リノベ
2015年5月8日更新
業界が変わる?住宅診断の義務化 検討|中古もイイね[7]
中古住宅の市場をめぐる動きに変化が出ている。瑕疵保険とセットで住宅ローンの金利優遇を受けられるサービスの登場、政府で検討中の住宅診断(インスペクション)の義務化がそれだ。県内で中古住宅の流通促進に取り組むOKINAWA型中古住宅流通研究会は「安心して売買できる環境が整いつつある」と見る。
瑕疵保険付け金利優遇
市場をめぐる変化は主に三つ。一つ目は、買主もしくは売主が物件に瑕疵保険などを付けることで、住宅ローンの金利優遇が受けられるサービスの登場。本土では静岡県で2013年から実施されている。
主なメリットは、買主には安心感や金利の優遇、売り手には"折り紙つき"物件となることでの売りやすさ、金融機関には担保設定のしやすさが挙げられる。
同研究会メンバーの柿本洋さん(佐平建設常務)は「県内で実施する場合、瑕疵保険の加入だけで十分」と考える。瑕疵保険では、柱や梁などの主要な構造物、屋根など雨水の浸入を防ぐ箇所などを調べるが、内容が、建物の劣化を調べる「住宅診断」とほぼ同じだからだ。
同サービスには静岡県労働金庫が提携していることから、県内で実施ができないか、同研究会は沖縄県労働金庫に情報を提供。同金庫は現在、検討中だ。
二つ目は、政府による住宅診断義務化の検討。宅地建物取引業法を改正し、契約前の重要事項説明書に住宅診断の項目を新設。仲介業者に販売時の説明を義務付ける。改正法案は2016年の通常国会に提出される見通しだ。柿本さんは「住宅診断の費用負担を、売主と仲介業者どちらにするかなどのルール決めが今後検討されるだろう」と話した。
三つ目は、宅建業者が物件の査定に使うソフト、戸建住宅価格査定マニュアル(不動産流通推進センター作成)の改訂。ことし7月をめどに行われる。屋根や外壁だけでなく、建具や内装、水回り設備をリフォームした場合、査定に反映されるようになる。住宅をメンテナンスするほど、プラス査定になる。
柿本さんは「買い手と売り手双方にメリットがある市場の環境が整いつつある。県外の情報をいち早くつかみ、県内でできることを提案したい」と述べた。
OKINAWA型中古住宅流通研究会のメンバー。中央が柿本さん。住宅診断が手軽にできるマニュアル「おうちクリニック 住宅カルテ」を作成した
中古市場をめぐる主な動き
①「保証パック」で金利優遇
静岡不動産流通活性化協議会が「中古住宅あんしんパック」の名称で、静岡県労働金庫と提携して実施。瑕疵保険などが付けられる同パックを利用すれば、同金庫の住宅ローンで、0.2%金利が優遇される。同パックで付ける保証は、瑕疵保険のほか、住宅診断、シロアリの検査・1年保証、地盤調査などから選べる。「物件の質の確保と取引の促進を両立でき、県内の金融機関にとっても他社との差別化になるのでは」と柿本さん。
②住宅診断 重要事項説明で義務化(検討中)
政府与党は宅建業法を改正し、重要事項説明書に住宅診断の項目を新設。販売時の説明を義務付ける方向で動いている。中古住宅を安心して売買できる環境を整えるのが狙い。住宅診断で見つかった欠陥を、仲介業者が買主に説明していないことが発覚した場合、買主が補修や売買契約の解除などを請求できるようにすることなども、併せて検討される。
③メンテナンスがプラス査定に
ことし7月をめどに改訂される「戸建住宅価格査定マニュアル」で、屋根や外壁だけでなく、建具や内装、水回りのリフォームも査定に反映できるようになる。建物の内外でこまめにメンテナンスしてきた物件ほどプラス査定につながる。同マニュアルは査定の根拠を示すものとして、宅建業者で使われている。
瑕疵担保責任保険とは?|中古もイイね[8]
物件を自己チェック|中古もイイね[6]
編 集/我那覇宗貴
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞「中古もイイね<7>」第1531号・2015年5月8日紙面から掲載