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2024年6月28日更新

[7月1日・建築士の日]家族で建築士|儀間 徹さん・儀間 達紀さん(間+Impression)

建築士法が施行された7月1日の「建築士の日」を前に、親子・兄弟・夫婦で建築士資格を持ち、同じ事務所で働く3組を紹介する。家族であり、共同経営者であり、建築士の同志である。会社での役割分担や互いへの思い、それぞれの建築観などを聞いた。

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親子で建築士



間+Impression
儀間 徹さん=写真右  儀間 達紀さん=写真左


親:ぎま・とおる/1968年沖縄市出身。美里工業高校の建築科を卒業した後、県内の建築会社に勤務。98年一級建築士取得。2005年に独立して間+Impressionを設立。1男1女の父親

子:ぎま・たつき/1996年読谷村出身。2015年に間+Impressionへアルバイト入社。17年サイ・テク・カレッジ那覇建築デザイン科卒、同年2級建築士取得、21年琉球大学工学部を卒業
 


幼小の思い出から建築の道へ

昭和の働き方が色濃く残っていた1990年代。建築士の儀間徹さん(56)も「残業は当たり前で、家に帰れない日もあった」と振り返る。97年に長男の達紀さんが生まれてからも「子どもが寝た後に帰り、起きる前に出勤するのが日常だった。せめて休日くらいはと、手掛けた物件の現場や建築巡りに連れて歩いていた」。

だが、達紀さん(27)が小学2年生で野球を始めてからは、それすらなくなった。「小中高と、父との関わりはほぼ無かった」と達紀さん。それでも建築の道に進もうと思ったのは、「やっぱり小さいころの思い出があったからかな」と笑う。

高校卒業後、建築系の学校に進むと聞いた徹さんは「きつい仕事だから」と猛反対した。しかし、「知人に『子の可能性をバックアップすべきだ』と言われてハッとした。僕の経験や知識をすべて伝えようと思った」。
 
儀間さん親子が昨年、設計を手掛けた大城邸。1・5階に子ども室を設け、その下に大収納を設けるのが徹さんの得意技


同物件のキッチンは下引きレンジフードを導入。現場の監理を担当した達紀さんは「施工はすごく大変だったけど施主に喜んでもらえてうれしかった」と笑顔


家族経営の責任とやりがい

専門学校に通いながら徹さんの事務所「間+インプレッション」でアルバイトを始めた達紀さん。大学へ編入し、卒業後は台湾で働く計画をしていたがコロナ禍で難しくなり、そのまま同事務所の社員となった。

徹さんは「図面を描くのはもちろん、施主との打ち合わせにも同席させているし、現場の監理、申請関係の仕事もさせている」と話す。「いろいろ任せてもらえて、すごく恵まれていると思う。最初のころは、やることなすことボロクソに言われたけど(笑)」と達紀さん。「身内だから遠慮なく言ってしまう。それでも続いているんだから、意外と忍耐強いんだな」と目を細め、父親の顔をのぞかせる徹さん。

達紀さんは、「事務所がつぶれたら、家族で路頭に迷うことになる。一スタッフとは違う気持ちはある」と言う。昨年始めたインスタグラムは仕事につながり始めている。徹さんは「設計の裏側とか、施工現場を載せたら? と提案したけど却下された」と苦笑い。「一般の人が見てもピンとこない。空間をかっこ良く見せたい」という達紀さんの狙いが奏功し、インスタから完成見学会に来る人も増えたそうだ。

 
徹さん31歳、達紀さん3歳くらいのころ。当時は親子で徹さんが手掛けている現場や建築探訪に出かけていた​


継承と個性の追求に奮闘 

徹さんの物件は、大きな床下収納を設けるのが特徴。「最初は、小上がりの和室の下を生かすために造った。当時は基礎の柱がいっぱい立った状態だったが、鉄骨を組み合わせて柱を無くしたり、階数・床面積に含まれない1・4㍍ギリギリの高さにしたりと進化させてきた」。  

達紀さんは「建築家として個性を確立したのはすごいし、この造りを求めてウチに来てくれる人は多い。でも、僕がそのまま継承したいかと言われると…。自分の建築も追求したい」。二代目は継承と個性のはざまで奮闘中だ。


 
影響を受けた建築物&建築士
間+Impression

儀間 徹さん

中学生の時、友達の家で読んだスポーツ漫画に丹下健三氏が設計した「国立代々木競技場 第一体育館(東京都渋谷区)」が描かれていて、かっこいいデザインだなと印象に残っていました。  その後すぐ、テレビでバレーボールの試合の生中継があって、第一体育館が映ったんです。本物の空間を見たときに「やっぱり格好いいな!」と衝撃を受けました。当時は高校進学で普通科と建築科で迷っていたのですが、こうした建築との出合いもあって、美里工業高校の建築科に首席で入学しました。これは私の人生でトップレベルの自慢です(笑)。


 
東京都文京区にある東京カテドラル聖マリア大聖堂

儀間 達紀さん

僕が衝撃を受けた建築も、父と設計者がかぶるのですが、丹下健三氏が手掛けた「東京カテドラル聖マリア大聖堂」です。  建築を始めたばかりの専門学生時代に見学しました。右も左もわかっていないころでしたが、光と影がコントロールされた空間の構成や力強さがとても印象に残っています。それが五十数年前の技術で造られていると考えた時に、今まで建築に対して感じたことのなかったすごみを感じました。



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取材/東江菜穂
『週刊タイムス住宅新聞』建築士の日特集
第2008号 2024年06月28日掲載

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東江菜穂

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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。

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