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2021年10月8日更新
[沖縄・住宅の保険]知っていますか? 住まいの保険⑦|地震保険①「制度の歴史と現在の状況」
執筆/松代貴志(日本損害保険協会沖縄支部 事務局長)
地震保険①「制度の歴史と現在の状況」
県内付帯率はワースト2
一度発生すると甚大な被害をもたらす地震。この20年間だけでも大規模地震が頻発しており、地震保険支払い額も増大している。一方、県内で火災保険に地震保険をセット(付帯)している割合は、全国でも下から2番目と少ない。
2000年以降多い大地震
1兆円超えの被害も
沖縄は地震が少ないという声を聞くことがあります。しかし、昨年1年間で震度1以上の地震は99回発生(全国13位)しており、決して地震が少ないわけではありません。海に囲まれているので地震による津波のリスクもあります。
火災保険では、地震・噴火またはこれらによる津波を原因とする損害は補償されません。地震は発生頻度と規模を統計的に把握することが難しいうえに、一度発生すると異常・巨大な災害となる可能性があるためです。
そんな地震のリスクに対応するため、1964年6月の新潟地震(マグニチュード7.5)をきっかけにできたのが地震保険です。被災者の生活の安定に寄与することを目的として「地震保険に関する法律」が66年5月に制定され、政府と民間の保険会社が共同で運営する公共性の高い保険として、地震保険の引き受けが始まりました。
地震保険による保険金の支払額が最も多かったのは、2011年3月に発生した「東日本大震災」で約1兆3270億円、次に16年4月の「平成28年熊本地震」で約3883億円となっています。上位10件のうち、4位の1995年1月に発生した「平成7年兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)」以外は全て2000年以降に発生しています。
※日本地震再保険株式会社調べ(2020年3月31日時点)。※支払保険金は、千万円単位で四捨五入を行い算出。
※東日本大震災に係る支払保険金は、3.11 東北地方太平洋沖地震、3.15 静岡県東部を震源とする地震、4.7 宮城県沖を震源とする地震および 4.11 福島県浜通りを震源とする地震などを合計した約1兆3,270億円。
火災保険にセットで加入
離島・中北部で低い傾向
地震保険は、単独では加入できません。火災保険とセットで加入する必要があります。火災保険の契約件数のうち、地震保険をセットした契約件数の割合(付帯率)をみると、2020年度の全国平均は68.3%。一方、沖縄県は58.4%(全国46位)と全国平均より9.9ポイント低くなっています。
また、19年度の県内地方別付帯率をみると、豊見城市69.7%、南城市66%、糸満市63.9%と南部で高く、宮古島市40.3%、名護市51.3%、沖縄市52.4%と、離島や中北部で低い傾向があります。
地震はいつどこで発生してもおかしくありません。このコラムが県民の皆さんにとって、地震保険について考えるきっかけになればうれしいです。次回以降、地震保険の補償内容等についてお伝えしていきます。
執筆者
まつしろ・たかし/(一社)日本損害保険協会沖縄支部事務局長、
琉球大学客員教授
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1866号・2021年10月7日紙面から掲載