建築系学生アイデア競う|Okinawa Idea Design Contest 2023|タイムス住宅新聞社ウェブマガジン

沖縄の住宅建築情報と建築に関わる企業様をご紹介

タイムス住宅新聞ウェブマガジン

スペシャルコンテンツ

建築

2023年9月15日更新

建築系学生アイデア競う|Okinawa Idea Design Contest 2023

総合資格学院沖縄校が主催する「沖縄アイデアデザインコンテスト2023」が8月16、17日の両日、那覇市の同校で開かれた。県内で建築を学ぶ学生が設計のアイデアを競い、琉球大学工学部建築学コースのグループが1位となった。

参加した学生と審査員ら参加した学生と審査員ら


夜通しで細部まで表現

同コンテストは、県内で建築を学ぶ学生が設計の発想力などを競うもので、若い技術者の育成が目的。今回で3回目の開催となる。インターナショナルデザインアカデミー、サイ・テク・カレッジ美浜、パシフィックテクノカレッジ、琉球大学の4校から9グループ、総勢45人が参加し、試行錯誤した。

今回の課題は「芸術家のアトリエ兼住宅」。設計条件として、2世帯(4人家族×2)が住み、創作する芸術の分野は学生自身で設定。作品を販売するスペースを含むアトリエや周辺環境との関係性なども求められた。

学生らには審査日の1週間前に課題が通知された。各グループは計画を練り、審査前日に図面や模型などを作成。夜通しで細部までこだわった。審査当日、プレゼンテーション=左写真=があり。それぞれのグループが個性のあるアイデアを発表。県内で活躍する建築士5人が審査した。

最優秀賞作品に選ばれたのは琉球大学工学部建築学コ―スの3年生グループによる「Can bus」。同グループの吉田凪沙さんは「沖縄で学ぶ同世代の学生や審査員の方々の考えも知ることが出来て、勉強になりました。制作の途中で欠員も出ましたが、メンバーで議論を重ね納得のいく形に仕上がり、よかったです」と笑顔で語った。

図面や設計趣旨などをスライドにまとめ、プレゼンを行った図面や設計趣旨などをスライドにまとめ、プレゼンを行った

平面・立面・断面図に加え、作品のイメージ図を手描きで制作した平面・立面・断面図に加え、作品のイメージ図を手描きで制作した


方法変え審査 意図深堀り

総合資格学院沖縄校の江崎功学校長は「審査員の方々には優しくも時に厳しい助言をお願いしていた。学生の皆さんは設計の楽しさを感じつつ、助言を糧として今後の活動につなげてほしい」と話す。

一次のプレゼンテーション審査を終えた後、3~5作品が二次審査に進む予定だったが、審査員らが「学生の意図をより深く知りたい」と提案し審査方法を変更。学生と審査員が模型を囲み、全ての作品について議論を深めた=左写真。審査員からは「アイデアは非常に良かったが、依頼者に『あり』と思わせる提案力が弱い印象も感じた」「必要となる空間は芸術の分野で異なるため、今回の課題は難易度は高め。それでも各グループが短い準備期間で案を形にしたのはよかった」などと激励の言葉が贈られた。

車座で行われた審査。学生たちは審査員の意見に耳を傾けつつ、工夫した点について説明した車座で行われた審査。学生たちは審査員の意見に耳を傾けつつ、工夫した点について説明した


 

 最優秀賞  Can bus


琉球大学(工学部建築学コース)/吉田凪沙、平良亮伍、久保田聖凪、早川蒼真、梯駿輝(全員3年)

設計概要と評価ポイント

建物は3階建てで、各階は南側に大きく開口部を設けている。1階をアトリエ、3階までを生活空間とし、分棟式で水回りや居室、リビングなどを分けている。空間を箱単位でずらして配置することで、風と光が建物全体に行き届くよう計画。室内は可変性のある間仕切り壁を使い、家族の生活スタイルや創作活動の変化に対応できる造りなっている。審査では「空間をずらすことで、どこにいても外を感じられる構成。また、ずらしたことで生まれる余白も生活に応じて利用できる可能性を感じた」などと評価された。


