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2020年4月24日更新

人と土地をつなぎ「うつろう」デザイン|HOTELに習う空間づくり[11]

当連載では県内のホテルを例に、上質で心地良い空間をつくるヒントを紹介する。

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ハイアット リージェンシー 瀬良垣アイランド 沖縄(恩納村)


開放的なロビー。大小さまざまな木のキューブが印象的。窓に設置されたキューブは光と影のリズムをつくり、インテリアデザインのテーマである「うつろい」を感じさせる。奥には売店やバーがあるが、オープンになっている。同ホテルのコンセプト「コネクト」を色濃く反映し、人と人、人や土地をつなぐ場所となっている


動き生む「キューブ」

リゾートホテルのロビーは非日常や驚きに満ちている。それを景色で演出するホテルは多いが、「ハイアット リージェンシー 瀬良垣アイランド 沖縄」は、室内空間にこそ目を奪われる。

ロビーに入ると景色より先に、散りばめられたキューブにハッとする。大小さまざまな木のキューブの間から日差しが漏れ、琉球石灰岩の壁を柔らかく照らす。ロビーの天井高は8メートル。一面の石壁はかなりの迫力だが、キューブや大開口がその圧迫感を和らげる。

インテリアデザインのテーマは「うつろい」。手掛けたのは、東京を拠点にさまざまな商業空間などを手掛けるデザイナー・橋本夕紀夫氏だ。

同ホテルのマーケティングコミュニケーションズ アシスタントマネージャーの坂下信武さんは「キューブがもたらす木漏れ日のような光は、時間と共に変化していきます。そして大開口からは、島の風や景色のうつろいを感じることができます」と話す。キューブの「線」のデザインは、光・風・視線を通しつつ、影を作り動きを生む。「このロビーは人と人、人と土地をコネクト(つなげる)する、当ホテルを象徴する空間です」

「コネクト」とは同ホテルのコンセプト。仕切りが無く、外まで一体的なロビーは、コンセプトを色濃く反映している。

さらに面白いのはレストラン。入り口は一つで、五つの店舗が一続きになっている。入ってすぐあるのがバー。白い花ブロックがベールのようにふんわりと目隠しする。

バーを抜けると、古民家の深い軒「雨端」を模した空間が現れる。赤瓦の下で日本料理が楽しめる店の先には、炉端焼の店がある。インテリアに用いられているのは島とうがらしの泡盛漬け「コーレーグース」だ。「旅の途中、路地を散策しながらお店を発見するように、食との出合いを楽しめる空間になっています」
 
壁面には琉球石灰岩が用いられている。8メートルある天井高いっぱいに設けられた石壁は迫力がある。初めて同ホテルを訪れる人は、まず窓のキューブに目を奪われた後、一面の石壁に「驚きの声を上げるお客さまも多い」と坂下さんは話す


レストランの入り口。五つの店が一続きになっている。花ブロックの先はバー


バーの先には古民家の軒先を模したデザインの日本料理店舗がある


ウージ染めをポイントに

344室ある客室は、すべてオーシャンビュー。全室、バルコニーやシーリングファンが付いておりリゾート感を演出する。「客室は引き戸を多用していて、開けていればワンルームのように広々と使うことができます」。ここにも「コネクト」が反映されている。

落ち着いた内装の中で、ひときわ映える若草色のアートは、ウージ染めだ。「インテリアデザインを手掛けた橋本さんが鮮やかな色を気に入って、ポイントカラーとして取り入れています。クッションやサインなどにも使われています」と坂下さん。

ウージ染め、琉球石灰岩、花ブロックなど地域に根ざした素材を印象的に取り入れているが、沖縄色が全面に出ているわけではない。ローカルとモダンが両立している。「ある意味、さりげないからじゃないでしょうか。パッとみてすぐ沖縄らしさを感じるものではなく、よく見ると分かる、分かる人には分かる素材が用いられています。随所に取り入れられた地元素材との出合いも楽しんでいただきたい」

沖縄文化と人も「コネクト」する。



花ブロックに囲まれたバー。正面の窓からはサンセットが望める
 
コーレーグースがレストランの装飾に用いられていた


角部屋「オーシャン コーナー スイート」は106平方メートル。リビングと寝室が分かれている。ベッドの向こうにリビングがあり、引き戸で分断することもできる。ヘッドボードにあるのはウージ染めのアート

取材/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1786号・2020年3月27日紙面から掲載

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スタッフ
東江菜穂

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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。

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