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2016年9月23日更新
知っておきたい!「建築物省エネ法」|文・中島親寛(沖縄県建築士会理事)
1979年の石油危機を機に、その翌年「住宅の省エネルギー基準」が制定。改正ごとに基準が強化され、本年度からは「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」(以下、建築物省エネ法)が運用されている。同法によると、4年後の2020年までにすべての新築住宅について基準適合の義務化が定められている。義務化の背景や沖縄で住宅を建てるにあたってのポイント、デザインやコストへの影響について、県建築士会の中島親寛さんに解説してもらった。
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新築の省エネ基準 2020年には引き上げ
図:建築・設備による住宅の省エネ化の手法(『住宅省エネルギー技術 施工技術者講習テキスト基本編 平成28年省エネルギー基準対応』より)
■どうして義務化なの?
建築部門で消費エネルギー増加
私たちは、生活スタイルの向上と共に多くのエネルギーを消費してきました。第一次石油危機のあった1973年度と2013年度のエネルギー消費を部門別に比較すると、事務所ビルや商業施設などの業務部門で2.5倍、住宅などの家庭部門で2倍と大きく増加しています。
また2015年にパリで開かれた国際会議(COP21)では、日本の温室効果ガス削減目標として2030年度に2013年度比26%の削減、CO2の排出量では家庭部門で約39%の削減目標を決定。これらの状況から、目標達成に向けた具体的な施策が必要になるわけです。
■県内で適合するためのポイントは?
侵入熱減らし設備も省エネ型に
住宅では建物と設備について省エネを図る必要があり、これらを「外皮性能の基準」と「一次エネルギー消費量の基準」としてクリアすることが求められます。
外皮とは建物が外気と接する部分を指し、沖縄県で基準に適合するためには、屋根・外壁・ドア・窓から「侵入する日射熱の合計」を基準値以下にする必要があります。従来の屋根の断熱化に加えて、外壁、窓のガラス仕様、建物の向きや庇の寸法などにより、おのおのの住宅で省エネ性能が異なるため、設計者によるコントロールが必要になります。
また、「一次エネルギー消費量の基準」では建物に導入される設備機器について基準値をクリアできるよう設計段階から選ぶ必要があります。冷房・換気・照明・給湯・家電等のエネルギー消費に対して、太陽光発電などの創り出すエネルギーを差し引いた一次エネルギー消費量が、基準以下でなければなりません。設計段階で確定していない設備機器についても考慮する必要があり、本県の住宅でエネルギー消費の多い給湯、照明、冷房などの計画にも留意が必要です。半面、これらの消費エネルギーを減らすための建築計画での工夫も必要です。
つまり、デザインや建築的工夫で外から侵入する日射熱を減らしつつ消費エネルギーも減らす工夫をし、さらに設計段階から省エネ性能の高い設備機器を選ぶ必要があるわけです。
■コストへの影響はある?
申請、材料や施工法吟味に手間
現在でも300㎡以上の住宅等では届け出の義務がありますが、建築物省エネ法により、2017年4月から300㎡以上の住宅での新築・増改築では届け出の義務や指導内容が強化。これにより、設計段階での検討や届け出申請、施工段階での材料、造り方の検討、施工手間などからコストアップにつながります。これらは、法律の規制措置のための費用であることから、施主側への十分な説明により、理解していただく必要があります。
■対応する設計者はどう探す?
実務者講習会の受講を参考に
建築物省エネ法での小規模住宅等に関する法の施行、改正を含めた建築実務者向けの講習会が全国で開催されており、本県では設計・施工の実務者が累計で約700人受講しています。講習会は、全国版と沖縄に特化した沖縄版テキストを使い実務者向けに開催。また、ことしのテキストは「平成28年省エネルギー基準対応版」となっており、実務上では既に受講した方々にも新しいテキストに対応することが求められます。
講習会の受講修了者は、受講修了証やホームページにより確認することが可能。設計者選びの参考にお役立てください。
1979年の石油危機を機に、その翌年「住宅の省エネルギー基準」が制定。改正ごとに基準が強化され、本年度からは「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」(以下、建築物省エネ法)が運用されている。同法によると、4年後の2020年までにすべての新築住宅について基準適合の義務化が定められている。義務化の背景や沖縄で住宅を建てるにあたってのポイント、デザインやコストへの影響について、県建築士会の中島親寛さんに解説してもらった。
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1603号・2016年9月23日紙面から掲載
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