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2017年2月3日更新

防災講演会「熊本地震の教訓から学ぶ」|沖縄での地震防災につなげる

2016年は、震度6弱以上の地震が日本各地で発生した。特に4月に発生した熊本地震は震度7を観測し、大きな被害が出た。沖縄でも同様、あるいはそれ以上の地震はいつ起きてもおかしくない。沖縄気象台は1月25日、防災講演会「熊本地震の教訓から学ぶ」を開催し県民に注意を促した。登壇した琉球大学工学部の藍壇オメル教授は沖縄の建物やインフラ構造物の耐震性の危うさを指摘。防災士の稲垣暁氏は「形だけの避難訓練」に警鐘を鳴らした。 

人ごとではない 日々の備え重要

「沖縄は、活断層の検討が不十分。内陸型地震の危険も考えるべきだ」

藍壇オメル(あいだん・おめる) 琉球大学工学部 環境建設工学科教授

藍壇教授は、熊本地震の後、阿蘇地域などの被害状況を調査した。
そこで内陸型(直下型)地震がもたらした大きな被害を目の当たりにした。震源の深さが11キロと浅かったことから、益城町では震度7を観測。猛烈な揺れに襲われたとあり、「建物の損壊はもちろん、地表には大きな横ずれが見られ、地盤の液状化や沈下、斜面の崩壊もあった」と説明した藍壇教授。
熊本地震を引き起こしたのは二つの活断層。藍壇教授は、「沖縄にも活断層はあるが、周りが海で陸地が少ないため、国による検証が進んでいない」と指摘する。
そのため、「内陸型地震におけるリスクがあまり考えられていない」とし、早急な検証を訴えた。

津波石に見る危険
熊本地震では、1階が駐車場になっているピロティ構造の建造物の被害が大きかった。また、橋脚や鉄道の損壊も多かったという。
「沖縄はピロティタイプの建物が多く、耐震性の検証や補強の実施が必要。橋やモノレールなどのインフラ構造の耐震性の検証も早急にすべきだ」と話す。
宮古島や石垣島を始め県内各地に存在する、過去の大津波で打ち上げられた「津波石」についても触れ「これらの石の大きさは世界最大級。中でも下地島にある高さ9㍍もの津波石を陸上まで飛ばすには、マグニチュード9以上の地震があったということ」と説明。
恐ろしい津波の痕跡から「沖縄を、巨大地震や巨大津波が襲う恐れは決して低くない。耐震の検討や対策が必要だ」と語った。

 まとめ 
●県内の活断層の検証を早急にすべき
●県内でも多い、ピロティタイプの建造物や インフラ構造物の耐震性の検証が必要
●世界最大級の津波石が存在している沖縄で は、巨大津波や地震の恐れは大きい

 


「形だけの避難訓練や防災計画はやめる。現実を見据えた活動を」

稲垣暁(いながき・さとる) なは市民活動支援センター専門相談員、社会福祉士、防災士

東日本大震災や熊本地震などの被災地へ足を運び、聞き取り調査などをする稲垣暁氏は、避難所の厳しい状況を見てきた。
「熊本地震では、高齢者や障がい者の行き場が少なかった」と語る。行政が指定した福祉避難所はあったが「周知されておらず、ほとんど機能していない場所もあった」と指摘する。
地域の自主防災組織による「組織的な」活動の形跡もなかったという。
避難訓練や、行政の防災計画はもちろん大事だが、「現実に合っていないものもある。防災の常識を疑うべきだ」と話す。
避難訓練において、スムーズにことが進むのは「ある意味、失敗」という。避難できなかった事情、逃げようとしない人がいてこそ、現実。「災害時にどんな問題が起こりうるか、洗い出しをするための訓練だ」と力を込める。

経験、人材生かす
岩手県大槌町では、東日本大震災の犠牲を踏まえ、逃げたがらない高齢者を説得する訓練もしている。「自分の身も守るために、リミットは15分」。要介護者を玄関まで連れ出し、ほかの避難者に手伝ってもらいながら逃げるなど、具体的な訓練を行っている。
浦添市内間では、児童センターに通う中学生が主体となり避難訓練を行った。中学生たちは、訓練実施のチラシを地域の全戸に配布しながら、移動困難者がいないか、さりげなくチェックした。それにより、地域の大人や行政が知らない要介護者を発見できたという。
「防災の常識をなぞるのではなく、自分たちの地域に合った方法を考えることが大切」と話した。

 まとめ 
●行政も自主防災も「形だけ」はやめる。現 実のニーズに合わせた活動を
●自主防災組織が機能しないときのサブシス テムを地域で考えておく



「沖縄は、地震が少ないと思っていたら大間違い」

神谷晃(かみや・あきら)/沖縄気象台地震火山課長

沖縄気象台の地震火山課長、神谷晃氏は「沖縄は地震が少ない、と思っていたら大間違い」と注意を促す。2016年の1年間に沖縄県で震度1以上を観測した地震は98回あったそうだ。「47都道府県で21番目の多さ。地震が少ないわけでは無い」と力を込める。
1771年の明和の大津波や、2010年に沖縄本島近海で発生した震度5相当の地震を挙げて、「過去には人的被害を伴う地震や巨大な津波も発生している。これは、これから先起きてもおかしくないということ」と訴える。日ごろの備えとして家具の固定や、避難ルートの確認・確保、緊急地震速報(下記※参照)の利用などを訴えた。

※緊急地震速報とは
最大震度5弱以上を予想した時に、震度4以上の恐れがある地域に対して気象庁が発表する警報。地震の数秒~数十秒前にテレビやラジオ、携帯電話やスマホ、防災行政無線で知らせる。沖縄気象台の神谷課長は「非常に短い時間ではあるが、揺れが始まるまでの間に安全確保してほしい」と呼び掛けた。


関心高いが意識まだ低く

1月25日に開かれた講演会には、多くの県民が集まり、活断層に関してや避難の仕方など質問も多く上がった。防災に関する関心は高まっているが、実際の行動に移されているかと言えばそうでもない、というデータが出ている。
県が昨年公表した「第9回県民意識調査報告書」において、「沖縄県で近い将来、大きな地震・津波が発生すると思う」と答えた人は58.8%に上ったが、「地震の揺れに備えて、家具などの固定をしている」人は10.3%、「地域の防災訓練に積極的に参加している」と答えた人は7%だった。稲垣氏は「防災意識の低さは、脱出・避難の妨げになる」と声高に訴えた。
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1622号・2017年2月3日紙面から掲載
 

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