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2020年10月30日更新
島ラッキョウとフローレンスフェンネル|ハルサー×野菜ソムリエ[7]
文・写真 奥間美佐江
塩漬けや天ぷら、炒め物で人気の島ラッキョウは沖縄の伝統的農産物。フローレンスフェンネルはイーチョーバー(ウイキョウ)の仲間。どちらも香りが強く、整腸作用のある健康食材です。
香りの強い健康野菜
ジャガイモ、ニンジン、レタスなど、野菜がどんどん育つ季節。一方で、間引きや、虫の防除にも手間がかかります。私の場合、除草や中耕(株と株の間を耕す)はミニ耕運機を使っています。耕運機が通りやすいように通路を広くして野菜を一条植え(一つの畝に一列に植える方法)にすることで、風通しが良くなり病害虫の発生を抑えることもできます。
食欲そそる島ラッキョウ
この時季に植える作物としてオススメなのが島ラッキョウ。初めて島ラッキョウの浅漬けを食べた時、香りの強さにびっくりしました。ですが、シャキシャキの歯ごたえと辛みが食欲をそそり、家族も大好きな野菜です。病害虫や台風による塩害にも強いため育てやすく、植え付けから約4カ月で収穫できるようになります。
独特な香りで好き嫌いが分かれるフローレンスフェンネルもオススメ。沖縄では、その仲間のイーチョーバーが魚の臭み消しや整腸薬に使われてきました。
肥大した株元と茎葉、初夏に咲く黄色い花も食べられます。花をサラダに少量加えると爽やかな香りと甘みで、気分までスッキリ。種は口臭予防になるとされており、インド料理店のレジ横に置かれることもあります。
島ラッキョウ
育てるポイント
溝を掘り、株間25センチで浅めに種球を植え付け、十分に水をかけます。植え付けから1カ月で追肥と土寄せを行い、その後も2回追肥と土寄せをすることで、白い部分を長く伸ばすようにします。大雨の後、土が硬く締まった時は、中耕で土をほぐして根の張りを良くすることで成長を促します。
栄養とおすすめの食べ方
リン、カリウム、ビタミンC、水溶性食物繊維を含み、強い香りを発しているのは硫化アリルでビタミンB1の吸収を促します。疲労回復と血液の凝固を防ぐ働きがあり、生活習慣病の予防にも役立ちます。甘酢漬けにした島ラッキョウを刻んでタルタルソースやドレッシングに加えてもおいしいです。
種はできないが、秋に紫色の小さい花を咲かせる
フローレンスフェンネル
育てるポイント
肥沃で日当たりのよい場所に種をじかまきするのがオススメ。好光性種子なので、土は薄くかぶせて発芽するまでは乾燥しないように管理します。成長して混みあってきたら、間引きして風通しを良くします。茎葉は適宜収穫でき、種まきから約3カ月で株元も肥大します。
栄養とおすすめの食べ方
スパイスに多く利用され、野菜としての流通は少ないです。茎葉にカルシウム、βカロテン、ビタミンC、ビタミンKを含み、独特の香り成分はアネトール、ピネンなど。漢方では健胃、鎮痛、去痰で用いられます。株元のソテーや、スライスした茎をベーコンと一緒にさっと炒めて食べてもおいしいです。
島ラッキョウとフローレンスフェンネルのソフリット
ソフリットは一般的にタマネギ、ニンジン、セロリをみじん切りにして、オリーブオイルと塩を加え水分が無くなるまで炒めたもの。今回はタマネギの代わりに島ラッキョウとフローレンスフェンネルを使いました。カレーやトマトソースに加えるとうまみとコクが増し、パンにそのままのせてもおいしいです。時間のあるときに作り、冷凍保存しておくと重宝します。
今回の材料。右上から時計回りにフローレンスフェンネル、ニンジン、セロリ、島ラッキョウ
材料をみじん切りにしたもの。これを炒めれば完成
おくま・みさえ/野菜を育てるところから食べるところまで楽しむ野菜ソムリエプロ
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1817号・2020年10月30日紙面から掲載