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2022年4月1日更新

[沖縄]現金より多い不動産資産|失敗から学ぶ不動産相続①

不動産を相続した時、何をどうすればいいだろう。本連載では不動産相続の専門家・ともりまゆみ氏が、失敗事例をもとに相続のポイントを説明していく。初回は導入編として2ページに拡大してお届け。県内不動産相続の現状を解説し、弁護士と司法書士からのコメントも紹介する。(文・ともり まゆみ)


導入編「沖縄における不動産相続の現状」

もめない相続のために

不動産専門ファイナンシャルプランナーのともりまゆみです。先月まで「マンション売買そうだんファイル」を連載していました。

今月からは不動産相続の専門家として、これまで実際にご相談にいらっしゃったお客さまの失敗事例をもとに、もめない不動産相続のポイントについてお伝えしていきます。身近な親族や友人、知人から耳にしたことのあるような、相続に関する話題が中心となる予定です。ご自身の事情に照らし合わせて参考にしていただければと思います。

1回目は沖縄の不動産相続の現状についてお伝えします。
 

税対策必要な人少数

「不動産の相続対策」という言葉を聞くと、相続「税」対策を思い浮かべる方が多いでしょう。しかし相続税対策が必要な相続は、実際には多くありません。

沖縄国税事務所が出した統計データによると、2019年に相続税が課税された相続の割合は全体の死亡者数の6・5%です。つまり多くの方にとって相続「税」対策はあまり必要ではないのです。

ではなぜ「不動産の相続対策」が必要なのか。それは沖縄の相続における二つの特徴が影響しています。
 

沖縄県内の死亡者数全体における相続税課税状況(2019年)


 

沖縄相続二つの特徴

まず一つ目は、先祖崇拝に伴うトートーメーなどの承継ルールが根強いこと。 県内ではトートーメーの承継にともない、家や財産も長男がすべて継ぐことを良しとする慣習がまだまだ根強く残っています。

親や長男がそれを当然だと思っていても、他の弟姉妹はどうでしょう。民法上では長男以外の子も同等に財産を相続する権利があります。そのため、いざ相続が発生した際、その権利を主張する可能性は十分にあります。

二つ目は相続財産の中で不動産の割合が多いこと。ざっくり言うと、不動産資産の割に現金資産が少ないという傾向があります。

現金なら兄弟姉妹の人数に応じて分けやすいのですが、不動産の場合は家や土地を切り分けることは現実的ではありません。共有名義にすることで将来的にさらなるもめごとに発展する可能性も高くなります。



財産少なくてももめる

「うちはそんなに財産がないからもめないよー」という方。実はそんなことはありません。

2020年のデータによると、家庭裁判所で扱われた遺産分割事件のうち、不動産を含めた遺産総額が5千万円以下であるものが全体の4分の3以上となっています。そのうち1千万円以下が35%であることから、私たちの身近な場面で、もめる相続が展開されていることが分かります。

だからこそ不動産の相続対策が必要なのです。


遺産価額別 遺産分割事件件数の割合(2020年)


5000万円以下が全体の4分の3以上、1000万円以下が全体の3割を超える。

不動産資産を含めた金額ということもあり、相続で争うのは多額の財産を持っている家族だけとは限らないことが分かる。


多様な役割と専門家

相続の際、誰にどう相談していいのか分からず、にわか知識で言われるがまま不要な対策を行って、その結果争いのタネが増えてしまったというケースも見受けられます。

不動産相続の現場では、調停などもめ事の解決は弁護士、不動産の名義変更は司法書士、税の計算は税理士、遺言書作成のサポートは行政書士など、分業されている場合がほとんどです。また相続の内容によっては、横断的に複数の士業への依頼が必要となるケースも多くあります。

それぞれの役割を把握して自分で調整できる人はいいのですが、難しい人は、各士業の先生とチームを組んでサポートするコンサルタントなどに相談を。

相続でもめる相手は親族です。私たちのウヤファーフジ(ご先祖さま)は子孫同士がもめるために財産を遺したわけではありません。ウヤファーフジの意をくむためにも、また私たちの子孫の幸せのためにも、本連載でもめない相続について知っていただき、ご家族で話し合うきっかけになればと思います。
 

不動産相続に関わる専門家

専門家の力を活用して、もめない相続にしよう
 

法的知識で相続トラブルを解決


久保以明(もちあき)さん(弁護士法人琉球法律事務所 所長弁護士)

沖縄で相続問題といえば不動産の分割問題と言っていいほどです。沖縄では経済的価値の高い相続財産は不動産がメインで、預貯金のような金融資産が少ないことが多い。このことが深刻な相続問題を引き起こします。

なぜなら、不動産は預貯金のように簡単に分けられないからです。結局、先祖代々の土地建物を売却してお金で分配しなければ問題が解決しないことも多い。この問題は相続が始まってからでは手遅れとなります。自分自身が先祖から引き継いだ大切な財産を、再び子孫に引き継ぐことを望むのなら、生前にきちんと対策を立てることが必須です。

そこで、数年前から沖縄初の相続専用サイトを立ち上げて、相続問題に注力。数多くの相続トラブルの解決や、生前対策のお手伝いをさせていただいています。

相談者のお話をよく聞いた上で、相続に関する法律的な知識からどう解決するのがよいか、結論の方向性を説明。相談者に安心してもらいつつ、共に解決に向けて進めていきます。

相続をめぐる法律は複雑で難解です。相続が発生した際は、相続に強い法律家等に一度相談されることを強くお勧めします。

 

要望に応じて法律書面を整理


日高憲一さん(レスター司法書士法人 代表司法書士)

親の財産相続を、家族同士で争う「争族」としないため、重要なのが事前対策です。相続はとても複雑で他人に話しにくい内容です。ただ、超高齢社会となった今、司法書士として一番多い相談です。成年後見人、遺言、信託から遺産分割協議に至るまで専門的かつ幅広く対応しています。

例えば、先日、公証人役場にて家族信託と遺言書の作成について手続きをしました。相談の窓口になった相続コンサルタントからの紹介で、コンサルタントが家族の要望事項をとりまとめてくれていました。その要望事項をもとに、司法書士として公証人役場で「家族信託契約書の作成」と「登記手続き」と「公正証書遺言の作成」を行いました。家族の要望に応じて法律書面をしっかり整理する。それが司法書士の仕事です。

実際の「争族」の現場では、故人の歴史から始まり、仏壇の承継、財産の分配というような話し合いになります。人ごとだと気にならなくとも、自分の家族間のこととなれば話しは違うようです。

解決策は、多種多様な方法が存在しますが、まず第三者で専門的な知識がある人に相談することが最短かつ効率的な方法でしょう。



[執筆者]
友利真由美/(株)エレファントライフ・ともりまゆみ事務所代表。相続に特化した不動産専門ファイナンシャルプランナーとして各士業と連携し、もめない相続のためのカウンセリングを行う。☎098・988・8247

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1891号・2022年4月1日紙面から掲載

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