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2017年3月3日更新

街路遮り 開口工夫で明るい室内|遠藤建築設計室

沖縄本島中部の密集地にある往来の激しいT字路に建ち、騒音・人目・西日に悩む築40年の実家を建て替えたNさん宅。伸び伸び暮らすカギとなったのは、開口部の工夫や隣家との緩衝空間だ。

騒音・人目・西日を解消 キッチン囲み目隠し

Nさん宅  RC造/自由設計/5人

玄関側から見たLDK。南の掃き出し窓を開ければウッドデッキや芝庭までつながる開放的な集いの場に。左手、掘りごたつ式ダイニングとを仕切る収納も抑え広々と


掃除・片付けをラクに
往来の激しいT字路のある西側に、一切窓はなし。玄関から室内に入ると、南の大窓からウッドデッキや芝庭へと続く開放的なLDKが広がる。
「以前はT字路側にリビングがあって窓が開けられず、昼でも暗くて暑かった。今は車も人目も気にならないし、風通しが良くて、とにかく明るい。電気をつけっぱなしだったかなと思うくらい」と笑う夫妻。
プランは知人の紹介で知り合った建築士に依頼。来客が多く、男の子3人を育てる共働き世帯ということもあり、夫人は「掃除・片付けがラクにできる造り」にこだわった。キッチンを木壁で囲んだのもそのためだ。目線の高さに小窓を設けたことで「手元は完全に隠せるけれど、子どもたちの様子は見えるのがいい」。床は掃除しやすいタイル張りにし、学校の書類を整理できる家事スペースも設けている。
その奥には家族の衣類を収納できるウオークインクローゼット、物干し場へ続く勝手口、浴室がひとまとまりに。「取り込んだ洗濯物はそのままポールにかけるだけ。野球から帰ってきた子どもたちが、駐車場から勝手口を通って浴室に直行できるのも助かってます」。

掘りごたつが好評
夫妻が「居酒屋風のオシャレな個室をイメージした」という掘りごたつ式のダイニングスペースは、家族はもちろん、来客からも好評だ。「キッチンの隣なので片付けもしやすいし、友人らもソファよりこっちに座りたがる」と夫人。「昼は芝庭を眺めてのんびり。夜はライトアップされる北側の植栽がいいカンジ」とNさんもリラックスした表情に。
LDKを広く取った分、個室はコンパクトに。子ども室のベッドを互い違いにしたのは夫人のアイデアだ。
今では、子どもの野球仲間や父母らと集まって庭でバーベキュー。家族でくつろぎ、大勢でにぎやかに。一家はのびやかな暮らしを楽しんでいる。


ウッドデッキから見たLDK。掘りごたつのある北側は杉の塀で目隠ししているものの、坪庭の効果で明るい印象。室内中央部も天窓を設け明るく


キッチンは壁で囲んでいるものの白で統一し明るく爽やかに。床のタイルは、掘りごたつの畳と色をそろえ墨黒に


洗面・浴室。床をタイルで統一し間仕切りもガラス張りにしたことで実面積以上に広々。坪庭と高窓で採光・通風も


ここがポイント
天窓と緩衝帯 光風入れ防音

四方を住宅に囲まれたT字路に建ち、人目、騒音、西日対策が課題だったNさん宅。北側に近接する隣家に「生活音が聞こえる」悩みもあった。そこで建築士の遠藤篤志さんが提案したのが、①閉じる、開くのメリハリ②天窓③緩衝空間だ。
T字路に面する西側は完全に閉じ、集合住宅が建つ東の窓は必要最小限に。唯一、隣家と距離があった南に向けてリビングの掃き出し窓を、室内中央部には天窓を設け、光と風を取り込んだ。
北側は隣家との間に2メートルほどスペースをとって庇をかぶせ杉板の塀を設けることで、緩衝空間ながら物干し場や坪庭としても活用。坪庭上部は杉板のパーゴラにすることで、暗くなりがちな北側室内にも採光・通風を促しつつ、隣家2階からの視線をカットしている。
一方でストレスなく家事ができる環境づくりにも配慮。子どもたちに目が行き届くよう、玄関と子ども室の間にキッチンを配置。水回りは一カ所にまとめて回遊性を持たせたほか、家族の衣類はまとめて収納できるよう大型のウオークインクローゼットを設置。廊下には大容量の物置を設け、掃除道具の収納スペースも電源付きで確保した。


夫妻こだわりの掘りごたつ式ダイニングスペースは木と墨黒の畳で和モダンな雰囲気を演出。低めの木天井にしているのは、座位での安心感を出しつつ、緩やかにスペースを区切るため


北側の緩衝空間。坪庭上部は室内への採光・通風や植物の生育環境を考え、庇をくり抜いた。正面奥は駐車場へとつながる


LDK側の子ども室。ベッドスペースの上部は、隣の子ども部屋のベッドスペースにすることで省スペース化


T字路のある西側から見た外観。曲線でくり抜き、壁面は型枠で木目調に仕上げた右手玄関スペースがアクセントになっている

[DATA]
家族構成:夫婦、子ども3人
敷地面積:320.65㎡(約97坪)
1階床面積:135.35㎡(約41坪)
建ぺい率:45.41%(許容70%)
容積率:42.21%(許容200%)
用途地域:第一種中高層住居専用地域
躯体構造:鉄筋コンクリート造壁式
設 計:遠藤建築設計室 遠藤篤志
構 造:(有)建築設計庵
施 工:(株)フレームワーク
電 気:(有)三省電気工事
水 道:(株)エノビ防災技研
キッチン:(有)カーサ
造 園:艸木
[設計・問い合わせ先]
遠藤建築設計室
090-3795-9843
www.geocities.jp/enatto
写真/泉公/ララフィルム撮影  編集/徳正美
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1626号・2017年3月3日紙面から掲載

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