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2019年1月18日更新
退職後見据えて貯蓄・運用|岡田流!現代人のマネー術[10]
文・岡田有里(ファイナンシャルプランナー)
住宅ローンで困らないために
「250円以上のトマトは買わない」と日常の予算ルールに厳しい人も、住宅購入の予算オーバーを許す傾向にあるのはなぜでしょうか。今回は住宅ローン返済に苦しまず豊かな人生を送る人が増えるよう、住宅ローンを組む際の基本的な考え方をご紹介します。
「返せる金額」を知る
住宅購入の予算オーバーを防ぐ唯一の方法は、ライフプランを立てて自分が返せる金額を知ることです。金融機関で「○万円までOKです」と言われる金額は「借りられる金額」です。しかし、予算オーバーを防ぐには、自分が無理なく「返せる金額」を知る必要があります。そのためにはまずライフプランニングで生涯のお金の流れが分かるキャッシュフロー表を作り、未来の暮らしはゆとりがあるか、教育費は払えるか、老後用の貯金が可能かどうかを分析します。もし、途中で貯蓄残高が「マイナス」になる可能性がある場合は、予算オーバーだと判断するわけです。
購入前の二つの約束
すてきな家を見ると欲しくなり、その「欲」を止めるのは大変です。すると、繰り上げ返済すれば大丈夫かな? などと自分に言い訳をして、予算オーバーのローン契約につながるお決まりのパターンへ流れてしまいます。
そうならないためにも①ライフプランを立てる前に物件を見に行かない②「返せる金額」を守る―の、二つの約束を守りましょう。
老後のローン対策
2017年度の調査によると、分譲マンションを初めて購入した人の平均年齢が39歳を超えました。
表①下のように、仮に39歳で35年の住宅ローンを組むと、完済は74歳です。65歳で定年退職したとしても、年金生活でその後9年間もローンを返済し続けるのが厳しいことは明白です。だからと言って39歳でマイホームを買えないわけでは無いですよ。老後のローン対策をきちんと取れば、乗り切れる可能性はあるのです。
表① 初めて住宅を購入した人の平均年齢
※2017年度住宅市場動向調査より
表② 契約年齢別35年ローンの老後対策
退職以降(65歳と仮定)にローンが残る場合、次の2ステップでできる資金対策を実行します。
①65歳時のローン残高を計算する。
②ローン残高÷(65-現在の年齢)÷12で計算した金額を65歳まで毎月積み立てる。こうすれば、ローン残高相当額の現金貯金がたまるので、老後はローン返済の心配から解放されますね。表②上を参考にご自身のローンをチェックしてください。
さらに有効な対策方法をご紹介しましょう。もし完済まで20年以上ある場合は、長期積み立てで運用すると効果的です。例えば、平均利回り5%の運用で40歳から月額2万300円の積み立てをすると、65歳で1085万円になる試算なので、表②の40歳の対策費3万6000円/月より1万5700円少なく済む可能性があります。
2019年は消費税増税を前に住宅の駆け込み需要が見込まれますが、目先の損得に惑わされずに自分が「返せる金額」を守って住宅購入を決めれば、ローンは怖くなくなるでしょう。
執筆者
岡田有里(ファイナンシャルプランナー)
おかだ・ゆり/ファイナンシャルアライアンス(株)沖縄支店所属。外資系企業に就職し海外勤務を経験し、2000年に沖縄へ。「私の未来に安心を!」をテーマに、女性のマネー知識の底上げをライフワークに活動。
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞「岡田流!現代人のマネー術」
第1724号・2019年1月18日紙面から掲載