[2020年地価調査]住宅地地価伸び率4.0%|タイムス住宅新聞社ウェブマガジン

沖縄の住宅建築情報と建築に関わる企業様をご紹介

タイムス住宅新聞ウェブマガジン

スペシャルコンテンツ

2020年10月2日更新

[2020年地価調査]住宅地地価伸び率4.0%

県は9月29日、土地取引価格の指標となる地価調査の結果を発表した。住宅地、商業地、工業地などの全用途(林地除く)で、前年比4・7%上昇し、3年連続全国1位の伸び率だった。住宅地は4・0%上昇で全国トップ。一方、前年よりも上昇幅は縮小しており、不動産鑑定士の濱元毅さんは「新型コロナウイルス感染症の影響でことし3月頃から地価が横ばい、または下落する地点がみられたことが要因」と話す。

コロナの影響で上昇幅縮小



※地価調査は都道府県知事が毎年1回、基準日(7月1日)時点における基準地の単位面積当たりの標準価格を判定。今年は県内41市町村284地点(住宅地193地点、宅地見込地5地点、商業地77地点、工業地5地点、林地4地点)で行われた。地価調査の結果は、県ホームページ県地図情報システムでも確認できる
※△はマイナス(下落)を示す



 コロナ禍で取引が停滞 

県内の地価は2014年に上昇に転じて以降、高い伸び率で推移。20年の全用途平均変動率はプラス4・7%で、3年連続全国トップとなった。入域観光客数が好調に推移、スーパーや百貨店などの売上高も前年を上回るなど、県内の景気拡大を背景に住宅地や商業地の需要が高まったことが地価を引き上げた。

一方、上昇幅は前年(7・9%)より3・2ポイント縮小。同調査の代表幹事を務める不動産鑑定士の濱元さんは「新型コロナウイルス感染拡大前の2月、3月頃までは地価が引き続き上昇する地点があったものの、3月~7月の間で横ばい、または下落する地点が見られたため、上昇基調に陰りが見られた」と説明する。

住宅地の地価動向についても同様の傾向が見られた=上グラフ。20年の住宅地平均上昇率は4・0%で全国トップ。上昇の要因は、新型コロナ感染拡大前に人口増加、景気拡大、低金利・住宅取得の税制措置などで需要が高まったためだという。

一方、前年(6・3%)に比べて上昇幅は2・3ポイント縮小した。濱元さんは「コロナ禍で4月、5月頃から取引が止まり、以前ほど活発ではない状況。買い手は『今後価格が下がるのでは』と様子見しており、売り手は『価格を下げるほどではなく、水準を維持したい』というマインドが働いているようだ」と話す。


 伸び率トップは西原町 

地価上昇をけん引しているのは那覇市が中心で、最高価格は那覇市天久で1平方メートル当たり33万円だった。また、周辺市町村にも住宅需要が拡大、価格の上昇が見られた。

市町村別で最も上昇率が高かったのは西原町で11・0%=表1。濱元さんは「モノレールの延伸、中城村南上原地域の発展により利便性が向上。那覇市に近く、土地価格の割安感もあって需要が増加したため」と、上昇の要因を説明する。
 宮古島市(上昇率10・8%)は、「観光施設や自衛隊基地などの整備でホテル従業員や建設作業員らの住宅需要が高まり、今年2月まで伸びが見られた。3月以降はそう大きく伸びていない」。また、読谷村や宜野湾市などの区画整理された地域、糸満市など交通利便性が向上した地域で地価が上昇した。

表1 高位変動率順位
 高位   市町村名  前年 2020年
  1 西原町  6.2%  11.0%
  2 宮古島市  2.6%  10.8%
  3 読谷村  17.9%  8.6%
  4 糸満市  2.8%  8.5%
  5 宜野湾市  14.4%  8.4%


一方、離島では人口減少により地価が下落=表2。「島内に高校がなく、子どもの進学に合わせて家族で島を出ているような状況が続いており、住宅需要が低い。コロナの影響は見られなかった」という。

今後の動向について、濱元さんは「ついのすみかなども含めて潜在的な住宅需要があり、増税やコロナ禍を受けて税制措置などが取られ、金融も低金利で借りにくい状況ではない。今後は、状況次第ではあるが、今のところリーマンショック時のように急激に地価が下がることはないのではないかと思われる」と話した。

表2 低位変動率順位
 低位   市町村名  前年 2020年
  1 伊江村  △2.8%  △2.4%
  2 久米島町  △2.6%  △2.0%
  3 多良間村  △0.9%  △1.2%
  4 粟国村  △1.0%  △1.0%
  5 国頭村他10村(横ばい)   0.0%

4市町村で上昇幅拡大

市町村別で住宅地の平均価格が上昇したのは26市町村(前年28市町村)、横ばい11村(7村)、下落4町村(6町村)。前年より横ばいが増え、国頭村と渡名喜村が下落から、渡嘉敷村と座間味村が上昇から横ばいになった。

ほとんどの市町村で上昇幅は縮小。一方、上昇幅が拡大したのは、宮古島市(8・2ポイント拡大)、糸満市(5・7ポイント)、西原町(4・8ポイント)、本部町(0・5ポイント)の4市町村。また、地価は下落しているものの、久米島町(0・6ポイント縮小)と伊江村(0・4ポイント)では、下落幅が若干縮小した。




県の平均価格(1平方メートル当たり)6万2600円を超える市町村は12あり、那覇市を中心に中南部や西海岸に集中する=上図。伸び率トップの西原町の調査地点で最も上昇したのは、上原(上昇率15・2%)。価格は10万9000円と、宜野湾市の平均価格に近づいた。宮古島市では農家住宅が多い地域が上昇しており、特に城辺字保良では上昇率37・3%と県内トップの上昇率に。しかし、価格は4230円で、約1000円程度の上昇だった。糸満市西崎町(37・3%)も上昇率トップで、価格は10万3000円。西海岸道路の整備、豊見城市豊崎地域の発展で便利になり、周辺地域よりも割安感があって需要が高まった。

表3 都道府県別住宅地高位変動率順位
 高位   都道府県名  前年 2020年
  1 沖縄県  6.3%  4.0%
  2 福岡県  1.7%  0.8%
  3 東京都  2.5%  0.2%
  4 宮城県  0.9%  0.1%
  4 大分県  0.1%  0.1%


 
取材/川本莉菜子
毎週金曜発行・週刊タイムス住宅新聞
第1813号・2020年10月2日紙面から掲載



 

タグから記事を探す

この記事のキュレーター

スタッフ
週刊タイムス住宅新聞編集部

これまでに書いた記事:2122

沖縄の住宅、建築、住まいのことを発信します。

TOPへ戻る