お住まい拝見
2017年9月15日更新
見せる・隠す 柔軟に|シンケンハウス(株)
[お住まい拝見・[宮古島編②]開放的でもプライバシー守る]人を招くことが多いSさん宅。家の中心は天井高が最大4.5メートルあるLDKで、和室やテラスと一体となる。開放的ながら収納がたっぷりあり、夫人は「見せたくないものは隠せて便利」と話す。
宮古島の住宅街にあるSさん宅。広々としたLDKは、隣接する和室やウッドデッキの敷かれたテラスと一体的に使える。4.5メートルある天井高と相まって開放的な印象
家族も客も動きやすい
Sさん宅
鉄骨造/自由設計/家族5人
宮古島の住宅地にあるSさん宅。親戚が集まったり、仲間とバーベキューをしたり、夫人がセミナーを開くこともある。「開放的でも、見せたくない部分はしっかり隠せる家」を希望した。
その要望は玄関から反映されている。来客は玄関からホールへ入るが、家族はシューズクロークを通って出入り。収納内で靴を着脱することで、玄関はいつもスッキリ。
メインであるLDKは、白を基調とした爽やかな空間。リビング・ダイニングは天井高が4.5メートルもあり、高窓から光が注ぐ。「夜になると、ここから月が見える。思わずボーっと眺めてしまう」と夫人。高窓は明かりと癒やしをもたらす。
20.5畳のLDKと、7.5畳の和室、21畳のテラスまで、襖(ふすま)や窓を開け放てば大きなワンルームになる。対面式のアイランドキッチンは、その大空間のすみまで目が届く上、人が出入りしやすい。「お客さんも自然と手伝ってくれる」。
キッチンの脇には2畳のパントリーがある。来客時には表に出ている食品をサッと収納。さらに和室も、「ごちゃごちゃした物を避難させて襖を閉めちゃう。隠せる場所がたくさんあって助かっている」。
ゲストルームやゲスト専用のトイレ・シャワーは玄関のそばにあり、家族との動線がきっちり分かれている。
LDK側から和室を見る。高窓からの光が注ぎ、とても明るい。和室は、襖を開ければLDKと一体になり、閉じれば寝室や子ども室などプライベート空間を隠す。
夫人は「普段は襖を開けっ放しにしているけど、お客さんが来たときは閉めています」と語る。襖をしまう戸袋は壁と一体となっているから、見た目もすっきり
家事もしやすく
以前はアパートに住んでいた。二部屋をつなげて住んでいたため「動線が悪かった」。新築することを決め、女性建築士がいる建設会社に依頼した。「家事のしやすい家を造ってくれるはず、と思ってお願いした」。地震に強い鉄骨造を得意とする会社だったことも決め手となった。
要望通り、「家事のしやすさは抜群。洗面室と洗濯干し場が北西側、服をしまう子ども室や寝室が北東側にまとまっているから時短になっている」。
家族にも来客にも優しい住まい。大空間と収納のバランスが、皆の笑顔をかなえていた。
玄関ホール。テラス側にはめ込み式の窓があり、明るさと広がりを感じさせる
ここがポイント
和室は南北に襖
開閉で公私分け
設計を手掛けたシンケンハウス(株)の建築士・新里安子さんは、「家族や来客の顔が見えながらも、プライバシーを守る空間造り」を念頭に置いた。
カギとなったのは和室。LDKのある南側の「公空間」と、子ども室や寝室がある北側の「私空間」の間に和室を配置。南北両側に襖を設けて、公私どちらからも切り離せるようにした。
日常生活では両側を開け放ち、人や風の通り道としている。夫人がセミナーを開くときはLDKに面する南側の襖を閉じて私空間を隠す。大人数が集まるときは子ども室へ面する北側の襖を閉じ、和室もLDKの延長として使う。
「襖をしまう戸袋は、壁と一体化させた。見た目がスッキリするだけでなく、掃除もしやすい」と家事動線にも配慮した。
テラスを居室で取り囲んだ間取りもポイントだ。「LDKはもちろん、玄関や寝室にも光と風をもたらす」。テラスは接道側がルーバーで覆われているので、外からの視線を気にせず開け放てる。ルーバーは目隠しだけでなく、台風時に飛来物から窓を守る役目も果たしている。
厳しい暑さ対策としては、「高機能の断熱材を用いた。さらに床下換気口から冷気を取り入れ、天井近くの換気口より熱気や湿気を逃がすシステムで快適な住まいを実現した」と話した。
外観。中央のルーバーの向こうにはテラスがある。駐車場や庭も緩衝帯となり、「窓を開け放っていても道路の騒音などはまったく感じない」と夫人
対面式のアイランドキッチン。和室やテラスにも目が届く。奥に見えるのがパントリー(写真提供/シンケンハウス)
テラスは一面、ウッドデッキが敷かれている。ここでバーベキューをしたり、ビアガーデンを楽しんだりしている。レンガ造りのシンクも設置されているから、片付けなども楽。写真奥の扉は、駐車場とつながっている。玄関を通らず、直接テラスに出入りすることもできる
[DATA]
家族構成 :夫婦、子ども3人
敷地面積 :576.91平方メートル(約175坪)
1階床面積:131.5平方メートル(約40坪)
建ぺい率 :25.9%(許容50%)
容 積 率:24%(許容100%)
用途地域 :第一種低層住居専用地域
躯体構造 :鉄骨造
設 計 :シンケンハウス(株) 新里安子
施 工 :シンケンハウス(株)
電 気 :(有)COT協進
水 道 :(株)朝日建設工業
[問い合わせ]
シンケンハウス(株)
098-973-6302
www.sinkenhouse.com
写真/比嘉正実(寿写真館) 編集/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1654号・2017年9月15日紙面から掲載
この記事のキュレーター
- スタッフ
- 東江菜穂
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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。