特集・企画
2020年1月31日更新
もっと野菜を食べて|ハルサー×野菜ソムリエ[4]
文・奥間美佐江
春先は収穫の季節。野菜を育てるところから食べるところまで楽しむ、野菜ソムリエの奥間美佐江さんは「病気予防や体調を整えるためにも、もっと野菜を食べてほしい。自分で育てて収穫できれば、ぜいたくな食べ方も楽しめます」と呼び掛ける。
キヌサヤを収穫する奥間さん
食べ頃のキヌサヤの実
収穫時は、実の上にある節の部分(赤丸)から切り取る
収穫
今、畑は一年で一番にぎやかな季節です。畑に向かう車の中で、これからする作業を考え、着いたらまず畑の中を1周します。全体の様子を見るのはとてもワクワクする時間で、おいしくなっているのか、どんな料理にするか考えながら歩きます。
種まきから試行錯誤しながら世話をして、うまくいけば収穫して食べることができ、ゆるやかな自給自足を楽しめるのが家庭菜園の良さだと思います。
秋に種をまいた野菜は1月頃から収穫期を迎え、食卓はとても豊かになります。野菜を消費するために鍋料理や常備菜作りが増え、冷蔵庫もいっぱいになります。
厚生労働省は1日に食べてほしい野菜の量を350グラムと定めていますが、沖縄県での摂取量は270グラムほど。あと一皿、野菜を多く食べる工夫が必要です。
自分で育てた野菜は手間をかけている分、大事に食べようという気持ちになるし、たくさん採れた時には、ぜいたくな食べ方を楽しむこともできます。
二十日ネギやホウレンソウ、バジルなど、プランターで簡単に育てられる野菜をベランダで栽培しても良いです。芋の端っこを台所に置いておき、葉が伸びてきたら、みそ汁の具として使うこともできます。体調を整え、病気予防のためにも野菜をもっと食べてほしいと思います。
春先は根菜、果菜、葉菜などいろいろな野菜が収穫でき、食卓が豊かになる
果汁弾けるトウモロコシ
春先の一番の楽しみはトウモロコシです。自分で育てたものを初めて食べた時、その甘さにとても驚きました。採れたてを生で食べると甘い果汁が弾けます。
トウモロコシは先人たちが「湯を沸かしてから採りに行け」と言っていたほど鮮度によって味が変わる食材です。現在流通している主な品種は、でんぷん質が少なく糖度が高いスイートコーンですが、時間がたつほどに糖分が減り、食味も落ちるので、自宅に持ち帰ったらすぐに加熱しておいしさを逃がさないようにしています。
一粒に一本付いているひげは、絹糸と呼ばれるめしべです。そのため、この「ひげ」が大好物なタイワンキドクガの幼虫を見つけたら、すぐに捕殺しなければなりません。受粉前にひげを全部食べられると、実が入らなくなってしまいます。
背丈が1.5メートルほどになり倒れやすいので、育てる際は、沖縄の方言でニングヮチカジマーイ(二月風回り)と呼ばれる強風を伴う悪天候で倒れないように、株元に土寄せをします。
害虫防除や水やりの手間はかかりますが、それだけに収穫した時の喜びも大きくなります。沖縄では早ければ1月から出回り、5月頃まで収穫することができます。
育てるポイントとおすすめレシピ
キヌサヤ
βカロテン、ビタミンB1・B2、グルタミン酸を含み、栄養価が高い。ビタミンCはミニトマトの2倍、カルシウムは3倍含まれる。食味を良くするために、必ずスジとヘタを取って調理する。炒め物、煮物の彩り、天ぷら、みそ汁の具など、さまざまな料理に使える。収穫が遅れた時は、枝豆の要領で塩ゆでし、中の豆だけを食べてもおいしい。
ツルが伸びてくるので、ネットに誘引する。サヤが5センチほどになったら収穫
収穫が遅れて太った実。皮つきだとスジっぽいので、中の豆だけを食べる
キヌサヤとミニトマトの卵炒め。キヌサヤはスジを取ってミニトマトと一緒にさっと炒め、卵を溶き入れる。チーズや塩コショウで味付け
ヤマイモ
でんぷん、糖質を分解する酵素を含み、消化に良い。漢方薬では山の薬と書いて「山薬」とも呼ばれ、昔から滋養強壮のために食べられてきた。生ですりおろして食べたり、お好み焼きや天ぷらにしてもおいしい。クリームシチューなど煮物で使う時は、煮崩れしないように他の食材に火が通った後に入れる。
大きく、深く成長し、とても折れやすい。株元から少し離れた所から掘り進めて収穫する。
ヤマイモとジャガイモのハッシュドポテト風。ヤマイモ、ジャガイモの千切りと塩を混ぜ合わせ、フライパンで焼く。ヤマイモが入っているので、つなぎの小麦粉は不要
トウモロコシ
小麦と並ぶ世界の三大穀物で、主成分は炭水化物。食物繊維を多く含み、ビタミンE、ビタミンB類、亜鉛、カリウムを含む。アミノ酸も含み、健脳効果や疲労回復も期待されている。多くの国で主食として食べられており、近年はグルテンフリーの食材としても注目されている。ゆでるよりは蒸した方が、水溶性の栄養を損なわない。トウモロコシご飯にしてもおいしい。
上部の実を残して、下部に出る雌穂は取り除けば、ヤングコーンとして食べられる
ひげが茶色くなったら、皮の上から実の入り具合を触って確認し収穫する
レタス類
レタスは、古代エジプトのお墓に描かれており、4000年以上前から食べられている野菜。赤血球を作り出すことで貧血を防ぐ葉酸を含み、食物繊維も取れる。冬はスープや炒め物など体を冷やさないように加熱して食べるのがおすすめ。
サニーレタス。湿度が高くなると病気になりやすいので、雨が続いた時には、多めに間引いて株の間隔を広くする
この時季の手入れ(収穫のタイミングなど)
ニンジン
大きく成長したものから収穫。根が土から出ていると光合成で緑化するので土寄せをする。
ミニトマト
ハモグリバエが付いた時は、葉を取り除いて防除する。取り除いた葉はビニール袋に密封して畑に広がらないようにする。
たくさん葉を切り取った時は、花を間引きして株が疲れないようにする。
紫ジャガイモのシャドークイーン
店頭では販売されていない品種を育てて、味比べをするのも家庭菜園の楽しみ。ジャガイモは葉が枯れてきたら、晴れた日に収穫。風通しが良く、光の当たらない場所で保管する。
タマネギ
葉が枯れて折れ曲がったら収穫時期。風通しの良い日陰につるして保管。新タマネギは辛みが少ないので、ドレッシングや焼き肉のタレにしてもおいしい。特有の匂いと辛さは硫化アリルで、血液をサラサラにする効果と、ビタミンB1の吸収を助ける。
ホウレンソウ
根が深く長いので、土の中に浅めに刃を入れて根を切る。冷凍保存する時は、さっとゆでた後に食べやすい大きさにカットし、重ならないようにバットに並べて冷凍すると、バラバラに凍るので使いやすくなる。
おくま・みさえ/野菜ソムリエプロ、沖縄野菜プロジェクト協同組合理事
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1778号・2020年1月31日紙面から掲載