応援! 第30回技能グランプリ|タイムス住宅新聞社ウェブマガジン

沖縄の住宅建築情報と建築に関わる企業様をご紹介

タイムス住宅新聞ウェブマガジン

スペシャルコンテンツ

特集・企画

2019年3月22日更新

応援! 第30回技能グランプリ

今回は、2019年3月1日~4日に兵庫県で開かれた技能グランプリの入賞者にインタビュー。技能五輪は23歳以下の青年技能者の競技だが、技能グランプリは年齢制限がなく熟練技能者が技を競う。フラワー装飾で伊集香奈子さんが銅賞を、畳製作で伊波孝さんが敢闘賞を受賞した。

特集・企画

タグから記事を探す

花の面白さ伝える好機
伊集香奈子さん(40) フラワーショップエバ

業界外へ、フラワー装飾の面白さや可能性を伝える好機となった。出場させてくれた会社や家族に感謝!

フラワー装飾で銅賞

-伊集さんに聞きました
■大会はどうだったか
会場で選手を見渡すと、雑誌で見たことがある方がいたりして「入賞は無理かな」と一瞬、弱気になりました。だけど、競技が始まってしまえば自分の世界に没頭でき、「私って本番に強いタイプだな」と思いました(笑)。

競技では、3時間以内に花束、ブライダルブーケとブートニア、フラワーディスプレーを製作します。私は制限時間をギリギリまで使い、一つ一つ丁寧に作り込むことに重きを置きました。

フラワーディスプレーのテーマは「New future  in KOBE(神戸の新しい未来)」で、私が最初に考えたデザインは船のモチーフをメインにしていましたが、インパクト不足が否めませんでした。そこで本番4日前に急きょ、デザインを変更。「始まり」をイメージし、バラで太陽のモチーフを製作しました=右写真。アート的に作り込むことで周りとは違う路線の作品ができました。

銅賞はもちろん喜びですが、私の作品を見た他の選手から、「このデザイン、インパクトがあって好きです」と言われたのがうれしかった! プロに認めてもらうのは自信になります。


技能グランプリで伊集さんが製作したフラワーディスプレーの作品。バラなどで作った太陽から船へ日が差し込む

■出場の意義は
社会人になると仕事を褒められることが少なくなるので、大会に出て腕を認めてもらうとモチベーションアップになります。

また、業界外へ私たちの仕事をアピールする好機にもなりました。今回、大会から帰ってきたら、中1の長女に「お母さんってすごい人だったんだね!」と言ってもらいました。取ったのは銅賞でしたが、娘からは誕生日祝いも兼ねて金色の花のピアスをもらい、思わず涙が出ました。6歳の次女は、2017年11月に私が出場した「花いけバトル(観客の眼前で5分間で花を生ける競技)」に触発され、庭の花を切ってきて一生懸命生けていたこともあります(笑)。

さまざまな大会に出場して花を扱う仕事の面白さや可能性を外の世界へ伝えることは大切です。見てもらうことで、次世代のなり手が増えると思います。

ただ、大会に出場するには周りの協力が欠かせません。今回の技能グランプリは卒業シーズンの繁忙期中の開催で出場を悩みましたが、職場の皆が背中を押してくれたから出られました。本当に感謝しています。


技術継承のパイプ役に
伊波孝さん(47) 伊波たたみ店

普段の畳製作は機械作業が主だが、大会はすべて手作業。「技」を残す意味でも、大会出場の意義は大きい

畳製作で敢闘賞

-伊波さんに聞きました
■大会はどうだったか
2回目の出場で、勝手は分かっていたつもりでしたが、今大会ではギャラリーの多さにパニックになってしまいました。

材料の寸法を測りたいのに頭が真っ白になり、その場で正座して深呼吸。周りより開始が10分ほど遅れましたが、冷静になることを優先しました。練習を積んできたので、4時間半では(制限時間は5時間)仕上げられる自信がありました。競技後、ギャラリーに「よく立て直した」と褒めていただきました。
入賞はうれしいですが、欲を言えば表彰台に立ちたかったです。


序盤はギャラリーに圧倒され、頭が真っ白になったという伊波さん。だが気持ちを落ち着け、5時間の制限時間内に課題の「へり付き板入れ畳」と「床の間畳」を完成させた


■仕事と大会の練習、両立は大変だったのではないか
普段は機械で藁の裁断から縫合まで行います。ですが技能グランプリの競技はすべて手作業。自力で藁を切り、手縫いで製作していきます。僕は手を動かすことが好きなので練習も楽しかったです。

機械で作るとはいえ、手作業もできる人、できない人では細部の仕上がりに差が出ます。改めて技を磨くことができました。

機械化が進む中だからこそ手仕事を競うことは大事。昔気質の職人は「技は見て盗め」というスタンス。ですが、手仕事を見ることは少なくなりました。このままでは技術が消えてしまうという危機感があります。昔ながらのやり方も知る僕たち世代がパイプ役になり、技術を伝えなければならないと思います。

今回一緒に技能グランプリに出た新城忍さん(中部たたみ店)、高江洲周作さん(たかえす畳店)は、2年前に僕が出場した静岡での大会を見に来ていました。そして、今大会は県内の若手畳職人が5人ほど見学に来ました。継承の意味でも、大会に出場する意義は大きいと思います。

■県内の畳業界のレベルは
僕は県畳工業組合青年部の部長をしていますが、業界の向上心は高い。今回の技能グランプリには県内から8人が出場し、うち3人が畳製作でした。組合が練習に使う材料費などを負担してくれ、ありがたかったです。

県内の畳の手縫い技術は全国に負けていない。近い将来、表彰台に立つ人が現れるでしょう。

僕は2年後も出るかもしれないし、指導者という立場の可能性もありますが、引き続き関わっていきたいです。


「技能グランプリ」とは
年齢制限がなく、技能検定の特級、1級および単一等級に合格した熟練技能士のみが出場できる全国的な大会。2年に1度開かれ、2019年3月に行われた兵庫大会で30回目。30職種で562人が参加。県内からは8人が参加した。
 


毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1733号・2019年3月22日紙面から掲載

特集・企画

タグから記事を探す

この連載の記事

この記事のキュレーター

スタッフ
週刊タイムス住宅新聞編集部

これまでに書いた記事:2395

沖縄の住宅、建築、住まいのことを発信します。

TOPへ戻る