1%以下であるかどうかを確認。基準値以上であれば、粉じんの飛散具合に応じた方法で除去します。

アスベストは1955~2006年の間に建てられた建物に多く使われていました。実際、含有量0.1%以上の建材が使用禁止になったのは2006年からです。外壁材や断熱材など建物のいたるところに使われているので、細かな調査を徹底しています。

    
アスベストは種類により、養生や除去方法が異なります。資格を有した業者に依頼することが必要


Q5.見積書のポイントは?
A.解体工事一式に注意


「解体工事一式」と書かれただけの見積書は、発注者と解体業者との間で起こるトラブルの原因。契約に依頼者の希望する工事が含まれていない可能性も高いです。「こんなはずじゃなかった」と後悔しないよう、内訳が書かれた見積書を確認し、どういった内容なのか把握しましょう=下図参考。

また、見積書は悪徳業者を見分けるための指針にもなります。低価格の工事は魅力的ですが、手抜き工事だったり廃棄物の処理が不十分だったりとトラブルのもと。適切な解体業者がどうか判断するためには少なくとも3社の見積もりを取ることがオススメです。内訳などを比較すると適切な費用が分かります。



現在の作業資材

建造物の解体時に発生するアスベストやコンクリートの粉じん、重機の騒音などが、作業員をはじめ工事現場の周辺に悪影響を与えないことが必須だ。解体作業に使う資材について、建設資材の製造・販売をする琉球ブリッジ(株)の谷中田洋樹代表取締役に話を聞いた。


ボディーアーマー

アスベストが使われている建築物を解体する際には防護服の着用が義務です。琉球ブリッジは日本工業規格(JIS)に適合したオリジナルの防護服「ボディーアーマー」を提供しています。

3層構造の不織布を使用し、防じん性や通気性、透湿性などに優れた防護服です。ダイオキシンが発生する産業廃棄物処理施設でも使えます。

アスベストなどの有害物質から作業員を守るため、厳しい規定をしっかりクリアした防護服になっています。
 
写真提供:琉球ブリッジ


フレコンバッグ

フレコンバッグは建設時に出る産業廃棄物や穀物などの運搬や保管と幅広い用途で使える袋です。

沖縄の厳しい日差しにも耐えられるよう、高純度のUV剤を配合した耐候性フレコンバッグを製造しています。また、強度についても琉球大学工学部の建設材料学研究室と共同で暴露試験を行い、沖縄に適したフレコンバッグの製品を開発しています。

写真提供:琉球ブリッジ   


防音用シート

防音用シートは解体工事で発生する粉じんの飛散や騒音などを最小限に抑えます。周辺に悪影響を与えず、トラブル回避に欠かせない存在です。琉球ブリッジは消防法の防炎性能基準を満たした防音シートを提供。産学連携して遮音性能など品質を確かめる実験をしています。

通常はグレーのものが多いですが、会社のロゴやイメージカラーなどお客さまの要望に合わせた製品も製造できます。
写真提供:街クリーン建設


毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 年末年始特別号
第1982号 第2集・2023年12月29日紙面から掲載

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