沖縄建築賞
2015年5月29日更新
第1回沖縄建築賞|正賞に畠山氏・石川氏
第1回沖縄建築賞(主催・同実行委員会)の入賞作品がこのほど決まった。応募総数47件の中から、住宅建築部門は畠山武史氏(40)、一般建築部門は石川保氏(38)の作品が正賞に輝いた。入賞作品7点を紹介する。
第1回沖縄建築賞 入賞作品決まる
第1回沖縄建築賞には47件が応募(住宅建築部門26件、一般建築部門21件)。5月1日の書類審査で10件に絞り、同月19~21日に現地審査を行った。21日の最終審査で、審査委員長の古市徹雄氏を含む審査委員7人が議論を重ね、正賞に住宅部門は畠山氏、一般部門は石川氏の作品を選出した。住宅・一般両部門から正賞に次ぐ作品として「タイムス住宅新聞社賞」には、大城貢氏(54)の作品が選ばれた。40歳以下の若手建築士が対象の「新人賞」は該当者なし。「審査委員特別賞」は國場幸房氏(75)の作品を選出した。表彰式は6月8日(月)午後2時から、那覇市のタイムスギャラリーで開かれる。
正賞(2点)
一般建築部門 SOLA 沖縄保健医療工学院 【宜野湾市】 石川保(38)
箱重ね外部空間つくる
医療系専修学校の5階建て校舎。「生徒が毎日通いたくなる学校」「教科の変更にも対応できる教室」という施主の要望を踏まえ、各教室をボックス型にし、平面的かつ立体的にスペースができるよう配置。教室の間を廊下や階段のブリッジでつなげている。
教室間のスペースは外部空間になっていて、いすやテーブルを置いておしゃべりしたり、弁当を食べたりと、生徒たちが思い思いに過ごせる。
審査では、「縦横につながる大胆な外部空間が開放感を生み、生徒の居場所をつくる提案」が評価された。倉庫や立体駐車場に囲まれた立地で、複数のボックスを組み合わせてモダンに仕上げることで、若者が校舎内に入りやすく楽しめる造りもポイントになった。
施主や、生徒のおかげで受賞できた。沖縄の温暖な気候だからこそできる開放的な空間を、これからも提案したい。(かみもり設計)
住宅建築部門 海をのぞむ家 【うるま市】 畠山武史(40)
大開口部で海を眺める
同市の東側、太平洋を望む高台に建つ職住一体型の平屋建て住宅。東側の開口部はできる限り大きく取り、眺めを取り込めるよう計画した。特にLDKは、大きな開口部を全開できる木製の大型引き込み戸を採用。室内と屋外が一つに感じられるよう工夫されている。
平面計画では、住宅部分の公私の空間、店舗をそれぞれ直方体の空間に収めつつ、敷地の形に沿うように一つ一つ斜めにずらして配置されている。室内外の壁や天井はコンクリート打ち放しなどで簡素に仕上げ、空間が引き立つよう配慮されている。
審査では、「室内と景色の一体感、風の抜けやすさ」が評価された。変形地を有効に使い、各空間の機能を効果的に分けた点も関心を集めた。
形や材料にとらわれず、自分なりに沖縄の気候風土を考え設計した。沖縄らしい建築を模索したい。周囲の方々に感謝。(クレールアーキラボ)
タイムス住宅新聞社賞
一般 Vernacular create Apartment 【沖縄市】 大城貢(54)
緑地帯との一体化 意識
沖縄市中心部にある地上3階建ての集合住宅兼オフィス。敷地の北側にある緑地帯と一体になるよう設計されている。
平面計画では、敷地の角度に沿って、建物を斜めに配置することで、緑地帯とつながる陰や風を生むよう工夫されている。
審査では、緑を多く取り入れた点や、建物を斜めに配置することで、間口の狭い敷地を有効利用した点が評価された。スギの足場板の造作、大きさの違う型枠パネルで模様をつけた内装に、審査委員からは「1950年代に登場した荒っぽい建築形式を思わせる」と懐かしむ声もあった。
施主の理解があっての受賞。景観との調和を考え設計したが、評価されたようでうれしい。県内の集合住宅の新提案になれば。(NDアーキテクトン)
審査委員特別賞
一般 那覇市本庁舎 【那覇市】 國場幸房(75)
地上12階、地下2階建ての庁舎。ひな段状の屋上庭園を設け、緑化したルーバーを建物の外周部に施している。行政が率先して建物の緑化に取り組んでいる点が評価された。(国建)
奨励賞(3点)
住宅 風を生み、空に近づく家 【浦添市】 前田慎(45)
敷地北側に浦添城跡の遺構と東シナ海を望む高台に建つ2階建て住宅。2階にLDKを置き、暮らしの中で眺めが楽しめるよう工夫されている。(ポイントウォーカーデザイン)(高野生優撮影)
住宅 森をクサティにしたセカンドハウス 【石垣市】 門口安則(52)
石垣島の伊原間地域にある平屋のセカンドハウス。リビングの北東側は東シナ海、南西側からは森が眺められる。森の中に溶け込むよう勾配を付けつつ、開口部が大きく取られている。(アトリエ・門口)
一般 那覇市民共同墓 【那覇市】 伊良波朝義(48)
同市内の識名霊園内にある合葬型の市民共同墓。屋上を緑化し、亀甲墓のような曲線を用いて設計されている。ヒンプンガジュマルを中心に動線が展開する計画も評価された。(義空間設計工房)
総評 古市徹雄審査委員長
地元材使った提案望む
沖縄は、自然と一体化する独自の建築文化を育んできた。その点を踏まえ、審査では、光や風の取り込み方、景観との調和などを重視した。応募作品を見ていると、県内の建築士は、自然との調和を意識していることを感じた。
一方、県内は鉄筋コンクリート造が主流とはいえ、地元の材料を使っての提案が欲しかった。現代建築の、環境に与える負担は大きい。その点でも、地産地消の建築を模索することは大切だと考える。
『沖縄らしい』建築をこれからも追求し続け、将来のモデルとなる提案が出てくることを願う。(建築家)
応募47作品 6月8日~14日公開
「第1回沖縄建築賞」の入賞7点を含む、全47点の応募作品が、6月8日(月)から14日(日)の7日間、那覇市久茂地のタイムスギャラリーで公開される。入場無料。
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1534号・2015年5月29日紙面から掲載