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2024年6月28日更新

[7月1日・建築士の日]家族で建築士|金城 豊さん・金城 司さん(門一級建築士事務所)

建築士法が施行された7月1日の「建築士の日」を前に、親子・兄弟・夫婦で建築士資格を持ち、同じ事務所で働く3組を紹介する。家族であり、共同経営者であり、建築士の同志である。会社での役割分担や互いへの思い、それぞれの建築観などを聞いた。

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兄弟で一級建築士



門一級建築士事務所
金城 豊さん=写真左  金城 司さん=写真右


兄:きんじょう・ゆたか/1970年南風原町出身。1級建築士。東京工業大学工学部付属工業高校専攻科卒、工学院大学Ⅱ部卒業。在学中から岡河貢氏に師事し、新建築設計競技受賞。2001年、㈲門一級建築士事務所を設立し代表就任。19年、第5回沖縄建築賞住宅部門正賞受賞

弟:きんじょう・つかさ/1972年南風原町出身。1級建築士。武蔵野美術大学卒。2001年、㈲門一級建築士事務所を設立し取締役に就任。同事務所で200件以上を手掛ける。17年、第3回沖縄建築賞住宅部門正賞受賞
 


弟は現状見える化 兄が方針定め

兄と弟は父にかわいがられていたけど、間の自分には厳しかった」と金城豊さん(54)。父は那覇市民会館や沖縄海洋博覧会で沖縄館などを手掛けた建築家、故・金城信吉さん。その家父長的な考えへの反発心から、「父の建築には興味がなかった。大屋根・赤瓦・ひんぷん・雨端…ほかにもあるだろうって」。

転機は高校1年の時、父の遺品の建築雑誌を偶然見開いたのがきっかけだ。コンペ「2001年の様式」(’85年発行)の受賞作が掲載されており、「世界の建築家がイマジネーションで競い合っていることに驚いた。つくるだけじゃない、考えることが建築だと」。上京し、雑誌で見た建築家に学生時代から師事。自身を「依存症」と笑うほど建築にのめり込み、同雑誌の国際コンペで応募作732点中、2等に輝いたのは22歳の時だ。その際の課題「スタイルのない住宅」は、自身の設計を「ノンスタイル」と言い切る今につながっている。
 一方、三男の司さん(52)は「物心ついた時には父の後をついて回り、小4で七夕飾りに『建築家になる』と書いた」と笑う。その後、安藤忠雄が手掛けたフェスティバルビル(現、ドン・キホーテ国際通り店)で「吹き抜けや複雑なカタチ、光と影の連続など、歩いていてワクワクする建築」を体感。東京に進学した。

 
1993年、新建築社が発行した季刊誌「The Japan Architect」の表紙。世界的建築家レム・コールハースが審査員を務める住宅設計競技で2等に輝いた豊さんの作品が表を飾っている


トップもサブも必要

父との関係も建築への入り口も異なるが、仲は良い。帰沖後は、長男の優さん(58)と3人で物件を手掛け、友人らと事務所をシェアしたことも。その後、移転の話が出たのを機に司さんが独立を決意。豊さんも「だったら地元・南風原近辺でやろう」と2人で事務所を立ち上げた。

「自分は前に出るよりサポートするのが性に合っている」と司さん。スタッフが増え、「誰が担当しても同じ品質を提供できるように」との豊さんの提案で20年ほど前にISOを導入。以来、顧客層や競合相手、ホームページの閲覧数、進行中のプロジェクトに工程管理まで、「データで見える化する」のは司さん、それを「分析し方針を立てる」のが豊さんと、役割は明快だ。

仕事の上で心掛けるのは「ノーを言わないこと」と司さん。「最高の選手を集めただけでは勝てないのと同じで、チームで仕事をするにはトップ、サブ、どちらも必要」と兄を立てつつ、「限界だと思っても、超えると新たな自分が見えてくるのが分かるからね」とも。「できなければオレがやる」と笑いながら返す豊さんとのやりとりには、やる気に火を付ける兄と負けん気を見せる弟の口調がにじむ。



司さん設計の那覇市の家、2010年竣工。「塀のない閉じた箱にすることで室内の快適性も上がり、街並みも際立つ。周辺環境をより意識し始めた、分岐点になった仕事」と司さん​


会話とワクワク生む家を

事務所設立から23年。「住む人が変わったらどう使われるのか」「建物の裏は、道路から見ると表」「照明は間接照明のみ」など、スタイルにとらわれず引き出しを増やし続ける2人。「小学生や通りすがりの人も『ワーッ』と驚く、ワクワクする家を建てたい。建築ってそういう力を持っている」と司さん。豊さんも「それ良い! コレってなんだろうと見た人が会話を始める家をつくりたいね」と建築への姿勢にブレはない。


 
影響を受けた建築物&建築士
門一級建築士事務所
 

金城 豊さん

影響を受けたのは、亡き父(金城信吉)の遺品「2001年の様式 新建築臨時増刊」(1985年、新建築発行)=写真=と、そこに掲載されていた岡河貢氏です。この本は、新建築の創刊60周年を記念して開催された、コンペ「2001年の様式」の受賞作と招待作家の作品を収録している作品集。そこで2等を受賞されていたのが岡河氏で、後に弟子入りした恩師でもあります。この本が、氏の崇高な思想と表現力にのめり込み、いつか自分もこの賞に入選したいと、建築を志すきっかけになりました。

 

(窪田建築アトリエ提供)

(窪田建築アトリエ提供)

金城 司さん

窪田勝文氏と氏が設計したY-HOUSE=写真=です。Y-HOUSEを初めて見たのは大学生の時。その衝撃は忘れられません! 美しさと機能を兼ね備え、閉じるところは徹底的に閉じ、開くところは徹底的に開くという単純明快な建築構成。この構成なら沖縄でも美しく快適な住まいが展開できると確信しました。心が激しく揺さぶられたのが今でも思い出されます。

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取材/徳正美
『週刊タイムス住宅新聞』建築士の日特集
第2008号 2024年06月28日掲載

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