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2019年11月15日更新

建築の歴史や魅力 都市全体で共有|ロンドン住まい探訪[8]

文・比嘉俊一


2010年「オープンハウス・ロンドン」のパンフレット。公開されている施設の概要やイベントの案内が掲載されている
 



ロイズ・オブ・ロンドンは鉄とガラスの外観、ステンレスに覆われた外階段、外部に露出されたエレベーターと設備スペースなど、当時としては類を見ない意匠的な特徴がある。歴史的な石造りの街並みが残るロンドン中心街の中にあって、建設当時は大きな議論を巻き起こしたことは容易に想像できる。設計者はリチャード・ロジャースというロンドンで最も有名な建築家の一人である。オープンハウス開催時は朝から多くの来訪者が集まっていた。現在、この建築物は英国で歴史的建造物を法律で保護するための「登録建築物(Listed building)」に登録されており、ロンドンだけでなく英国にとっても重要な建築物の一つとなっている


オープンハウス・ロンドン①

800余の施設を無料公開
短い夏が終わり長い冬を迎える前の9月・10月、ロンドンで一番好きな季節の秋、「オープンハウス・ロンドン」という一大イベントが週末の2日間だけ開催される。1992年から始まったこのイベントの会期中は、普段なかなか入れないロンドン市内に点在する歴史的建造物、公共施設、そのほか多くのデザインの優れた建物が無料で一般公開される。また同期間に合わせて地域のツアーやゲストトークも催されており、近年では800を超える建築物が開放され、25万人以上の人々を魅了している。「オープンハウス」の趣旨は、市内の重要で優れた建築物を公開することで都市の歴史や魅力を個人、地域、都市全体で共有することである。建物を公開することが都市を開くことにつながっている。

このイベントで公開される多くの建築物の中において、1986年完工の「ロイズ保険組合本社ビル(ロイズ・オブ・ロンドン)」=写真=は最も知名度が高く人気のある建物の一つであった。その当時で築20年以上経過していたが、ホールの大吹き抜け空間、上部まで伸びる柱、デザインされたエスカレーター群、降り注ぐようにトップライトから落ちる光は、内部のガラスの反射と相まってただただ美しく、建築の持つ力に圧倒された。

首里城消失で思うこと
最後に、先日の首里城火災について一言。戦争や震災の実体験がない私は、首里城の景色は変わらず残り続けると頭のどこかで思っていた。しかし現実は戦後約30年かけて復元した首里城が一夜にして消失した。30年間、一体どれだけ多くの方々が首里城復元に寄与されてきたのか、火災によって失われたものは私たちの想像をはるかに超えて大きい。
 

 

ひが・しゅんいち/1980年生まれ。読谷村出身。琉球大学工学部卒業後、2005年に渡英。ロンドンでの大学、設計事務所勤務を経て、16年に建築設計事務所アトリエセグエを設立。住み継がれる建築を目指す

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1767号・2019年11月15日紙面から掲載

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