相続
2024年7月5日更新
3千万円特別控除 相続から3年内!|どうするその空き家 あなたの実家も!?
文/山入端学(全国空き家アドバイザー協議会沖縄県名護支部事務局長)
近年、相続のご相談をよくいただきます。私が50代半ばに差し掛かり、親の介護や相続問題に直面する世代になってきたからでしょうか?
内容は相続(争族)をはじめ、境界問題・賃貸借問題・家屋の解体など多岐にわたり、解決に数年から数十年と長い期間を要するケースも少なくありません。
また経済的にも、今後の両親の介護費用、自分たちの老後の蓄え、相続予定の税金の支払いなど、複雑に絡み合うケースが多いです。
居住用の土地・建物
所有期間に関わらず
通常、土地建物の売却時には、所有期間別に譲渡所得税がかかります。ただし、居住用財産(空き家)として相続した土地建物を売却(譲渡)した場合には、所有期間の長短にかかわらず譲渡所得税から最高3千万円まで控除ができる特例があります(2027年12月31日まで)。
例えば下図のように【特例の適用なし】のケースでは510万円の譲渡所得税を支払わなくてはいけませんが、【特例の適用】を受けることにより譲渡所得税が控除され0円となります。ただし、特例の適用を受けるためには幾つかの要件があります。ここでは主な要件を紹介します。
1人暮らしに限る
ホーム入居者も対象
1.1人暮らしに限る
被相続人が1人で住んでいた家(空き家)とその敷地を相続した場合、被相続人が死亡した日から丸3年後の年末(12月31日)までに、住んでいた空き家と敷地を売却すると、その利益から3千万円を控除できます。また、ことし1月1日以後の譲渡は、家屋や土地を取得した相続人が3人以上の場合の特別控除は2千万円までとなります。
この特例は空き家をなくすことを目的にしていますので、被相続人が亡くなられた時点で1人暮らしの場合に限られます。
2.ホーム入居者も対象
2019年度の税制改正により、次の①②を含む一定の要件を満たす場合に限り、相続の開始直前まで被相続人が住宅として活用していたとみなし本特例を適用できることになりました。この改正は、2019年4月1日以後に行う被相続人居住用家屋(建物)またはその敷地(土地)の譲渡から適用されます。
①被相続人が老人ホーム等に入所した時点において介護保険法に規定する要介護認定等を受け、かつ、相続の開始の直前まで老人ホーム等(※1)に入所していたこと。
②被相続人が老人ホーム等に入所をした時から相続の直前まで、その家屋について、被相続人による一定の使用(※2)がなされ、かつ、事業や貸し付け目的での利用がなく、被相続人以外の者も住んでいないこと。
(※1)老人ホーム等とは、認知症対応型老人共同生活援助事業が行われる住居(いわゆるグループホーム)、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院、サービス付き高齢者向け住宅、障害者支援施設、障害者共同生活援助を行う住居。 (※2)ここでいう一定の使用とは、被相続人の居住用家屋が被相続人が実際に住まなくなってから相続の開始の直前まで、被相続人の家財・その他が保管されていたこと。 |
書類確認もあり
国税庁HPに詳細
また実務上、次のいずれかの書類による確認も必要となります。
◆電気・水道・ガスの契約名義(支払人)および使用中止日が確認できる書類
◆老人ホーム等が保有する外出、外泊等の記録
◆市区町村が認める者が家屋の管理を行っていたことの証明書
◆不動産所得がないことを確認するための地方税の所得証明書等
そのほか詳しい要件は、国税庁のホームページ、No.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」をご参照ください。
やまのは・まなぶ
1969年生まれ、名護市在住。昨年、(一社)全国空き家アドバイザー協議会沖縄県名護支部を設立し事務局長就任。(同)城コーポレーション代表社員。沖縄県宅地建物取引業協会会員。北部地区宅建業者会副会長
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2009号・2024年07月05日紙面から掲載