建築
2018年6月1日更新
考えよう!沖縄の省エネ住宅[11]|給湯コスト 最大7割減
入浴をはじめ調理に洗濯など、毎日の暮らしに欠かせない「湯」。その湯を沸かすのに、太陽の光と熱を効率よく活用しているのがソーラー温水器だ。タイガー産業(株)が取り扱う太陽光熱利用型温水器「タイガーサンライトキング」は、真空管を使った熱交換方式を採用することで、従来型より熱効率を大幅にアップ。同社環境推進課主任の玉寄文治さんは「湯沸かし代が最大7割減らせ、曇りの日でも温水をつくり出すことができる」とアピールする。
設備①/タイガー産業(株)「タイガーサンライトキング」
曇りの日も「紫外線」で温水供給
給湯コスト 最大7割減
真空ガラス管で効率良く集熱
「タイガーサンライトキング」は既存の給湯機器に接続し、給湯を補助するタイプの温水器。最大の特徴は、効率よく水を温めるシステムにある。特殊金属で覆った二重構造真空ガラス管内部=図1①=で、太陽の光を熱に変換。最大で300度以上になるという熱が、ガラス管内部の触媒=②=を伝って先端のヒートチップ=③=に集められ、保温タンク内の水を温める=④。
玉寄主任は「集熱材の間に細いパイプを張り巡らせ、そこに水を循環させることで温めていた従来品に比べ、熱効率が格段にアップした」と説明する。また従来品は太陽光の赤外線のみを使用していたため、湯を作るのが晴天時に限られていたが、同製品では紫外線も活用。晴れた日だけでなく、曇りの日や冬場でも温水を作ることができるのもメリット。従来品に採用されていた細管タイプは沖縄の硬水では詰まりやすいのが難点だったが、同商品ならその心配もない。
タンクの密閉度をアップ
同社が温水器を扱うようになったのは、自社のリサイクル設備に中国・香港の神太集団国際有限公司が製造する業務用のソーラー温水器を導入したのがきっかけ。玉寄主任は「1日に使う温水約10~20トンがつくれ、年間の燃料費約150万円を節約できた」と話す。民間にも広く普及させたいと、2010年から家庭用のソーラー温水器の輸入販売も始めた。
家庭用で初期に扱っていたタイプはタンクの容量が270リットル。5~6人の入浴に対応できるが、「核家族にも対応できるように」と設計を見直し、タンクのみを国産メーカーに発注。検証とデータ収集を行い改良を重ねることで、密閉度をアップさせた。出来上がった容量150リットル(2~3人用)の国産タンクに、中国から輸入した集熱ユニットと架台を組み合わせ、オリジナル商品「タイガーサンライトキング」を完成。創立40周年をむかえることし6月を機に、本格販売を始める。
改良型はタンクが小さくなった分、設置に大型機器が不要で屋根にかかる負荷も軽減される。初期コストは設置費用まで含め50万円から。「灯油ボイラーや電気温水器、ガス給湯器など今ある給湯器に接続することで、給湯費が最大7割カットできる」。2月初旬に設置した50代夫婦と子ども1人の3人家族世帯は、「2~4月の3カ月で灯油の使用量が3割ほど減り、約6500円の節約につながった」と話す。
玉寄主任は「初期コストはかかるが、お湯をつくるランニングコストはゼロ。業務用は既に県内の食品工場やホテルなどに導入されており、同規模ホテルに比べて年間1次エネルギーの3割削減を実現した。災害対策や、建築物省エネ法に対応する高効率設備となるよう、普及を目指したい」と語った。
タンクを改良したオリジナル商品「タイガーサンライトキング」一般住宅用TSH-150。写真はことし2月に設置したもので、6月より本格的に販売を始める。玉寄さんは「形状や装備品を見直すなど、沖縄での使用環境に合うよう工夫。日本飛行機に風洞試験を委託し、風速40m/sの強風にも1時間にわたり耐えて、損傷と変形が生じないことを確認した」と話す。(タイガー産業(株)提供)
図1 熱交換のメカニズム
①のガラス管内部で太陽の赤外線と紫外線を熱に交換。その熱が③のヒートチップに集められ、タンク内の水を温める。タンクはステンレス・保温材・特殊塗装の3重構造で、直圧をかけて保温効果を高めている。(タイガー産業(株)提供)
【太陽熱温水器設置への補助金】
那覇市
設置費用の10分の1、または上限5万円を補助。応募の受け付けは8~9月。応募が予算の範囲を超えた場合は抽選。詳細は環境部環境政策課地球温暖化対策推進グループへ問い合わせ
098-951-3392
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1691号・2018年6月1日紙面から掲載