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2021年10月29日更新

【第7回沖縄建築賞】古谷誠章審査委員長から総評

古谷誠章氏による、第7回沖縄建築賞の総評。

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伝統踏まえ、新時代と向き合う


現地で風土を実感

今年は沖縄で一次審査を行い、続く二次審査では現地を訪れて応募者に会い、作品を拝見することができました。やはりその土地に立って実物を見るということは、土地に吹く風や光を肌で感じ、全五感で作品と向き合う、何にも代えがたいものでありました。

今年の傾向としては、沖縄の気候風土や伝統の上に立ちながら、新しい時代をどのように考えるか、真摯に向きあう作品が多かったと思います。沖縄でしかできない新たな可能性を追求し、沖縄で調達可能な材料、可能な工法、この土地に受け継がれた技術を活用するものともいえます。


建築の可能性広げる

住宅部門の正賞を獲得したのは「西原の家」で、設計者の自邸でもあり、仕事場でもあります。都市部の住宅が閉鎖的になりがちな中で、透かし積みれんがの「ひんぷん」により、透けつつ閉じる柔らかい関係を生み出しました。この壁と主屋との間にある水盤に取り入れられる光、風、雨だれが、街中でも「自然」の移ろいを感じさせます。

一般部門の正賞「食事処 ちゃんや~」は本部町備瀬のフクギ集落の中にあります。私は20年以上前にこの集落の実測調査をしましたが、当時からすでに空き家が増えつつあり、集落の将来を憂慮したのを思い出します。「ちゃんや~」は備瀬の景観になじみ、伝統的な材料、工法に基づいて建てています。新築ですが、この地域の古い空間様式をそのまま感じさせ、古い家を簡単に建て替えてしまう風潮に対して、鋭い批評になっています。

タイムス住宅新聞社賞は「恩納村立うんな中学校」。校舎全体が天井高の高いピロティ空間上にあり、恩納村の素晴らしい海と山の風景に開かれた校舎となっています。ピロティは大きな「アサギ」とも呼べる空間で、強い日差しを避けて人々がここに集うことができる場所になっています。

奨励賞や入選作品も、沖縄の気候風土の特性を生かして新たな建築の可能性を拓くものとして、高く評価します。


(前列右から2人目)ふるや・のぶあき/建築家。早稲田大学教授


第7回沖縄建築賞 審査委員
委員長
 古谷誠章氏(建築家・早稲田大学教授)
副委員長
 小倉暢之氏(琉球大学名誉教授)=前列左から2人目
委員
 伊良波朝義氏(日本建築家協会沖縄支部支部長)=後列左端
 武岡光明氏(県建築士事務所協会前会長)=後列右端
 金城傑氏(県建築士会前会長)=前列左端
 能勢裕子氏(彫刻家)=前列右端
 大嶺亮氏(前回住宅部門正賞受賞者)=後列右から2人目
 細矢仁氏(前回一般部門正賞受賞者)=後列左から2人目

 

審査の様子


第7回沖縄建築賞には16点(住宅建築部門9点、一般建築部門7点)の応募があった。

一次審査は9月2日、全応募者によるリモートプレゼン方式で行われ、各部門5点ずつに絞られた。

二次審査は10月15日と16日に現地審査が行われた=写真。16日の現地審査の後、沖縄建築会館での最終審査によって各賞が決定。最終審査の様子はインターネットで配信した。 昨年から審査委員長を務める古谷氏は「昨年は全審査がリモートだったが、今年は念願の現地審査がかなった。五感で建築を体感することで初めて分かることもあり、現地審査の大切さを改めて感じた」と話した。




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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1869号・2021年10月29日紙面から掲載

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