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2021年10月8日更新

住まいと暮らしとSDGs①

本コーナーは、住まいと暮らしの中で取り組めるSDGs(持続可能な開発目標)について、読者と共に考えていきます。



高校生が感じたことを研究
掃除・打ち水で屋根温度下げる

高校1年の知念隆也さん(15)は、エアコンが故障したのをきっかけに、「家で夏を涼しく過ごす工夫」について研究。日差しの熱を蓄熱するほど、室温を上げる屋根に着目し、掃除や打ち水、材料の違いで屋根の表面温度が変化するか調べ、夏休みの宿題にまとめた。知念さんは「掃除も打ち水も約2度下がった」と話す。

年1度の屋根掃除がヒントに
知念さん宅はRC造。陸屋根は芝や畑で緑化し、一部は白いセメントで仕上げている。「毎夏1度、屋根の白い部分を掃除する。高圧洗浄機で黒ずみを落とすと、表面がひんやりするなぁと感じていた」と知念さん。年1度の屋根掃除から「掃除と打ち水で涼しく過ごせるのでは?」と仮説を立て実験。掃除・打ち水の前後で屋根の表面温度を調べた結果、実際に温度が下がることが分かった。自分で感じたことや考えたことを元に、実際に数値で検証したところが面白い。

実験したのは、ことし8月上旬。外気温は30度前後だったという。汚れの有無で屋根表面の温度変化を見てみると、汚れありは37.4度、汚れなしでは35.6度になり、約2度下がった。また、打ち水前後を比較すると、35.6度から32.3度と、これも約2度下がる結果に。汚れありの場合でも水をかけ続けると32度台まで下がったという。

「たぶん黒い汚れを落とすことで熱の吸収を抑え、水の蒸発で熱を下げているんだと思う。表面温度が低くなり、天井に届く熱が抑えられたおかげで、エアコンも効きが良くなったように感じた。来年も掃除や打ち水を続けたい」と知念さん。



屋根の表面温度を測る知念さん。測定している白セメント部には遮熱効果が期待される炭酸カルシウムの粉が混ぜられている。知念さん宅では芝と畑で屋根を緑化し、屋根コンクリートが熱せられるのを抑え、天井に伝わる熱を抑えている

 研究をまとめた夏休みの宿題(抜粋)

 掃除前後の比較 
白セメント部
(前)37.4度 →(後)35.6度
黒ずみを落として約2度下がった


▲調査当時の白セメントの掃除前(左)と後

 打ち水前後の比較 
打ち水前後の比較
白セメント汚れなし
(前)35.6度 →(後)32.3度 約2度下がった


 材料の比較 
・コンクリートブロック…43.2度
・白セメント(炭酸カルシウム混合)…35.6度
・芝…38.8度
・畑…33.7度
真下の天井表面温度は29度後半にとどまった 


数値比較に一目置く
掃除や打ち水での変化に加えて、素材によって温度が違うのかも調べた。コンクリートブロックの表面は43.2度だったのに対して、白セメント部は35.6度。約7度も差が出た。白セメントには、炭酸カルシウムの粉が混ぜられている。遮熱効果が期待されるもので、浄水場から出る廃棄物でもある。「白セメントの温度は素手で触れられるくらいで、熱を吸収しにくいのが分かる。本来は捨てられるはずのものを屋根に使っていて、SDGsの一つ『つくる責任 つかう責任』にあてはまると思う」と知念さんは話した。

知念さん宅を設計し、同研究の結果を見たアトリエ・ネロの根路銘安史さんは、「炭酸カルシウムを混ぜたセメントを使うのは、私にとっても実験的な試みだった。知念さんの研究は感覚的にではなく、ちゃんと数値的に探ったことに一目置く」と称賛。「純粋な視点での研究が社会を変えると思う。そのような研究が広がれば、もっと過ごしやすい・住みやすい沖縄の未来が見えてくるのではないか」と話した。
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1866号・2021年10月8日紙面から掲載


 

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