相続
2024年5月3日更新
戦後急増の住宅地 30年後には深刻化|どうするその空き家 あなたの実家も!?
文/山入端学(全国空き家アドバイザー協議会沖縄県名護支部事務局長)
戦後急増の住宅地 30年後には深刻化
一世代につき一軒
世帯数以上に増加
これまでは「家」は住み継いでいくものでした。昔から先祖代々、親から子へ、そして孫へと家や土地を受け継いできました。「子や孫と一緒に住む」ことによって、実家が空き家にならなかったのです。しかし、昨今の核家族化や就職問題、生活スタイルの多様化などから一世代につき一軒の家を建てるようになり、その結果、世帯数の増加以上に住宅が増えていきました=図1。
日本で人口減少という言葉が広く用いられるようになったのは、2005年12月に「国勢調査」による速報人口を総務省統計局が公表したころからです。統計局は「1年前の推計人口に比べ2万人の減少、わが国の人口は減少局面に入りつつあると見られる」とし、社会的注目を集めました。
その後の人口推計・人口問題研究機関によると、2020年現在で約1億2615万人とされる人口は、50年後の2070年には約8700万人になるとも予測されています。また1997年には既に子供の数が高齢者人口よりも少なくなる「少子社会」となっており、一方で高齢化は進展し続けています。
これらのことから、戦後の高度成長期以降、次々に団地造成事業や住宅開発が実施されたニュータウンと呼ばれる新興住宅地は、今後、空き家増加の温床になるとも。つまり、戦後の第一次二次ベビーブームといわれる現在の70代、50代の世代が亡くなる20年~30年後には、空き家問題が深刻化するのです。
賃貸・売却・除去
意向あっても課題多
空き家所有者実態調査(国土交通省)による「空き家の将来の利用意向」では、将来的にも利用の意向のない「空き家にしておく」との回答が約3割に上ります。一方、将来的に賃貸・売却の意向のある所有者は2割を超えるものの、その4割は実際に賃貸・売却に向けた活動は何もしておらず、将来的に除去意向のある所有者は13%いますが、うち約3割が除去費用について未定であるとしています。
空き家にしておく理由として、「物置きとして必要」のほか、利活用を図ろうとしても「更地にしても使い道がない」「住宅の質の低さ」や「買い手・借り手の少なさ」により空き家となっていることが挙がっています。また、「解体費用をかけたくない」「労力や手間をかけたくない」といった消極的な理由のほか、「特に困っていない」とする所有者も少なくありません。一方、実際に売却や賃貸を考えている所有者からは課題として、「買い手・借り手の少なさ」「住宅の傷み」「設備や建具の古さ」などが挙げられています。
自身で管理が9割
管理十分と言えず
空き家の日頃の管理は、専門家である不動産会社などが行っているものは4%弱に過ぎず、誰も管理していないものが3%程度、所有者自身、親族、親戚または友人、知人、隣人が行っているものが90%を占めています。ですがその管理の内容は必ずしも十分と言えず、所有者の居住地が遠隔になるほど、管理頻度が低くなります。
以上の理由から、空き家が増え続けているのです。
やまのは・まなぶ
1969年生まれ、名護市在住。昨年、(一社)全国空き家アドバイザー協議会沖縄県名護支部を設立し事務局長就任。(同)城コーポレーション代表社員。沖縄県宅地建物取引業協会会員。北部地区宅建業者会副会長
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2000号・2024年05月03日紙面から掲載