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2017年1月6日更新

10度の傾き 独特の空間|ライトの有機的建築に学ぶ[9]

ニューヨークとフロリダの間に位置するサウスカロライナ州の広大な敷地の中に、ライトの設計したオールドブラス農場があります。農場主の家や労働者のためのコテージ、馬小屋や納屋など農家の生活を網羅した建築群は、ウィスコンシンのライトの自邸、タリアセンを彷彿とさせます。

農家の生活網羅した建築群「オールドブラス農場」

10度の傾き 独特の空間


10度の傾きで取り付けられた扉は、外側に少し跳ね上がるような開き方をする/写真
 

木の格子や板で装飾

オールドブラス農場にある建物はライト後期のユーソニアンスタイルですが、通常は横向きに貼られる壁の板材は縦に、しかも10度の傾きを持って貼られています。
それに合わせて外部に面した扉も10度に傾けて取り付けられ、ライトの建築の中でもここでしか見られない独特の空間が作り出されています。
扉や壁の上部には横に細長い、木の板をくりぬいてデザインされた和室の欄間のような窓があります。
こちらは壁とは逆の10度の角度に取り付けられていて、板貼りの天井に美しい陰影を映し出しています。
ステンドグラスを使わずに木の格子や加工した板で装飾された窓は、日本から帰国して以降のライトの手法で、自由学園を設計した時の経験が活かされています。
 

自由学園とのつながりも

オールドブラス農場は現在ではハリウッドの映画プロデューサー、ジョエル・シルバー氏の所有となっています。
ライトのファンとしても知られる彼は、カリフォルニアにあるコンクリートブロック住宅のひとつであるストーラー邸を買い取って修復したり、計画だけが残されていたオールドブラスのボートハウスを実際に建築するなど、ライトの建物を守り伝えていくことに熱心に取り組んでいます。
オールドブラスのベッドルームにはなぜか、自由学園の食堂の小さな椅子がちょこんと置かれていて、シルバー氏のライトへの傾倒ぶりがほほ笑ましく伺えるとともに、海をまたいだ洋の東西が建築を通じてつながっていることを実感できるのです。
 


板を加工した窓から入る外光がリビングの天井を照らし、美しい陰影で彩る/写真


軒先の雨どいは、この地域の木から垂れ下がるエアプランツ「スパニッシュモス」を模している/写真
 




[執筆]遠藤現(建築家)
えんどう・げん/1966年、東京生まれ。インテリアセンタースクールを卒業後、木村俊介建築設計事務所で実務経験を積み独立。2002年に遠藤現建築創作所を開設し現在に至る。

『週刊タイムス住宅新聞』ライトの有機的建築に学ぶ<9>
第1618号 2017年1月6日掲載

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