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2023年6月30日更新

[7月1日・建築士の日特集]2拠点で活躍する建築士③|小林進一さん(コバヤシ401.Design room代表)

沖縄本島とそれ以外の「2拠点」で活躍する建築士にスポットを当て、地域や国が異なる2拠点に身を置くからこそ感じる面白さを語ってもらった。7月1日は建築士法の施行日から「建築士の日」。今号は建築士をテーマに特集します。





[拠点]沖 縄 ー 東 京


コバヤシ401.Design room
代表 小林進一さん


こばやし・しんいち/1972年、東京都出身。東洋大学大学院工学研究科を卒業し、建築事務所で経験を積む。2010年に1級建築士事務所コバヤシ401.Design  room を設立し、12年に沖縄オフィスを開設。一戸建てや集合住宅、テナントビル、クリニックなど幅広く手がける。設計したクリニック「T Dental Frontier」で第6回沖縄建築賞一般部門の奨励賞を受賞。


快適さを形に 案の手数増す

コバヤシ401・Design roomの小林進一さん(51)は、生まれ育った東京で2010年に設計事務所を設立。子どもが生まれたのを機に自然豊かな環境を求め、沖縄に移住。12年に沖縄オフィスを構えた。今では1週間ごとに沖縄と東京を行き来している。

2拠点での活動を通して、小林さんは「住宅設計に求められるものはもちろん快適な空間づくり。気候や敷地条件、法規制などが違う環境で、求められる快適さを形にするのが楽しい。その中で、東京の経験が沖縄に、沖縄の経験が東京に生かされることも多く、提案の幅が広がった」と話す。

例えば、沖縄で手がけた住宅の一つに「小林さんなら」と依頼された敷地がある。東西に極端に細長い三角形だったが、東京で狭小地住宅を多数設計した経験を生かし、5層を貫く吹き抜けとスキップフロアで伸びやかな空間を実現。2方に大窓を設けた。「苦労したのは沖縄特有の熱さと湿気対策。湿気がたまる場所をつくらないよう家中に風の通り道を確保。職人らと相談しながら、耐風対策も考慮した窓を設置した」と小林さん。


室内の快適性を高める半屋外空間

逆に、半屋外空間を使った沖縄の経験が東京の設計にフィードバックされている。人口が密集している東京では、特にプライバシーが重視され、外部環境に閉じた空間になりがちだという。「半屋外空間を用いることで外部に開きつつ、視線は遮れる。さらに、光や風を取り込めるとプラスの側面が多い」。東京で一戸建てを設計した際には半屋外空間を取り入れた。「その案件は敷地が広いなど条件に恵まれていた。狭小地住宅でも実践できるようにしていきたい」


建築費高騰に引き出しの多さで対応

2拠点で活動し始めて11年。当初と今で大きく変わったことは住宅の建築費。東京の建築費は沖縄の1・5倍だったが、現在では大差ないという。小林さんは「建築費の高騰で、家づくりは厳しくなってきているのが現状。でも、コンクリート造に比べて坪単価の安い木造など住宅の構造を問わず、沖縄と東京それぞれで培った経験を武器に、快適な空間を提案していきたい」と語った。



沖 縄
中城村に設計した住宅。近接する住宅や前面道路からのプライバシーを守るため、外壁の内側にテラスを設けた。「周囲を気にすることなく、掃き出し窓を開けられ、屋外の心地良さがLDKにいても感じられる」
中城村に設計した住宅。近接する住宅や前面道路からのプライバシーを守るため、外壁の内側にテラスを設けた。「周囲を気にすることなく、掃き出し窓を開けられ、屋外の心地良さがLDKにいても感じられる」(建築士提供)


東 京
花ブロックの半屋外空間をヒントに手がけた一戸建て。レンガ積みで外部から視線を遮りつつ、自然光と風を室内に取り込んでいる
約12坪の敷地に建つ住宅。「敷地の間口も3メートルと狭かったため、スキップフロアで廊下のない計画にした。階段で空間をつなぎ上部に抜け感を演出し、開放感のある住宅となっている」(建築士提供)

花ブロックの半屋外空間をヒントに手がけた一戸建て。レンガ積みで外部から視線を遮りつつ、自然光と風を室内に取り込んでいる
花ブロックの半屋外空間をヒントに手がけた一戸建て。レンガ積みで外部から視線を遮りつつ、自然光と風を室内に取り込んでいる(建築士提供)


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取材/市森知
『週刊タイムス住宅新聞』建築士の日特集
第1956号 2023年6月30日掲載

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