2024年1月26日
[情報]県が建築セミナー開催 建築家3人講演|街をよくする職能意識で活動を

左から講演する根路銘氏、漢那氏、ディスカッションする松田氏と吉村氏
県土木建築部は昨年12月14日(木)、アイム・ユニバースてだこホールで建築セミナーを開催した。県内外で活躍する建築士3人がそれぞれのテーマで講演した。
建築家として活動する傍ら、東京理科大学博士課程に在籍する根路銘安史氏は「内在塩分を含む建築物の維持保全に関する研究」について報告した。調査から、鉄筋コンクリート造の建物が劣化する要因は「水、塩分、酸素」と述べ、水が内部に浸透すると鉄筋が腐食し、塩分や酸素がさびやすい環境をつくる、と劣化の仕組みを説明した。「水を侵入させないことが何よりも大切」。新築の建築物では密度の高いコンクリートを使ったり、既存の建築物では表面含浸材などで補修したりすることで、水の浸入を防ぐことにつながるとした。根路銘氏は「建築業の仕事は建物の耐久性をあげたり、街の景観などをつくったりすること。経済的にも文化的にも街をよくするという職能の意識を持って活動してほしい」と訴えた。
建築家の漢那潤氏は「沖縄における新たな木造住宅の考え方」と題し、講演。全国展開するハウスメーカーの参入に伴い、地域性を無視した木造住宅が増えていることに危機感を示した。「資本や技術がこのまま流入すると、伝統的な住宅の造り方などが失われて、県内の建築業界が衰退していく。景観も損ない、基幹産業である観光業にも悪影響を与えて悪循環に陥る恐れがある」と指摘した。また、古民家を参考に、自身が県内で初めて手がけた木造建築「新民家」を紹介。古民家は建築工程が最小限に抑えられシンプルでありながら、厳しい環境でも居住性を高める造りと説明。「経済的にも環境的にも負担が少なく、持続可能な社会のために勉強になる要素が多い」と強調した。
早稲田大学教授で建築家の吉村靖孝氏は自身の研究テーマ「半動産建築」について説明した。半動産建築とは吉村氏が不動産と車など動産の中間に位置づけ、建築の新たな可能性として提案しているもの。海運用コンテナを仮設住宅などに活用した事例を紹介。低コストな半動産建築を実用化することで、「住宅ローンの返済が生活を苦しめている問題の解決などにつなげたい」と話した。その後、建築士の松田まり子氏とのディカッションも行われた。