2017年7月21日
[講演会]日本建築構造技術者協会沖縄地区会 桝田氏「構造はデザインの幅を広げる」
(一社)日本建築構造技術者協会九州支部沖縄地区会は2017年7月7日、構造設計家で(有)桃李舎の桝田洋子氏(写真)による講演会を琉球大学で開いた。自身の経験やこれまで手掛けた作品について解説したほか、学生たちとのパネルディスカッション(写真下)では「構造設計は、アイデアを広げてくれることもある」と話した。建築士や建築を学ぶ学生など、約160人が参加した。
講演では、構造設計を目指したきっかけや都市計画の道にも進んだこと、阪神大震災で「大事なのは命を守る建物であるべき」と気付いたことなどを話した。
2015年に日本構造デザイン賞を受賞した「行橋の住宅」では、「梁は長方形で柱から柱に渡してラーメン構造にするものだけではなく、一定の距離を加重を支えながら飛ばすもの」と柔軟に考え、U字型やJ字型、L字型の梁にして、特徴的なデザインを後押しした。
桝田氏は「いろいろな建築を見ると頭の引き出しに無意識に蓄積される。構造計画をする際の力学的な感性や直感は、外から舞い降りてくるものでなく、蓄積の編集作業なのでトレーニングすれば誰でも身に付く」と学生らにエールを送った。
学生とのパネルディスカッションでは、「普段、構造のことは考えない」という学生に対し、自身も同じだったことを話すとともに、「構造設計はデザインのアイデアを縛りつけるのではなく、広げてくれることもある」とアドバイスした。
学生からの質問にも、「資金や材料など、厳しい条件であれば気持ちが燃える」「男性が多い業界だが、女性でも実力があれば評価される」などと応えた。
また、学生らは建築に関することを「過去」「現在」「未来」に分けて、自らの考えを発表。琉球大学工学部3年の米須小春子さんは「伝統的な古民家やコンクリート住宅、外人住宅など沖縄らしい要素を取り入れた、新たな形態の沖縄の住宅文化を生み出したい」と話した。
週刊タイムス住宅新聞 第1646号(2017年7月21日発行)