 

 優秀賞  経年優家


インターナショナルデザインアカデミー(インテリア・建築デザイン科)/安村朱梨、翁長るみか、石原愛華、清村裟彩(2年)、サイ・テク・カレッジ美浜(環境建築学科)/石嶺咲(2年)

設計概要と評価ポイント

居住スペースやアトリエなどを分棟形式で配置。建物との間に植栽を施し、敷地を囲うように壁を設け、周辺環境と空間を分けている。「敷地を仕切る壁は高さを抑えつつ、少し浮遊させて周囲への圧迫感を軽減した」と学生ら。審査員らは「敷地をぐるっと囲んだ壁が地域からの関心をひきそう」「壁を浮遊させ、緑を地域に開いているのがいい」などと評価した。


 

 総合資格学院沖縄校賞   結 ~個性(今)と個性(昔)を繋ぎ表現する場所~


インターナショナルデザインアカデミー(インテリア・建築デザイン科)/比嘉迅、チェシー・コーディ、豊里一晟、宮平雄豪、玉城智成、石原昌輝(全員2年)
インターナショナルデザインアカデミー(インテリア・建築デザイン科)/比嘉迅、チェシー・コーディ、豊里一晟、宮平雄豪、玉城智成、石原昌輝(全員2年)

設計概要と評価ポイント

南側にある公園に向かって壁一面をガラス張りした住宅を二つ配置し、ウッドデッキでつないで世帯間の交流スペースを設けている。建物の右端にアトリエを置き、創作活動を地域の人が見れるようにして地域の交流の場としても演出。「家族間や地域との関わり方など、自分たちの考えが素直に形で表現されていた」と評価された。


 

 入賞以外の作品 

「ニシムイ美術アパートメント」
インターナショナルデザインアカデミー(インテリア・建築デザイン科)/宮里侑、長堂龍音、伊波柚季(2年)、堀川泰世(3年)



「ゆいまーる~子どもたちの未来につなぐ~」
パシフィックテクノカレッジ(建築学科)/与那嶺愛、糸数葵、上地充、幸地綾海、平良江里佳、屋我寧音(全員2年)

「at home the GALLERY」
インターナショナルデザインアカデミー(インテリア・建築デザイン科)/黒木楓恋、平安鈴、与那覇拓、外間かれん、前津楓埼(全員1年)

「対称な家」
パシフィックテクノカレッジ(建築学科)/惣慶颯、平和永、大工廻幸永、田港翔人、玉城萌音(全員1年)

「ニシムイのマムイン」
パシフィックテクノカレッジ(建築学科)/玉城夏、安里太樹、﨑山慎輔、末吉正宗、東恩納龍之介(全員2年)

「交園(こうえん)」
インターナショナルデザインアカデミー(インテリア・建築デザイン科)/仲里なつき、新垣珠琉、米須累、東一正(全員1年)


 

 山口瞬太郎審査委員長の総評 


山口審査委員長

第3回の本コンペは過去最大の参加人数で、どれも熱意のある作品ばかりでした。私たち審査側も学生と運営の熱意に応えるべく、審査方法の変更を提案。模型を審査員と学生が囲み、全ての案をフラットに最後まで議論できる場を目指しました。

建築設計の仕事は社会をマクロな視点で観察し、問題解決する役割を担っています。現代社会が抱えている課題は多様です。新時代の建築家となる皆さんには広い視野とみずみずしい感性を持って、沖縄をアップデートする人間になってほしい。今後のご活躍に期待しています。


毎週金曜発行・週刊タイムス住宅新聞
第1967号・2023年9月15日紙面から掲載

この記事のキュレーター

スタッフ
週刊タイムス住宅新聞編集部

これまでに書いた記事:2395

沖縄の住宅、建築、住まいのことを発信します。

TOPへ戻る